みなさまごきげんよう。
フェルディナント・ヤマグチでございます。
土曜日曜と連続で行った「フェル先生のさわやか人生相談」
出版記念イベント。
たくさんのお客様にお越しいただきました。ありがとうございました。
お楽しみいただけましたでしょうか?
土曜日は阿佐ヶ谷のシャビーなスナックを借り切って、「すなっく フェル」なるワンナイトイベントを。悩みを抱える女性客が圧倒的に多かったのですが、週刊SPA!以来の読者というコアな男性の方もいらっしゃいました。前夫のDV話を涙ながらに話す女性の隣で、「ロードスターのフロントサスペンションは……」と語る方がいる。こうしたカオスな感じがたまらなく阿佐ヶ谷の街にマッチしています。
おかげさまで、「すなっくフェル」は大いに盛り上がりました。私が漬け込んだ「特製フェルぐりあ」の評判もまずまずで一安心。年が明けたらまたやろうと思います。
「すなっく フェル」は午後6時から1時間ずつの4部構成。30分の入れ替え時間を見ましたから、最後のお客さんが出たのは午後11時半。ヤレヤレと片付けを済ませて店の外に出ると、警察に連行される酔っぱらいの兄さんが。さすが阿佐ヶ谷。夜の街はこれくらいの緊張感がなくてはいけません(笑)。
「俺ぁ殴ってねーよー」と騒ぐ兄ちゃんをマアマア話は交番で聞くから、と優しく連行するお巡りさん。お役目ご苦労様です(`・ω・´)ゞ
こちらは代官山のイベント風景。BOSSA林さんと、来場いただいた美女軍団。
前にチラッと触れたマツダの藤原大明神。年末ギリのタイミングで、滑り込みインタビューを敢行いたしました。当「走りながら考える」の年始第一号は、「藤原大明神降臨祭」で始まります。炸裂する藤原節!黙り込みうつむく広報!マスクが邪魔で水を飲めないフェル!新年からカマします!お楽しみに!!
トヨタとの提携前夜にどんなやり取りがあったのか。日経新聞には1行も出てこないような話もタップリうかがいました。さて、どこまで書こうかね……。
何の脈略もありませんが、最後に最近ハマっている歯磨きがあるのでご紹介。イタリアはフィレンツェのデンタルケアブランド、MARVISです。何と言っても味が良い。私がハマっているのはクラシック・ストロングミント味です。「ストロング」といっても、フィッシャーマンズフレンドほど強烈にピリピリ来るわけではありません。適度な刺激が心地いい。チューブのデザインも洒落ているので、シンクにおいておくと洗面所の雰囲気がピッと引き締まります。オススメです。
お味は全部で7種類。私は現在このクラシック・ストロングミントをリピートしています。
とんだ事態になりまして……
今回お届けするのはポルシェのオーナーインタビューだ。
911を所有する友人知人はたくさんいる。古いナローから最新のターボモデルまで、みんな気軽に話を聞かせてくれるだろう。今回の記事は、オーナー探しに苦労することはない(前回のインプレッサでは、期間中に当該オーナーさんを見つけられなかったのだ。面目ありません)。
せっかくなら最新の、しかも高性能なターボを駆る友人が良いだろう。
ちょうど昨年の今頃にターボを買った友人の町田君にお願いをしてみよう。彼ならきっと快く対応してくれるだろう。電話をすると、案の定、町田くんは「良いですよ。いつでもどうぞ」、と気持ちよく答えてくれた。
日時だけ決めていたので、取材の場所を聞かなければいけない。首都高をグルっと回りながら話そうということだったので、恐らくは彼の自宅から出発することになろう。インタビューの前日。町田くんに翌日の約束と場所の確認のために電話を入れた。すると、彼にしては珍しく、いささか沈んだ声が聞こえた。
「実は、とんだ事態になりまして……今回はご協力するのが難しくなりました」と言う。複数の企業を経営し、義理と人情と適度な浪花節、加えて冷静な計算で生きている彼は、決して約束を一方的に反故にするような男ではない。いったい何があったのだろう。
フェルディナント(以下、F):協力できないって……何かあったの?
町田(以下、町):実は……ブツけてしまったんです……。
F:えぇ?ポルシェを?怪我はないの?
