他にも、ケニア、フィンランド、オランダ(ユトレヒト)、米国(カリフォルニア州オークランド)、カナダ(オンタリオ)、イタリア(ルボリノ)、ウガンダで、さまざまな条件下で試験的に導入実験を行なっている。今年はいくつかの実験期間が終了するので、結果が報じられる予定である。
そもそもベーシックインカムが世界中の関心を集めているのは、「労働の奴隷」となっている今の社会構造からの発想の転換である。
ルトガー・ブレグマン。
「ピケティに次ぐ欧州の知性」と称されるブレグマン氏は、オランダ人歴史学者でベーシックインカムの圧倒的な支持者で、「豊穣の地の門を開いたのは資本主義」としながらも、「資本主義だけでは豊穣の地は維持できない」と説く。
様々な実証研究を歴史を振り返りながら紹介する著書、『Gratis geld voor iedereen(万人のための自由なお金)』はベストセラーとなり、日本では『隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働」というタイトルで2017年5月に出版された。
とずいぶんと前置きが長くなってしまったのだが、今回はベーシックインカムをテーマに、「豊かさとは何か? 働くとは何か?」ってことをアレコレ考えてみたいと思う。
そして、今回はみなさんにも一緒に考えて欲しいのです。
ベーシックインカムが魔法の杖になるとは思わないけれども、何がしかの光を見いだすきっかけになりはしないか? 「現金をばらまけば飲み食いに使ってしまう」と最初からネガティブに捉えるのではなく、議論を交わすことが未来につながるのではないか? という思いがある。
なので、みなさまの知見、意見など、是非ともお寄せいただきたく。よろしくお願いいたします!
まずはそもそも、ベーシックインカムとは? というお話から。
ベーシックインカムとは、単純・明解な一つの制度構想で、
- ・性や年齢、社会的地位や収入に関係なくすべての個人を対象
- ・無条件に
- ・社会が、あるいは社会を代表して国家が
- ・一定の生活保障金額を一律に貨幣で支給する制度
のこと。
生活保護や母子家庭手当などの社会保障は一切せず、人間の基本的欲求である「衣食住」を満たすお金をすべての人に一律で支給する。貨幣なので、フードクーポンなどは一切含まれない。
こういった考えが生まれたのは18世紀に遡り、1960年代後半には欧米で関心を集め、米国のニクソン大統領も1970年代にベーシックインカムの導入を検討していたとされている。
1980年代に入り再び、ベーシックインカムが注目を集めるようになったのだが、その理由のひとつが格差問題。そして、もうひとつが「労働の奴隷」になっていることだ。
さらに2000年代に入ってからは「導入実験」を検討する機運が高まった。 その火付け役となったのが、先のブレグマン氏なのだ。
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