野村不動産では問題をサキドリ

 17年末、野村不動産が裁量労働制を社員に違法に適用していたとして是正勧告を受けたが、これぞサキドリ!

 野村不動産によれば、全社員約1900人のうち、約600人に裁量労働制を適用。課長代理級の「リーダー職」と課長級の「マネジメント職」に就く30~40代が中心で、営業戦略の企画・立案と現場での営業活動を担っていた。

 つまり、先に説明したとおり、現行では「営業職」は違法だが、改訂されれば違法ではなくなる可能性が高い。
 ってことは……?
 ええ、そうです。「定額働かせ放題」の対象者は、とんでもなく増えるリスクが存在しているのである。

 といった書き方をすると、
 「裁量制の何が悪い?」
 「煽ってる」
 と口を尖らせる人たちがいるが、私は「裁量制を悪い」と言ってるわけじゃない。ましてや、煽っているわけでもない。

 「自分で自由に決めることができる権利」である裁量権は、ストレスの雨に対峙するための大きな傘であるとともに、働く人のやる気を喚起し、職務満足感や人生の満足度を高めるうえで非常に重要な役目を担う。国内外の多くの実証研究でも確かめられているし、寿命にも影響するほど強い影響力を持つ。

 そして、恐らくこれから組織を動かしていく上でも、個人の働き方を追求する上でも裁量制はキーワードになる。少なくとも、私はそう考えている。上司と部下の関係に代表される組織風土や人間関係と同程度、あるいはそれ以上に重要な、ストレスの雨に対峙する傘となることだろう。

 だが、国会に提出される法律は、表向きには裁量権があるように見えるが、企業側に都合良く使われる可能性が高い悪法である。

 働き方改革だの、柔軟な働き方だの、過労死や過労自殺を撲滅したいのであれば、

  • インタバール規制(11時間)の徹底と厳罰化
  • みなし時間の根拠を明確にする義務と罰則規定
  • 実労働時間の把握の義務と罰則規定

 を付け加えるべき。努力義務ではダメ。罰則は必須だ。

 これらがない限り、働く人は雇用者側が投げかける「自由」という「不自由」に、囚われてしまうことになる。

 それに裁量制の根底にあるのは、“ペイ・フォー・パフォーマンス”の考え方だ。

 ならばそのパフォーマンスに見合ったペイを算出する方法の議論も欠かせないはずなのに、すべては企業任せだ。「職務内容・達成度・報酬などを明確にした労使双方の契約」とするなら、それが達成できなかったときのペナルティーは、いったい誰が払う?

 働く人? そう。立場が弱い働く人。“命”をすり減らして働き続けることでペナルティーを払うという選択を余儀なくされるのだ。