続々と、「ハイヒールをやめたいの、私だ!」

 内容を補足しておく。

 昨年の5月、先の記事に登場しているニコラ・ソープさん(27歳)は、ロンドンの大手会計事務所の受付係として、下請け会社に採用された。彼女の勤務時間は9時間。業務は依頼人を会議室に案内することだった。

 ニコラさんは採用初日、フラットシューズで出社したところ、「高さ5センチから10センチのハイヒールを履くように」と言われたそうだ。

 そこで「ハイヒールを履いて丸1日働くのはとても大変。この靴のままでいたい」と担当者に頼んだ。

 ところが担当者は、ハイヒールの靴を買ってくるように指示。ニコラさんは「男性でも同じように、ハイヒールを履いて9時間働いているのか?」と尋ねたところ一笑に付されたため、「平らな靴だと仕事がちゃんとできない理由を説明して欲しい」と食い下がった。

 が、会社側は理由を明確に説明せず(できず?)、ニコラさんは日給なしで帰宅を命じられた。

 頭にきたニコラさんはこれをFacebookに投稿。すると一気に拡散され、「保育園落ちたの、私だ!」ならぬ「ハイヒールをやめたいの、私だ!」と訴える女性たちが次々と現れた。

 そこでニコラさんが、「企業が女性にハイヒールを強要することを法律で禁止しよう」と政府への陳情を呼びかけたところ、続々と署名する人たちが集まり、15万2420人に達したのである。

 ニコラさんはBBCのインタビューで、以下のようにコメントしている。

 「私は会社のことを必ずしも悪く思っていない。服装規定を設けるのは雇用主としての権利だ。ただし、服装規定は社会の動きを反映すべき。今どきの女性は平らな靴を履いてもきちんとフォーマルに装うことができる。ハイヒールは疲れるというほかに、性差別の問題もある」と。

 ……ふむ。私もつま先が締め付けられるハイヒールに、何度も泣かされてきたけど「性差別」という認識を持ったことはなかった。

 だが、この“ハイヒール反対運動”がまたたく間に欧米各地に広まったことを鑑みると、私は“遅れている”のかもしれない。

 女優のジュリア・ロバーツが、カンヌ国際映画祭に裸足で出席したのを覚えているだろうか?アレも、「フォーマルな場でハイヒールを履くのを、女性の象徴だと思わないで!」という、性差別への無言のアピールだったのである。

 ひとりのフツーの27歳の女性のアクションが、かつてココ・シャネルが、ウエストを絞らない服装をデザインしてコルセットを“駆逐”、イヴ・サンローランがパンタロン革命で女性たちを解放して社会進出を後押ししたように、「ハイヒール=フォーマル」「女性=ハイヒール」という固定概念を取り払おうとしている。