「キミたちはどう思う?」って聞かれても

 「今の社長は二代目で、先代が早くに亡くなったので55歳の若さで社長になりました。もともとは商社マンです。わずか30名程度だった会社をここまで大きくしたのでリーダーシップも、先見の明もあったんだと思います」

 「その社長が、一昨年、退任するという話が出た。本人が言い出しました。78歳のときです。退任するとなると当然、次は誰か?という話になる。社長の息子がいるにはいるのですが、まだ若い。いや、正確にいうと、ちょっと難しい。いろいろと問題のある息子でして。それでも社長が一言『息子を頼む』と言えば、周りもどうにかしたんだと思います」

 「ところが、社長は『キミたちはどう思う?』と、まずは自分が退くことの是非の意見を聞きたいと言い出した。そんな風に問いただされて、『はい、どうぞ』とは誰も言えません。
 しかも、順当に考えると次期社長はA部長で、うちの会社には珍しい切れ者で(苦笑)。会社も勝負をかけないと生き残れない時期にさしかかっていたので、普通に考えればA部長しかいなかった。ところが、それだと困る人たちがいる」

 「どういうことですか?」(河合)

 「お役御免になる人たちです。A部長が社長になったらに真っ先に切られそうなのが、今の副社長です。で、その副社長の子飼みたいな社員もいて。ホラ、そういう奴らほど、自分の身にナニかおきそうなことを敏感に察知するでしょ?」

 「つまり、社長がそのままやればいい、と言い出したとか?」(河合)

 「そうです。保身に走った50代の若手の部長までもが、社長続投を言い出した。最悪ですわ。完全に“引き際”を逃しました。
 現在、81歳。見た目は一般的な80歳に比べたら断然元気です。でも、やはり80を過ぎてから衰えは隠せない。突然、怒り出すことも増えたし、決めたことを忘れるようにもなった。でもそれ以上に問題なのが、社長に誰も何も言わなくなったということです」

 「社長候補だったAさんはどうしてるんですか?」(河合)

 「社長に意見しなくなりました。『社長続投派』たちからアレコレ言われるのがめんどくさいんでしょ。老害って社長だけじゃなく、周りの問題なんじゃないかと。辞めさせることができなかった、周り自体が老害なのかもしれないないなぁと。私も……会社を出ることも一時考えましたが、会社をどうにかしたいという思いもあって……。一歩踏み出せていない自分も、いささか情けない。私も結局は保身に走っているじゃないか、と。本当、情けないです」