みなさまごきげんよう。
フェルディナント・ヤマグチでございます。
今週も明るく楽しくヨタ話からまいりましょう。
※ゴーン氏への直撃インタビューが収録された『英語だけではダメなのよ。』電子版出ました! もう1万円もする古本を買う必要はありません(笑)。
と、ヨタを飛ばすその前に。
14歳のご子息が不登校になり、「なにか突破口を見つけていただけるかと思い、コメント欄にご相談を入れさせていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。」と投稿された方へ。
当欄は人生相談の場ではございません。
お悩みがございましたら、私がcakesで連載している、「フェル先生のさわやか人生相談」へご相談ください。なお、採用するかどうかは編集部の判断によりますので、不採用の場合は悪しからずご容赦ください。
気温29度! 完走率60%! 厳しい大会でした。(photo by 千葉智雄@
チームゴーヤ)
週末は「第34回NAHAマラソン」に出場してきました。
NAHAマラソンは県内1万4000人、県外からは1万1000人の選手が参加する大規模な大会です。沿道の応援が賑やかで、私設のエイドステーションがとても充実しています。坂が多く苦しいコースですが、走っていてこれほど楽しい大会はありません。
ギリで4時間切り。シーズン初めとしてはまずまずの成績でしょう。3月3日開催の東京マラソンを目指して、これからアゲていきます。
打ち上げ会にて。みんな頑張りました。空自の中嶋一佐には久しぶりにお目にかかりました。
「沖縄で一番美味しいピザ」と言えば間違いなく久茂地の BACAR (バカール)なのですが、同店を経営する仲村大輔氏が、北谷町(これで“ちゃたんちょう”と読みます)に卵料理を中心とした素敵なカフェをオープンさせました。米軍住宅の近くなので、外国人客多し。つかの間のエトランジェ気分を味わえます。
バカールの仲村大輔氏が海沿いのイケてるカフェをオープン。この人は本当に店作りが上手い。場所は北谷町の宮城海岸。ダイバーとサーファーが共存する不思議な海岸です。
忘年会シーズンの始まりです。年内の平日は27日まですべて埋まっています。本業とフェル業の飲み会がちょうど半々といったところでしょうか。
入江のぶこ都議を囲む文化人の会(笑)。いろいろ勉強になりました。いや議員さんって大変な仕事です。
こちらはポルシェの改造でお世話になった山下さん率いる8speedの忘年会。クルマ関係の方が大集合。毎日飲んでいてヤバいです。
ということで本編へとまいりましょう。
ホンダのモータースポーツ部長、山本雅史さんのインタビュー続編です。
ずばり「ミニバンの会社」「軽の会社」と思われてませんか
巨額の資金が必要なF1に、ホンダが参戦し続ける理由は、
1:人材の育成
2:ブランドの構築
にあるという。
人が育っても、ブランドイメージが高まっても、クルマが売れなければお話にならない。
F1のおかげでホンダのクルマは売れているのだろうか。
今回はそのあたりからお話を伺おう。
F:F1ファンのコア層の人、サーキットまで観戦に来るような人は、ホンダに対するロイヤリティが高いものなのでしょうか。つまりその方々は、ちゃんとホンダのクルマに乗っているのでしょうか? 一生懸命やっていても、最終的にホンダのクルマが売れなければ意味がないですよね。
山本さん(以下山):そこはちゃんとリンクしています。今年調査した結果からも明らかなのですが、やはりホンダのファンはイコールでクルマ好きで、モータースポーツのコアファン層もその中に入っている。「何でF1を見に来るのですか?」という質問に対しては、「やっぱり自分がホンダ車に乗っているから」という回答が圧倒的に多いんです。
F:なるほど。リンクしている。「ホンダと言えばモータースポーツ」という面も確かにあるのですが、一方で今のホンダは「ミニバンの会社」、あるいは「軽自動車の会社」というふうに言われてしまう側面もあります。
山:うん。一時期は確かにそう言われていました。
F:今もそうではありませんか。実際にホンダで一番売れているクルマはダントツでN-BOXです。
シビックが出てきて「ミニバンの会社」から変わり始めた
山:シビックが出てきて、ちょっと流れが変わってきたかなという感じがしています。ええ、TYPE Rもそうですし、シビックが日本で復活して、あのクルマでちょっとイメージが変わってきたかな、という兆しがあります。だからあんまり最近は「ホンダはミニバンの会社」とは言われません。
独ニュルブルクリンクサーキットを疾走するシビック TYPE R。コメント欄で登場を希望される方もいらした。
F:「ホンダはミニバンの会社」、と言われるのはうれしくないですか。