町:怪我はありません。というか、自分が運転していたんじゃないんです。
彼の奥様はクルマを運転しない。息子さんは海外留学中で、この時期日本にはいないはずだ。彼のポルシェを運転する人間は他に思い当たらない。すると、洗車に出したスタンドか、あるいはバレーのあるホテルのパーキングでやられたか……。
町:12カ月点検にクルマを出していたら、納車の時にポルシェセンターの奴がブツけたんです。
F:ポルシェセンターの人が……。マジ……?
町:マジです。そんなに大きくはないんですが、やっぱりブツけたクルマでなんかメディアに出たくありません。縁起が悪いし、そもそもカッコ悪い。だからフェルさん、急で申し訳ないんですが、今回は勘弁してもらえませんか?なんなら僕の友人でポルシェに乗っている奴を紹介します。今日これからでも、フェルさんの家に行かせますから。
事故が起きたことは仕方がない。古い読者なら覚えておられようが、私も同じ経験をしたことがある。だがなにも、インタビューの直前にブツける事はないじゃないか、ポルシェの人。
町:こんなことは初めてです、と言っています。
当たり前だ。こんなことがしょっちゅうあったら商売になるまい。
町:菓子折りを持って謝りに来ましたが、いいから早く直せ!と追い返しました。
それもまた当然だろう。留学中のご子息はクリスマスに帰省する。彼は男同士でドライブに出かけることを心待ちにしていたのだ。それを台無しにしてしまった罪は深い。
この下の部分をコツンと。本当にコツンなんですが……
結果、同乗して首都高をグルっと回る計画は諦め、ブツけたリアの部分を撮影せず、また町田くんの顔と実名も出さないことを条件にインタビューに応じてもらうことになった。当初は顔も名前も露出OKで、彼の経営する会社のwebのリンクも貼ることになっていたのだ。
「“ブツけたクルマの間抜けなオーナー”として出たくないんです」とのことで、全てオジャンになってしまった。別に自分がブツけた訳ではないのだから良いじゃないか、と食い下がったのだが、「勘弁してください。マヌケ過ぎます。良い笑いものです」の一点張りである。確かに彼の商売は、ゲンを担ぐ人が多い。かくして、名出し顔出し事故箇所出しNGのインタビューと相成ったのである。
ヤンチャをやっていた頃から乗っています
町:クルマは昔から好きで、若い頃にヤンチャをやっていた頃から乗っています。地元では先輩の改造車を譲ってもらったりしていました。ええ、その前はご多分にもれず、もちろん二輪です。フェルさんは東京だから分からないかも知れませんが、僕らの地元なんか、運動部に入って坊主になるか、ヤンチャをやって剃りを入れるかの2つに1つしかないんです。
選択肢が少ないんですよ。え?勉強?まあ学校によりますけど。僕らの学校じゃマトモに勉強する奴なんかいませんでしたね。何年かに一人、突然変異みたいに東大とか京大に入るやつもいましたけれど、それは本当に稀なケースです。ほとんどの奴が大学に行かず就職します。自衛隊に行くやつも多かったな。みんな3年で除隊してしまいますが。いったん自衛隊に入ると、その後の就職が良いんです。上の言うことをパシッと聞くようになりますから、採る方としても使い勝手が良いんでしょうね。
イグニションを撚ると、タコメーターは火が着いたように赤く染まる。
自分でしっかり稼ぐようになって、初めて買ったのがメルセデス・ベンツのGクラスです。好きなんですよ、あの格好が。基本のデザインはもう何十年も前のものなのに、決して古さを感じさせない。古いのに新しい。そこが好きです。それ以来、ずっとGのAMGです。前にフェルさんの家に遊びに行った時に乗って行ったでしょう。あれが今乗っているAMGの63です。色はずっと黒。3年の車検ごとに買い替えています。今ので何台目になるのかな。トータルで4台、いや5台目になりますかね。
ともかく大好きだから、去年ポルシェを買った後も、そのまま取ってあります。そういやGは来年あたりにフルモデルチェンジをするらしいじゃないですか。もう即買いです。今から決めています。色はやっぱり黒がいいな。他にも国産の大きなSUVが1台、あとクロカン車が1台ありますね。それぞれ別荘に置いてあります。あれ?意識したわけじゃないですけど、考えてみたら今持っているクルマは全て四駆ですね。このターボも四駆ですから。全て四駆ということになる。今話していて、初めて気付きました。
