そもそも
「生産性を上げる=長時間労働を減らす」「生産性を上げる=AIに投資する」
といった方程式ばかりが強調されがちだが、働いているのは人なのだから
人材投資は必要不可欠。特にミドル層の「再教育」は極めて重要である。

 なんせ、あと2年で大人(20歳以上)の「10人に8人」が40代以上になり、50代以上に絞ると「10人に6人」。このコラムで繰り返し言っているけど、2020年に東京オリンピックを開催する頃には、どこの職場も見渡す限りオッさんとオバさんだらけになる。(参考コラム:現実、企業は50歳以上を“使う”しかないのだ

 切っても切っても増え続けるミドルを、企業はどうするつもりなんだ?
 「追い出し部屋に送り込むしかないね」
 「そうだよ。それで辞めてもらう」
 「だいたい給料高すぎなんだよ」
 「これを“コスト”と言わずなんていうんだ」
etc,etc

 バブル入社組をターゲットにしたリストラがニュースになると、こういった意見を平然という人たちがいるけど、人員削減のような分かりやすいコストカットは、 “目に見えない力”を育む土壌を自らの手で壊しているようなもの。短期的に救われても長い目で見ればアウト!いわば「企業の自殺」だ。

 もし、今が“空前の不景気”というなら理解できる。

 だが、いざなぎ景気を超える好景気と言われている今、人を育てないでどうする?

多くの企業経営者は「最後は人」と言ってきたくせに……

 冒頭の調査で8割の人が「スキルアップが必要」と回答しているのだから、せめて賃金だけでも上げて「自分のお金でやってね」と間接的に支援すべしなのに、それすら渋るって一体ナニ?

 多くの企業経営者は「最後は人」だの「ウチの資産は人材、いや人財だ!」などとドヤ顔で豪語してきたクセに、私にはこの大いなる矛盾がちっとも理解できないのである。

 そもそも日本の企業は「自らの意志でスキルアップした人」にチャンスを与えるのが下手。能力発揮の機会が実に乏しい。

 思い起こせばバブル期、企業のカネで海外に留学しMBAを取って来た社員は山ほどいた。が、そのほとんどは「うちの会社じゃ、飼い殺しにされるようなもの」と捨てセリフを吐いて数年後に転職。彼らを“給料泥棒”と揶揄する人もいたけど……、彼らの気持ちは痛いほど分かる。「勤務先が費用を負担した社員」でさえ使いこなせないのだから、自前の社員はなおさらである。

 「40を過ぎた頃くらいですかね。ちょっと勉強したくなったんですよ。それで社会人を受け入れている私立の大学院の試験を受けて通ったんです。会社には内緒でしたし、仕事をしながらだったんで、卒業するのに時間がかかりましてね。結局、1年の予定が大学院に在籍できるギリギリの3年間かかってしまいました。

 それで自分が学ぶと、アウトプットしたくなるでしょ? 僕も大学院で学んだことを生かして、後輩たちともう一度汗を流したいって思って、会社を辞めることにしたんです。そのまま会社にいたのでは、なかなかできるポジションではなかったんでね。残りの人生で、もうひと踏ん張りしたいと思ったんです」

 実はこれ。2009年に書いたコラムの引用なのだが、大手商社の部長だった彼は自分の「成長」を求め大学院に進学し、その成長を実践で活かしたくて会社を辞めた。

 不幸にも退職後、リーマンショックが起こり職安に通う羽目になってしまったのだが、その後再就職し、その企業の救世主となった。
 事業規模を次々と拡大し、従業員は30人から200人にまで増え、今は会社の常務として手腕を発揮している。