「企業を儲けさせないと賃金は上がらない」のウソ

 そもそも組織に適応し、いちメンバーとして組織に役立つには、最低でも3年はかかる。組織心理学の専門用語でいえば、組織社会化。「どれだけロスになっているか」と嘆く先の現場の言葉どおり、3年ごとに「入れて、切って、はい、入れて」は、“会社の自殺”だ(参考コラム:“会社の自殺”が進むこの国の愚行とANA正社員化の英断)。

 要するに部長さんたちが指摘するとおり、「結局はコスト」。

 派遣会社が「私たちにお任せください!」と謳うように、派遣社員も、直接契約の契約社員も「安くて、便利!コスト削減にはもってこい!」。

 「非正規雇用、遂に4割!」で話題になった、昨年公表された厚生労働省の調査(平成26年「就業形態の多様化に関する総合実態調査」)でも、正社員以外を雇用する理由のトップは「賃金の節約」(38.6%)だった。

 その抑制分は人材派遣会社に流れ、ホクホク顔。主要人材派遣会社の97%が黒字で(帝国データバンク)、2015年上半期の労働者派遣事業の倒産件数は、年度上半期では過去8年間で最少だったのである(東京商工リサーチ)。

 なんでこんなにも、企業ばかりが優遇される仕組みになっているのだろう。

 「そりゃあ、企業を儲けさせて景気よくしないと、社員の賃金アップにはつながらないし。正社員の賃金アップなしに、非正規の賃金アップはないでしょ?」

 ふ~~ん。果たしてそうなのだろうか。

 んじゃ、なんで「日本の労働分配率は、過去20年間で最低水準まで低下」しているんだ。非正規社員を増やし人件費を抑制し、企業が利益を優先しているだけじゃないのか。

 それを知ってか知らぬか、安倍首相、さらには黒田日銀総裁まで、「賃金を上げろ!」と企業にオーダーはする。

 けど、「非正規との賃金格差をなくせ!」とか、「正社員化しろ!」とオーダーすることはない。

 結局のところ、

「正社員化は、企業の判断でやるべき」(By 安倍首相 冒頭の国会での答弁より)であり、
「正社員をなくしましょう」(By 某大手派遣会社の会長であり、経済学者)だから、仕方がないってことなのか?

 たとえ、その煽りを現場が受けようとも、契約社員が3年ごとに就活を余儀なくされようとも、「そのうちそれがノーマルになりますから、待っててね!」ってことなのか?

 ……それっておかしくないですか?

 というわけで、今回は「3年問題」についてアレコレ考えてみます。