ポルシェを買った理由ですか。いえね、実は当初ポルシェに対してそんなに強い思い入れはなかったんです。前に住んでいたマンションで、管理組合の理事をやらされましてね。そこの副理事長の奥さんが、町田さんあなた、良い若い人がベンツなんかおよしなさい、と言うんです。ベンツなんかやめて、ポルシェに乗りなさい、と。ポルシェの人を紹介してあげるから、と。あまり乗り気じゃなかったんですが、理事会でしょっちゅう顔を合わせる人だし、その奥さんもわりかし強引な人だから、話はどんどん進んでしまった。
しばらくすると、副理事長さんのご紹介で参りました、と名刺を持ってやって来たのがポルシェジャパンの前社長の黒坂登志明さんです。社長まで出てきたんじゃそうそう無下にも出来ません。とりあえず試乗だけはさせてもらいました。その時はカイエンです。乗った印象?うーん、もちろん良いんだけど、買うほどではありませんでしたね。あまりピンと来なかった。
でもそれ以来、ポルシェというクルマを意識するようになりました。街で見かけても、それまではそれほど気に掛けていなかったポルシェが、目に飛び込んでくるようになったんです。そして、そのデザイン性に徐々に惹かれて行くことになりました。シンプルで合理的で、「不変」というのがまた良い。どんなにモデルチェンジを重ねても、ポルシェはひと目でポルシェと分かる。ポルシェデザインのプロダクツもずいぶん見て回りました。スピーカーでいいデザインのものがあるんです。海外に出張に行った時に、それを買って帰ったりもしましたね。エラい荷物になりましたけど(笑)。
あ、そう言えばその副理事長夫人。町田さんあなた、もともと1億円もするマンションを、特別に安く買えるコネがあるからって、石打のリゾートマンションを買わされたりもしました。そっちのマンションも主人が管理組合の理事長をしているから安心よって。確か100万とかそれくらいの値段で、元が1億ってことを考えれば、安いことは安いんだけど、月々の管理費がべらぼうに高くてね。スキー場のマンションなんか、ほとんど使うこともありませんし。
この話にはオチがあって、何年かしたら、そこの旦那が逮捕されたんですよ。ええ理事長が。マンションの修繕積立金を何億円も横領したとかで。新聞を見たら、僕が買ったマンションがドカンと写真入りで記事になっている。本業が公認会計士だって言うんで、頭から信用しちゃっていたんです。Kとか言ったな。トボけたオッサンですよ、本当に(笑)。
失礼。ポルシェの話でした。そのカイエンの試乗から4年経ったある日、「あ、俺、今日ポルシェ買おう」と急に思い立って、前に黒坂さんに連れて行っていただいたポルシェセンターを改めて訪れたんです。で、せっかく買うなら一番速いターボが良いや、ということで、911のターボを買うことにした。神の啓示、ですか?うーん、そんな大層なものじゃありませんが、ともかくある朝起きたら、ビビっと来たっていう感じです。この感覚は、なかなか上手く説明できません。
本当に、「あ、今日だ。今日買おう」と(笑)。ポルシェのセールスはさすがにちゃんとしていて、4年ぶりにアポなしで店に行っても自分のことをしっかり覚えていて、「あ、これは町田社長。いらっしゃいませ」なんて言うんです。顔と名前を覚えているんですね。大したものです。ま、今回僕のクルマをブツけたのもそいつなので、折角の信用も台なしになりましたが(笑)
このピコッと飛び出したアーチカバーは日本モデルだけのパーツで、本国仕様には付いていない。ネガティブキャンバーでタイヤの下端がハミ出る分を覆わなければならないのだ。今は法規が変わり、2018年モデルからこれを取り付けなくても良くなった。
自分の足に最高にフィットしたスニーカー
ポルシェに乗った印象を一言で表すと、「自分の足に最高にフィットしたスニーカーを履いて走る」という感じですね。足全体がスッと包み込まれて、何のストレスもなく自然に足が前に出るような感じ。軽くて、適度に反発力があって、トントントントンとどこまでも走って行ける感じ。フェルさんもトライアスロンをやるから分かりますよね。最高のフィッティングで走れる最高のランシューズ。ポルシェはそんなクルマです。
ターボだから踏めばとんでもない馬力が出ます、ひとたびアクセルを踏みつければ、陳腐な言い方ですが、ロケットのように爆発的な加速を味わえます。でもそれよりも凄いのがブレーキです。世界で一番効くんじゃないですか、どんな速度領域からガン踏みしても怖くない。ブレずにピタッとまっすぐに止まる。電子制御でブレないんじゃなくて、もともとクルマの持つ性能で止まる感じです。
