そして、何よりも特筆すべきは、「入院期間が8.5%減った」ってこと。

  • ・家庭内暴力は減少し、
  • ・メンタルヘルスの悩みは減り、
  • ・街全体がより健康になった。

 医療費の大幅な削減につながる可能性が示唆されたのだ。

 実はミンカムの実験はパイロットプログラムで、北米の4都市でも同様の実験が行われ、そこでは効果をきちんと検証するために実験群と対照群を用いて比較したのだ。

 ここでもやはり研究者の問いは、

  • ・保障所得を受け取った人の労働量は減るか?
  • ・費用はかかりすぎるだろうか?
  • ・それらは政治的に実行可能か?

 ということだったが、実験の結果が示した答えは、ノー、ノー、イエス。つまり、ネガティブな結果にはつながらなかったのである。

 具体的には、ドーフィン同様、労働時間は若干減ったのだが、それらは自分の能力開発の時間に当てられていたことが分かった。

  • ・高校中退歴のある母親は心理学の学位を取得したいと受験勉強の時間にあて、
  • ・別の女性は演劇のクラスを受講し、夫は作曲を始めた。
  • ・若者は労働時間を減らし、更に教育を受けることを選んだ。

 人は「明日も生活ができるという安心感」があれば、学ぼうとか、今までできなかったことにチャンレジしようとか、自分の生活が豊かになるために自主的に行動することが示されたのである。

 人は生活が保障されれば、自らの能力を高めるために、時間やカネを費やす。

 それは来るべきAI時代に必要なんじゃないか、と。

 研究者は研究に時間を費やし、芸術に興味あるものは生活の心配をせずに取り組むことができる。生活が保障されれば、人生の選択が増え、人間の、人間にしかできない発想と英知が発揮できるーー。

 そんな可能性を秘めている「単純・明解な」制度構想がベーシックインカムなのだ。

 ひょっとすると導入実験で報告されているのは、チェリーピッキング的なものなのかもしれないし、統計のマジックもあるかもしれない。だからこそ、みなさんにも考えて、意見をいただきたいのです。

 以前、生活保護の方たちを取材したときの言葉が蘇る。

 「生活保護が受けられれば、とりあえずは暮らしていける。なのに、どうしても働きたい、って必死に仕事を探すんだよ。仕事ができないっていうのは、『お前は生きている意味がない』って、社会から言われているような気持ちになる。『働くのはお金のため』なんてことを言うのは、自分が納得できるような仕事ができていないことの言い訳。そんなこと言えるのは、ぜいたくもんだけだ」ーー。

『他人をバカにしたがる男たち』
発売から半年経っても、まだまだ売れ続けています! しぶとい人気の「ジジイの壁」

他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)

《今週のイチ推し(アサヒ芸能)》江上剛氏

 本書は日本の希望となる「ジジイ」になるにはどうすればよいか、を多くの事例を交えながら指南してくれる。組織の「ジジイ」化に悩む人は本書を読めば、目からうろこが落ちること請け合いだ。

 特に〈女をバカにする男たち〉の章は本書の白眉ではないか。「組織内で女性が活躍できないのは、男性がエンビー型嫉妬に囚われているから」と説く。これは男対女に限ったことではない。社内いじめ、ヘイトスピーチ、格差社会や貧困問題なども、多くの人がエンビー型嫉妬のワナに落ちてるからではないかと考え込んでしまった。

 気軽に読めるが、学術書並みに深い内容を秘めている。

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