極めてグレーな「持ち帰り残業」

 数年前には、英会話学校の講師だった22歳(当時)の女性が2011年に自死したのは、「持ち帰り残業」が原因だったとして労災が認められている。

 ただ、このときの自宅での仕事は「授業で使う『単語カード』を2千枚以上自宅で作る」というもので、これが業務命令と判断されたという経緯がある。

 「持ち帰り残業=自宅での仕事」は、サービス残業同様、いや、それ以上に、極めてグレーな“働かせ方”。厚生労働省はサービス残業をなくすために1月20日、「自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならないこと」と明記した新たなガイドランを策定したが、「自宅での仕事=自己啓発?」「自宅での仕事=サービス残業?」については線引きが難しく、どこまで認めてもらえるのか……。

 また、特にヒューマンサービスの現場には、「労働時間」だけでは語れない過酷さがある。

 5年ほど前に看護師の方たちに、私が開発したストレスマネジメントプログラムを実践してもらい、その効果を検証する実証研究を行ったことがある。

 プログラムを実施するにあたり、数名の看護師にフォーカスグループインタビューを実施したのだが、多く聞かれたのが、看護師さんたちが感じる「職務上の要求の高さ」と「心理的プレッシャー」だった。

※意識や深層心理を把握することができる座談会形式のインタビュー調査

 仕事量が多いのに加え、時間的切迫度も高い。絶対にミスは許されない。人手不足でひとりの看護師の責任が非常に高い。他の看護師のサポートを受けることができない。医療技術や使われる薬品も日々更新されるので、休日も勉強する必要がありゆっくり休むことができない――。

 さらに、
・高齢化社会で認知症の方も多く、四六時中ナースコールに呼び出されることもある。
・経験の浅い看護師に先輩が教えたり、サポートしたりする余裕がないので、孤軍奮闘している若い看護師が多い。
・看護師の仕事は育児や介護との両立も極めて難しいため、ベテランの離職もあとをたたない
という声も多かった。