F:開発責任者をやるのは今回が初めてですか?

:はい。N-VANが初めてです。

F:部品を担当するのと開発全体を見るのとでは、やはり大きく仕事が違いますか?

:うーん。違うような、一緒のような(笑)。部品をやっていた頃も、担当の部品だけを見て仕事をしてきたかというと、決してそうではないので。まあ社内にはそういう人間もゼロではないかもしれませんが、基本はみんなクルマのために、ひいてはお客様のために部品を作るというのがウチの思想なので。だからどんな仕事をしていても、常にクルマ全体を見ていなきゃいけないわけで。

F:個別の部品を担当していても、クルマ全体を常に見ている。

:そうですね。例えばマフラーで言うと、まずエンジンがあって、そこから排気が出てきてフロアの下をずっと通って行かなきゃいけないわけです。そこにはサスペンションもあるから、足回りの部署とも調整が必要になりますし。

F:マフラーの部署がサスペンションの部署ともやりとりをするのですか?

:しますします。だってサスペンションのすき間を縫っていかないと後ろには辿り着けませんもの(笑)。

F:「排気管を通したいから、ちょっとサスを曲げて道を開けてくれる?」とは言えませんものね(笑)。基本、足回りの部署は「お前らが曲がれ」と言うわけで。

避けすぎて叱られました……

:うーん、コメントしにくいけど、そっちの傾向が強いですかね(苦笑)。まあでも、別にどっちが避けたっていいわけですよ。それがクルマにとって良ければ、どっちが避けたっていい。だから私、昔ちょっと避け過ぎて上の人から「お前、普通にしろ」と叱られたことがあります(笑)。

F:ははは。そこまで避けなくてもいいと(笑)。それでは他の部品のことを考えず、クルマの全体最適も考えず、マフラーだけのことを考えたら、今の形状とはまた違う、ベスト形状のマフラーができてもいいわけですね。

:たぶんフェルさんは真っ直ぐがマフラーのベストの形状とお考えなのかと思うのですが、それじゃ曲がったら問題かというと、実はそうでもないんです。だって排気は曲がっていても普通に流れるわけですから。

F:曲がりはすなわち抵抗なのではありませんか?

:いえいえ。それを言ったら、マフラーの中なんて排気が行ったり来たりして抵抗だらけなので。実際に排気はストーンと真っ直ぐになんか走っていないので。

F:えー! 排気が行ったり来たりしている。あの中で?

:ええ。行ったり来たりしています。そうやって音を消しています。

F:なるほど、行ったり来たりで消音効果。でも、騒音も排ガスの浄化も無視すれば、やはりマフラーはストーンと真っ直ぐ排気を出しちゃうのが一番いいはずですよね。

:いわゆる“直管マフラー”ですね。あれはですね、意外とダメなんです。脈動効果が使えなくなるので。回転を上げていく段階で、どこかでストンとトルクが落ちてしまいます。あれはダメですね。

F:それじゃ直管にしていた暴走族関係のみなさまは、実は大して速くなかった……。

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