山:あんまり僕はうれしくない。だけど、何も言われないよりはずっと良いとも思っています。ミニバンでも何でも、チャームポイントじゃないですが、「ホンダと言ったらコレ」というのが何かあるのはとても大事なことです。
F:「ホンダって何の会社だっけ?」と言われるよりはずっといい。
山:そうそう、そうですよ。その通り。全く。そう言われるよりはずっとマシです。
F:お客さんもそうですが、ホンダの社員は全員がクルマ好き、モータースポーツも大好き、というイメージがあります。そのモータースポーツの2輪も4輪も仕切る“モータースポーツ部長”というお仕事は、ホンダ全社員の憧れの的だと思います。山本さんは、どうやって今のお立場になられたのですか。元々のバックグラウンドを教えてください。
山:僕は最初、和光研究所<編注:ホンダの子会社、本田技術研究所の四輪R&Dセンター(和光)のこと>っていうとこに入って、デザインのモデルスタジオの中の仕事をしていたんです。本当はエンジン設計をやりたくてホンダに入ったんだけど、何か入ったらそんなふうになってしまって……(苦笑)。いろいろ文句も言ったんだけど、聞き入れてもらえなくて。それで20代の後半から今でいう係長みたいな、マネージメント的な仕事が多くなってきて、デザイン系のデータとかモデルとか、CATIA(3次元CADソフトの定番、仏ダッソー・システムズの製品)を使う部屋のマネジャーもやりました。そんなことを続けながら、今から8年前に栃木研究所<同:四輪R&Dセンター(栃木)>に転勤して、技術広報室という部署に異動になりました。
F:ホンダには技術広報という部署があるのですか。
山:元々は技術情報室という部署で、ハシケンさんが長くやっていたところです。ハシケンさんご存知ですか? 橋本健さん。ホンダの名物オジサン(笑)。もう定年された方なんだけど、その人がずっとやっていた部署。そこで5、6年やって、2年前に今のモータースポーツ部長になったという感じですね。
F:モータースポーツ部長になったのは、何かキッカケのようなものはあるのですか?
山:僕が栃木の技術広報室の室長になった頃は、ホンダの国内モータースポーツがもうメチャクチャ低迷していたんです。ともかく勝てなかった。全然勝てない。そして何よりも従業員のモータースポーツに対する意識が低かった。
F:へぇ。ホンダなのに。
山:その通り。ホンダなのに。「ホンダのDNA」とか宣伝文句では言っているのに、このザマはなんだと。こんなんでいいのかと。いいわけがない。それで松本さん(フェルの「F1なんて誰も見てないスよww」の言葉に激高され、アブダビまで連れて行ってくれた方)と相談して、もう本社は放っといて研究所でやろうぜと。
F:いいですねいいですね。本社は放っといて勝手にやっちまえと。あーゾクゾクする(笑)。
山:ホンダの従業員が盛り上がっていないのに、どうしてお客さんが盛り上がれますか。それでいろいろと仕掛け始めました。まずは内向きにやろうと。ウチにはHonda TVっていうTV番組があるんです。国内の事業所とか、工場とか、研究所とかに向けて、昼休みに番組が流れているの。それをもじって、研究所はHGなので、HGTVっていう番組を僕が作って技研でバンバン流したの。
専任でやらなきゃ無理ですよ
F:技研の自主制作番組ということですか。
山:そう。Honda TVに対抗してHGTV。研究所だけは昼休みにモータースポーツの結果とか、モータースポーツの面白みが分かる面白い番組を流そうと言って。
F:全部社内で作ったんですか。
山:もちろん全部社内。そういうの好きな奴がいるじゃないですか。それでウチで何の仕事してるんだか分からない奴。そいつらを集めて、「お前こういうの得意だろ?」って聞いて。そうしたら、「いや、僕ホントはこういう仕事やりたかったんです」って言うから「ヨシ分かった」と。それで3、4人集めて、ちゃんと4Kのカメラも買ってラボも作って、編集も全部そこでやって技研で流したの。
F:その人たちはエンジニアとしての仕事の合間にやるのですか。
山:いや、専任専任。専門でやらなきゃムリですよ。僕が勝手に選んで、「取材してこい、サーキットに行ってビデオ回してこい」って言って。みんな大喜びでやりますよ。その番組がウケて、噂がホンダの本社にも伝わって、本社でも流れるようになって、そうこうするうちに、「お前モータースポーツの部長やれ」ってことになって。もう事故みたいなもんですよ(笑)。
レッドブルにミネラルウォーターがあるとは知らなかった。
口を開けて待っていても仕事は回ってこない。ボサッとしていても役職は降ってこない。
モータースポーツを盛り上げたい。この“思い”と“行動”が伴ったからこそ、山本さんは今の立場になり得たのだ。
F:レポートラインはどうなっているのですか。モータースポーツ部長は技研の社長直結のお立場ですか。
山:いや、社長ではありません。今あそこにいる森山(克英)執行役員が私のボスです。
F:山本さんのミッションは何ですか?
