「がんばった人が報われる社会!」 それ、どこに???

 永田町のみなさまが、“労働者を守る為の法律”を整備してくださったおかげで、現場の願いも、働く人たちの願いも、叶わなくなってしまったのだ。

 「正社員じゃなくてもいい。契約のままでもいいから、腰を落ちつけて働きたい」ーー。

 この言葉は重いと思ますよ。とにもかくにも、「腰を落ちつかせてくれ」だなんて。彼女は、“3年”のうち何日間、安心していられたのだろうか。

 会社が変わるということは、生活そのものが変わること。
引っ越しが必要になる場合だってある。仕事、生活、人間関係……、そのすべてに再適応が求められる。

 人間は適応する動物である。いや、正確には「適応できる」だけ。“莫大なエネルギー”をつぎ込み、ストレスに上手く対処し、生きていくために、ただただ必死に適応するのだ。

 彼女の言葉は、そのしんどさの先に紡がれたもの。たぶん、実際に経験した人にしかわかりえないしんどさが、相当にあるのだと思う。

 しかも、「自分のパフォーマンス」とは関係なしだ。契約を更新してもらえない理由が、会社の都合という事態は、想像以上のストレスとなる。

 「がんばった人が報われる社会!」
 ど、どこに??

 「挑戦、挑戦、挑戦!!!」
 な、なにに?

 働く人たちは、「ここで長期的に働く」という前提があるからこそ、その会社でしか役に立たないかもしれないスキルを磨き、人間関係を広げ、会社の生産性に寄与する存在になる。

 そして、働いて得られる報酬や条件が「自分にとって、受け入れられる」ものであれば、個人は働く意欲を高め、職務満足感が高まり、困難を乗り越えるエナジーを充電できる。

 報酬には賃金だけではなく、他者からの敬意や感謝などの心理的な報酬、能力発揮の機会、職務保証、良好な人間関係、なども含まれる。

 会社と働く人。上司と部下。一緒に働く仲間――。

 それぞれに交わされる心理的契約が存在するからこそ、「この会社のために働きたい」と会社へのロイヤルティー、仕事へのモラル、責任感、周りとの協働性などが高まっていくのだ。

 仕事へのモチベーションやパフォーマンスは、法的な契約よりも、むしろ心理的契約の度合いによって左右される。

 目に見えないもの――。その存在こそが、私たち人間の心のありように、行動に、大きく影響するのだ。 

 今では否定されることが多くなってしまったが、終身雇用は、こういったいくつも暗黙の契約を守ることで、働く人たちに投資する制度だった。「長期雇用=正社員化」という議論になりがちだが、契約だろうと、派遣だろうと、長期雇用という前提をまずは確立させる。

 その上で「正社員との賃金格差是正」を、企業の判断でやる。そうすれば働く側が、選択できる。優秀な人材であればあるほど、賃金格差のない企業で採用されるようになるのではあるまいか。

 少なくとも派遣会社は、「“安い、便利だ!3割も4割もコスト削減できます!」ではなく、「最高のスキルとテクニック!3割も4割も生産性を向上させます!」を“ウリ”にすべき。派遣する“人”で儲けたければ、投資して、教育して、“人”の商品価値を上げて当たり前だ。

 夢物語? そうかもしれない。

 でもね、人に投資しない社会は、朽ちていくだけだと思うわけです。そして、その投資が人だけに宿る“強い気持ち”を引き出し、さまざまなチャレンジが可能になる。かつての成功法則が通じないご時世だからこそ、“人”を大事にすべきじゃないんでしょうかね。