古:いや、気持ち的には速かったのだと思いますよ(笑)。あれはあれで楽しい世界なんじゃないですか。やっぱり音って、クルマにとって非常に重要な要素なので。
F:なるほど(笑)。ちょっと話がマフラー方面に脱線してしまったので開発のお話に戻します。比較的に他部署とのやりとりが多いマフラーの開発で積まれた経験が、いまの開発責任者のお仕事にも役立っているとお考えですか。
譲り合いという言葉は正しくない
古:うーん、どうでしょう。どんな部署にいても、多かれ少なかれクルマの開発というのはそういう仕事なので。すべての部品にすり合わせが必要なんですね。結局、みんなが勝手に都合を主張したら、クルマにならないので(笑)。
F:どんどん車体がデカくなってしまう。どこかで譲り合わないといけない。
古:いや、譲り合いという言葉は正しくない。正確じゃないと思います。
F:それじゃ逆に取り合いですか?
古:うん。まあそうですね。そっちの方が近い。取り合いながらも、何が正しいか、何がお客様に向いているか、ということだけですよね。みんな自分が正しいと思ってアイデアを持ってくるわけですよ。私のところに来る前にお互いで話がつけば、私は結果だけ見ていればいいわけで。それで済むなら楽チンなんですけれど、そうはいかない(笑)。
やっぱり当事者同士じゃ決め切れない悩ましいところはたくさんあって、これはどうしよう。こっちのアイデアとこっちのアイデア、どっちにしましょうというのはしょっちゅうです。そのときに、「俺はこっち」と決めていくのが開発責任者の仕事ですね。それが仕事としても一番多いです。
F:なるほど。その「俺はこっち」の尺度とは何ですか?
古:それはもう自分がお客様になりきるしかないですよね。こういうのは許してもらえる、これは絶対に許せないと、お客様になりきって決めていく。そしてコスト意識を持って線を引いていく。どこかに線を引かないと、あっという間に高いクルマのできあがりです。「いいクルマができました。でも高いです。以上!」となってしまう。それじゃ仕事じゃありません(笑)。
F:なるほど。いや、今回はいろいろ教えていただき大変勉強になりました。ありがとうございました。
一同:ありがとうございました!

かくしてN-VANの開発責任者、古舘さんのインタビューは終了しました。
クルマ造りは譲り合いではなく取り合い。タイトルの付けやすいお言葉まで頂戴し、非常に原稿にしやすいお話でありました。
次号は遥か中東アブダビよりお送りいたします。
お楽しみに!
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