山:まず「勝つレースをするにはどうすればいいか」というのが1つ。それとブランド。モータースポーツによるブランド構築。ウチはお金がバンバン出ていく部署だけど、何かを売って収益を上げる部署ではないので。森山さんが僕に言うのは、そのバランスをキチンと取れと言うことです。勝つこととブランドの2つは元々僕がずっと言っていることなので、森山さんは「それをちゃんとやってください」と言うだけですね。
F:モータースポーツは効果測定が難しい。レースで何勝したおかげでシビックが何台売れました、とは言えませんものね。
山:言えません。だけどホントは僕、そこまでやりたい。
F:F1に出る限り、やはり優勝したいですよね。
山:したい。勝ちたい。もちろん優勝したいから、来年はレッドブルと組んでいます。
来シーズンは必ず1度は優勝を!
F:何年後には、いずれかのレースで勝つ、という目論見はあるのですか?
山:もちろんありますよ。来シーズン。来シーズンには必ず勝ちたい。
F:早っ! 来年ですか?
山:うん。1勝すれば、何がどうレースを作るかということが分かると思うんですよ。あまり詳しくは言えませんが、例えばパワーユニット(PU)。PUをウチが作って研究していますが、その中身は現状では順風満帆で全てが100点というわけではない。例えば今年でいえば21戦中、レギュレーションをまっとうに守ろうとすると、7レースで1基を使うということになる。1台のマシンで年間に使っていいPUは3基までだから。
F:なるほど。1台のマシンに3基のエンジン……いやPU。
山:その3基をどうマネジメントしていくか。勝ったときのデータで、そのまま後のレースを続けていって、本当に7レースも持つのかとか、いろんなことが考えられるじゃないですか。1勝すると。
F:なるほど。確かに。
勝って初めて見えてくる世界
山:やっぱり勝たないと始まりません。正直今日のレースを見ていても、トップ3チームの速さは尋常じゃない。あんなラップは出ない。レース中に。いや、出せって言ったらウチだって出るかもしれません。でもそんなラップをレース中に出したら出したで、タイヤへのストレスもあるし、違う次元になってしまう。クルマの車体のレベルもあるし、まずは勝って、初めてそのPUに課せられた課題がクリアになってくるんじゃないかなと僕は思っています。
F:勝って初めて見えてくる世界があると。
山:6位とか7位で完走してポイントを取れたらもちろん嬉しいことなんだけど、でもまだ「勝つ人」とのギャップが大きいじゃないですか。「このギャップって何なの?」っていうのを突き詰めるには、(1位になった)彼らのデータは我々の手元にはないわけだから。自分たちが積んでいくデータで勝って、初めて「何がリスクで何がアドバンスか?」というものが見えてくると思うんですね。だからまず何としてでも1回勝たなきゃいけないんです。
F:勝つと言えば、来季ホンダはトロロッソに加えてレッドブルと組んで4台体制になります。レッドブルはルノーのPUを捨ててホンダと組むことになる。ルノーのPUでもそこそこ勝てているのに、ホンダと組むのはどうしてなんでしょう。誠に残念なことですが、ホンダのPUは現段階ではレース優勝という結果が出ていない。そのホンダと組むのはリスク以外の何物でもないと思うのですが、どうしてレッドブルはホンダと組むのでしょう。
山:レッドブルにはものすごく感謝しています。我々を選んでくれたのは、やっぱりレッドブルの人たちが私たちの可能性に懸けてくれたのだと思います。僕らは後発で、今回のレギュレーションが全て決められてから開発しています。一方で他のメーカーは、レースが始まるずっと前から……大体3年ぐらい前からレギュレーション(開発ルール)の議論をしているので。
トロロッソ・ホンダの来シーズンのドライバーは、ダニール・クビアトとアレクサンダー・アルボンに決定した。
