ポルシェは抜かりがないのだ
それじゃポルシェターボはどうなったのかというと、あちらはそのままで、全くニュアンスの異なるハイパワーのターボ車がキチンと用意されている。テールには「Turbo」のバッジが燦然と輝き、羽が生え、尻がデカく、ひと目で「ポルシェターボ」と分かるようにデザインされている。その辺り、ポルシェは抜かりがないのだ。
それでは早速クルマに乗り込んでみよう。例によって高橋のマンちゃんからクルマを受け取る。
F:どうですか?どんな感じ?どこか気を付けるべき点はありますか?
マンちゃん:うーん。特にないんですよねー。もうビックリするくらいに普通です。
シートに座り、シートベルトを締める。シートベルトはやや取り出しにくい位置から生えていて、スムーズに引っ張り出すには多少の慣れが必要だ。シートの位置を合わせ(マンちゃんは身長が2メートル以上ある巨人なので“もう少し低いかも知れない”、彼が乗った後はシート位置を大きく変更しなければならないのだ)、ステアリングの位置を調整する。キーをハンドル右側にある穴に差し込み、右回しに撚る。そう。911カレラGTSのエンジンスタートは、昨今流行のスタートボタン式ではなく、今時キーを撚るのである。これは好き嫌いの問題だが、私は走り出しの前の儀式として、キーを撚るスタイルのほうが好きだ。

ブワンと派手な音を立ててエンジンが始動する。「大分静かになった」と聞いていたが、そこはポルシェ。早朝の住宅街の始動では肝を冷やす程の音量だ。シフトレバーを手前に引いてDレンジに入れゆっくりと走り出す。雨の木曜日午後7時。国道246はちょうど帰宅ラッシュの時間で大渋滞である。ノロノロ走っては停止、この繰り返しである。
しかしストレスは全く無い。ハンドルは驚くほど軽く、ペダル類のタッチ感もこれまた驚くほどソフトだ。世界最高レベルのスポーツカーが、何のストレスもなく渋滞にハマることが出来る。これは大変なことだ。車両を受け取った際にマンちゃんから聞いた、「もうビックリするくらいに普通」、という言葉通りなのである。この日はおとなしく自宅に帰り、食事を取って原稿を書いた(当欄の締め切りが金曜日なので、毎週木曜日はわりと早い時間に帰宅しているのだ)。

決戦は金曜日である。早めに仕事を切り上げ、6時半に会社を出る。用賀から東名に乗り、小田原厚木道路へ。トバしたい気持ちをグッと抑えて、法定速度遵守で小田原へ。ここから海沿いの道へ入る。ワインディングを求めて、敢えて旧道へ向かう。
ハンドルの右下に設置されたダイヤル式のスイッチを回してスポーツモードに切り替え、アクセルを強く踏み込む。豪快な加速。だがいわゆる「ドッカンターボ」的な要素は皆無で、スムーズにフラットに加速している。これは少し突っ込みすぎたかな……と思うような速度でも、賢い電子制御が全て助けてくれる。気持ちがいい。実に気持ちが良い。

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