既に知られているように「高度プロフェッショナル制度」では年収1075万円以上という制限がある。だが、「裁量労働制」には年収の制限がない。

 企業側としては「見なし残業代を加えた賃金(定額)になっているんだから、どんどん働いてくださいな!労働時間の長さじゃなく、労働の質や成果で評価するのだから、効率よく能力を発揮してね」と、大手を振って「本音」が言えるようになる。

 それが年収500万円だろうと、300万円だろうと、はたまた200万円という低賃金の労働者でさえ対象にすることが可能になるのだ。

 だいたい裁量労働制とは名ばかりで、対象となる労働者に「裁量」が与えられているかも、はなはだ疑問だ。それに「課題解決型の開発提案業務」と「裁量的にPDCAを回す業務」という、言語明瞭意味不明な言い回しも妙に気になる。

 というわけで今回は「定額働かせ放題法のリスク」について、あれこれ考えてみる。

 まず本題に入る前に、裁量労働制について説明します。

 裁量労働制は、正式には「裁量労働のみなし時間制」と呼ばれ、1987年の労働基準法改正で導入された。当初は、システムエンジニアなどの専門職だけに適用されていたが、98年の改正で「企業の中枢部門において企画・立案・調査・分析の業務」を行なう一定範囲のホワイトカラー労働者を適用対象とする新たな制度が設けられた。

 前者が「専門業務型裁量労働制」、後者が「企画業務型裁量労働制」である。時間外労働はあくまでもみなし時間が適用されるので、さっさと切り上げれば得するが、残業が増えれば増えるほど損をすることになる(時給が減る)。

 企画業務型の方が濫用されるおそれがあるため、現行では労使委員会における5分の4以上の多数決による決議を要するなど、専門業務型より要件は厳格になっている。

「見なし残業」が激増しそうな予感…

 厚労省によれば、「専門業務型裁量労働制」を導入している企業は2.1%であるのに対し、「企画業務型裁量労働制」は0.9%と少ない(「平成 28 年就労条件総合調査の概況」より)。

 また、みなし時間の根拠の算出方法について調査したところ、専門業務型では、「通常の所定労働時間」の割合が最も高く47.6%、次いで「今までの実績から算出」が33.5%。

 企画業務型では、「不明」が44.9%で最も高く、「通常の所定労働時間」が31.7%、「今までの実績から算出」が20.0%(データはこちら)。

 以上のことからお分かりのように、「適用のハードルが高く、半数近くの企業がみなし残業の根拠もなんだかよく分かんな~い」としている企画業務型が、今回の法案で拡大される見込みなのだ。

 「課題解決型の開発提案業務」と「裁量的にPDCAを回す業務」という、算出方法の不明以上に意味不明の文言が連なっているが、提出される法律案を読んでみると「な、なぬ!?」って感じでして。

 「課題解決型~」とは法人を顧客とした営業マンっぽい人、「裁量的~」とは管理職っぽい仕事をしてる人と解釈できる。

 「法人である顧客の事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析を主として行うとともに、これらの成果を活用し、当該顧客に対して販売又は提供する商品又は役務を専ら当該顧客のために開発し、当該顧客に提案する業務 (主として商品の販売又は役務の提供を行う事業場において当該業務を行う場合を除く)」(by 提出される法律案、該当記述は10ページ目)