時間的に切迫するとパフォーマンスは2割落ちる

 少々脱線するが、この時間的切迫感は、「振り込め詐欺」にも悪利用されている。

 「電話」という相手の顔が分からない状況の下、「すぐに振り込まないと、訴えられる」と不安や恐怖心を掻き立てる文言で時間的に切迫した状況を作り出し、被害者から冷静な判断を奪うように仕向けているのだ。

 たかが時間、されど時間。時間は、ときに人間を狂わす実に恐ろしい、“目に見えない魔物”なのだ。

 いや、それだけじゃない。時間的切迫度は、仕事のパフォーマンスにもマイナスの影響を及ぼすことが、さまざまな実証研究で確かめられているのだ。特に、ヒューマンエラーによる事故が増えている背景には、「時間的切迫度」の存在が示唆されている。

 ある実験によれば、時間的に切迫した状況に直面するとパフォーマンスが通常時の2割減になるとの報告もある。

 ただ、ある程度のプレッシャーがかかった方が、パフォーマンスが高まるという事実も存在する。その境界線は、物理的な時間的圧力に加え、主観的時間的切迫感、すなわち作業をしている当人が、「時間に追われている」と感じる度合いが影響する。

人間の許容範囲を超えつつあるのでは?

 いずれにしても、現代社会の“時間”は、既に人間の許容範囲を超えつつあるのではないだろうか。数々のヒューマンエラー。信じ難い決断。倫理的に許されない行動――。そういった事例の背景に、時間的切迫度が潜んでいる。

 便利さを追求した結果、私たちは常に「時間」に追われ「その早さに、対応しなきゃダメ」と、自ら切迫感を作り出しているのである。