そしてブレーキからアクセル、アクセルからブレーキへのコンビネーションが抜群に良い。ラグがないんです。クルマが自分の運転の先読みしているんじゃないか、と思うくらいに早くスムースに切り替わる。良いですよ、ポルシェは。本当に買ってよかったと思います。これ、あと2年で車検が来るんですが、おそらく自分のクルマ所有史上初で車検を受けると思います。なんか手離したくない。離れたくないという恋愛感情にも近い感覚がありますね。つまりはそれほど良い訳です。
ドアを開くと、富の象徴であるTurboのロゴがお出迎え。
最新で最速のポルシェに乗っていると、徐々に古いポルシェが気になり始めました。すごくカッコイイですよね。古いポルシェを大事に乗っている人は、みんなお洒落に見える。工業製品って、必ず経年劣化をするものですが、ポルシェの場合は、それすらも味になる。経年劣化じゃなくて、経年変化。年を重ねるごとに味わいが出てくる。街の風景はどんどん変わっていくけれども、古いポルシェはそのままで一切変わらない。これほど街に溶け込むクルマもないでしょう。ポルシェと一緒にいい風に歳を重ねて行ければ素敵だな、と思います。
このターボは貴重な左ハンドルだから、当分とって置こうと思います。ポルシェジャパンからは、ともかく強烈に右ハンを進められましたが、ずっと左に乗ってきましたからね、これを手放すのはもったいない。え?フェルさんこいつを狙っていたんですか?それは残念でした。他を当たって下さい(笑)。フェルさんも早くポルシェを買って、一緒にドライブに行きましょうよ。
野郎同士のツーリング。絶対に楽しいですよ。運転そのものが楽しいクルマって、そうそう出会えないじゃないですか。そういう意味では、あの横領理事長にも感謝しています。あの夫婦と会わなければ、ポルシェに乗っていないかも知れませんからね。え?今ですか?刑務所にいるんじゃないですか。ポルシェは自分のお金で買わなくちゃダメですよね。横領したカネじゃイカンです(笑)。
一声で100万オーバーの超高級オーディオ、Burmester。いい音がするって、そりゃそうでしょう。高いんだから。
取材の直前にコツンとやってしまった白のポルシェターボ。
首都高を「走りながら考える」計画は流れてしまいましたが、いい話をうかがうことが出来ました。横領犯夫妻からポルシェを勧められたエピソードなど、なかなか聞けるものじゃありません。さすが町田くん、持ってます(笑)。最新、最速のポルシェに乗ったことにより、古いポルシェに目が行くという話も実に興味深い。年末は彼と鍋をやることになっている。クルマ談義に花が咲きそうです。
今年も大変お世話になりました。
2018年もいい年にしましょう。
それではみなさまごきげんよう。
良い年をお迎え下さい。
卒業します!
読者のみなさま、こんにちは。
担当編集のY崎です。
突然ですが、今回のフェルさんの記事を最後に担当を卒業させていただくことになりました。9カ月という短い期間でしたが、ジェットコースターに乗っているかのように、ハラハラドキドキする得難い経験ができました。
締め切りギリギリの時間まで、待てど暮らせど原稿がこない、取材先の自動車メーカーの広報担当幹部が怒鳴り込んでくる、日曜日の夜に家族で焼き肉レストランで食事をしていると、突然、原稿の修正依頼の電話がかかってくる……。
ここではとても書けない、フェル担当だからこそ味わえる衝撃的な事件もありました。
いろいろドラマもありましたが、本コラムの担当は辛いだけではありません。フェルさんの取材に同行するのは本当に楽しみでした。一般的なマスコミの自動車担当記者が知らないような様々な面白い話が聞けるからです。
私もジャーナリストとして様々なクルマの開発者を取材した経験はありますが、フェルさんは、エンジニアの人間性と面白さを引き出すのが本当にうまい。大変勉強になりました。今後は一読者として(新担当編集の苦労に思いをはせながら)、フェルさんの記事を読むのを楽しみにしています。
次の担当は、伝説の男です。名前はまだ明かせませんが、ご存知の読者の方も多いもしれません。あの男がついに復活します。
本人は「もう二度と担当したくない」と泣き叫んでいたようですが、運命とは本当に残酷なものですね。かつてのように毎週、金土日がつぶれるのではないか、と戦々恐々としていました。地獄の日々がまた始まるのでしょうか……。担当を外れる身としては、あふれんばかりの感謝とともに申し訳ない気持ちでいっぱいです。
さて新担当編集になって、新年から再スタートを切る「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」。引き続き、ご愛顧のほど、どうぞよろしくお願いたします!
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