現場の人たちの多くが「長期雇用すべき。して欲しい」

 補足しておくと、彼女が「子どもは持てない」と言った理由は、昨年11月に公表された「マタハラ実態調査」(「妊娠等を理由とする不利益取扱いに関する調査」厚生労働省)を見れば容易に推測できる。

 派遣社員の48.7%が「マタハラの経験がある」と回答し、正社員の21.8%をダブルスコアで上回ったのだ。

 しかも、マタハラを経験した派遣社員のうち27.4%が、妊娠を理由に契約打ち切りや労働者の交替を経験したと回答。また、上司などから「迷惑だ」「辞めたら」といった嫌がらせの発言を受けたケースは、派遣社員の32.7%にのぼった。

 現在は、企業と直接契約をしている彼女。「産休を取れない」と断言する。

 法律的には取れる。だが、わずか3年の契約期間中に、産休を申し出ることなどできるわけがない。そうなった途端に、契約打ち切りとなる可能性が高い。

 「ならば派遣だ!」と鞍替えしたところで、「2人に1人がマタハラされるほど、迷惑がられてしまう」のだ。

 33歳。結婚も出産もこれからの彼女にとって、「不安」以外のナニものでもないのである。

 なんでこんなにも、“企業に勤める”という行為が、難しくなってしまったのだろう。

 私が社会人になった頃、派遣社員は“かっこいい”存在だった。

 まさしく新しい働き方。派遣だから賃金が安いというイメージはなかったし、契約社員についても、似たようなイメージだったと記憶している。

 そもそも「非正規雇用」なんて言葉自体存在しなかった。

 それが今は、正社員と非正規の生涯賃金格差が1億円超だの、「正社員になれなかった人」だの、非正規は常に正社員の“下”とカテゴライズされ……、挙げ句の果てに、派遣も契約も3年で雇用が打ち切られる始末だ。

 それを後押ししてるのが、「労働者を守る為」という大義名分で作られた法律だというのだから、わけがわからない。本末転倒。笑うに笑えない。

 もちろん、正社員化に踏み出した企業もある。だが、「それってどこ?」と感じてしまうほど実感に乏しい。正社員化した企業でも、「全員じゃなかった。なんであの人が?って感じで。余計に不満がたまった」という意見を聞くことの方が多いのが現実なのだ。

 しかも、私が知る限り、ほとんどの人たちが“3年縛り”に否定的だ。

 現場の人たちの多くが「長期雇用すべき。して欲しい」と望み、「どうしても上に立つと、コストを考えてしまうんですよ」と言い訳するトップたちでさえ、契約や派遣の「長期雇用」に必ずしも反対じゃない。

 改正派遣法が成立したとき、「“永遠派遣”法にならない。まさしく働く人のための法案だよ」と豪語した識者は結構いた。

 その方たちは、この事態をどう説明してくれるのだろう?

 少なくとも、フィールドインタビューで耳を傾ける限り、「3年でいいじゃん。雇用の流動化ですよ。ガッハッハ」と、高らかに笑う人は皆無だ。