さあさあ、いよいよ生臭い話になってまいりました。
2回で終わろうと思っていたのですが、山本さんのお話、面白すぎるので収まり切りませんでした。F1っていろいろ“見えないところでの戦い”があるんですね。このお話は次号に続きます。
それではみなさんごきげんよう。さようなら。
ホンダのモータースポーツ総まくり
こんにちは、AD高橋です。
ホンダといえばモータースポーツ。F1を筆頭にさまざまなカテゴリーに参戦しています。そして2輪メーカーでもあるホンダは、2輪のレースでも活躍しているのはみなさんご存じの通り。
そこで今回はホンダが参戦している代表的なレースを見ていきましょう。
■フォーミュラ1
フォーミュラレースのトップカテゴリーに参戦するホンダ。2019年は3月17日の開幕戦(オーストラリアGP)から12月1日の最終戦(アブダビGP)まで全21戦。ホンダはトロロッソに加え、レッドブル・レーシングにもパワーユニットを供給します。
■インディカー・シリーズ
北米最高峰のフォーミュラレースであるインディカー・シリーズ。2019年は3月10日の開幕戦(セント・ピーターズバーグ)から9月22日の最終戦(ラグナ・セカ・レースウェイ)まで全17戦。伝統あるインディ500は5月26日に開催されます。2018年、ホンダはマニュファクチャラー・タイトルを獲得。そして、2018年に続き、2019年も佐藤琢磨選手がRahal Letterman Lanigan Racingから参戦します。
■SUPER GT
国内GTレースの最高峰であるスーパーGT。2018年は高橋国光氏が率いるRAYBRIG NSX-GT(山本尚貴選手/ジェンソン・バトン選手)がGT500クラスでドライバーズタイトル、チームタイトルを獲得しました。2019年は4月13~14日の開幕戦(岡山国際サーキット)から11月9~10日の最終戦(ツインリンクもてぎ)まで全8戦開催されます。
■全日本スーパーフォーミュラ選手権
2012年まで開催されたフォーミュラ・ニッポンの流れを汲むフォーミュラレース。2018年はTEAM MUGENの山本尚貴選手がシリーズチャンピオンに。2019年は4月20~21日の開幕戦(鈴鹿サーキット)から10月26~27日の最終戦(鈴鹿サーキット)まで全7戦開催されます。
■MotoGP
ロードレースの最高峰であるMotoGP(ロードレース世界選手権)。2018年、ホンダは2年連続で、ライダーズ、コンストラクターズ、チームタイトルの3冠を達成しています。2019年は3月10日の開幕戦(カタール)から11月17日の最終戦(バレンシア)まで全19戦。日本GPは10月20日にツインリンクもてぎで開催されます。
■全日本ロードレース選手権
JSB1000、J-GP2、ST600、J-GP3という4つのクラスが設けられた国内選手権。2018年のJSB1000では、高橋巧選手が2位、高橋裕紀選手が5位に。2019年は4月6~7日の開幕戦(ツインリンクもてぎ)から11月2~3日の最終戦(鈴鹿サーキット)まで全8戦開催されます。
■モトクロス世界選手権
未舗装コースで行われるレースで、世界選手権はMXGPとMX2の2クラスに分かれています。2018年はMXGPクラスに参戦するTeam HRCのティム・カイザー選手がシリーズランキング4位に。
■ダカールラリー2019
現在はペルーで行われているダカールラリー。ホンダはMonster Energy Honda Teamとして2輪で参戦していて、2019年は5人のライダーが挑戦します。日程は1月6日~17日。
モータースポーツは地上波だとなかなか見る機会がありませんが、CS放送やインターネット中継などで見ることができます。ぜひチェックしてみてください。
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