「彼は日本の覆面レスラー。はい、下がって!」
第410回 【番外編】ドイツで世界最大の農機具見本市に潜入
みなさまごきげんよう。
フェルディナント・ヤマグチです。
本日も、明るく楽しくヨタ話から参りましょう。
iPhoneXを買いました。近所の島忠ホームセンターをブラブラしていたら、テナントの家電量販店の店頭に、「iPhoneX 在庫あります!」と手書きで乱暴に書かれたPOPが掲示されている。需要過多で、年内入手は絶望的と聞いていたので半信半疑で店員さんにたずねると、「docomoなら、いま2台ありますけど」と余裕の回答。現有のスマホのあまりの不出来に辟易していたので、即断いたしました。齢55にして、遂にiPhoneデビューです。
いやあ快適ですiPhone。はやくこっちにすれば良かった。
交誼の深いアップルジャパン広報部長の竹林賢氏に、「僕の友達でiPhoneを使っていないのはフェルだけだよ」と会う度にチクリと言われていたのですが、頑なにAndroidを使っていたのはSUICAが使えなかったからです。しかしその問題も前モデルから解消した。そろそろ変えなきゃな、と思っていた時に「予約なし、待ち時間ゼロで購入できる」という。これに乗らない手はありません。
超人気商品に店頭在庫が出るカラクリを聞くと、「いや実はキャンセルが結構出るんですよ」と。速攻で入手したい人は、docomo、au、ソフトバンクの3キャリアに三重同時発注をかけるのだそうです。で、一番早く来たキャリアと契約し、他の2社分はキャンセルしてしまう。悪質なやり口ですが、「それでもiPhoneはすぐにはけちゃいますから問題ありません。お客さんみたいな人が大勢いるので(笑)」と。なるほどそういうことでしたか。
とまれ、iPhoneは快適です。今まで使っていたXperiaは、暖房器具としては優れていましたが、凍る、切れる、上がる、とスマホとしては最低の代物でした。iPhoneに変えて一番の後悔は、「なぜもっと早くiPhoneにしなかったのか」ということです。現状はこの端末の持つ機能の100分の1も使えていないので、徐々に勉強していこうと思います。
トライアスロン仲間の楠本修二郎氏が、ATカーニー日本法人代表の梅澤高明氏と共著で本を出されました。『NEXTOKYO 「ポスト2020」の東京が世界で最も輝く都市に変わるために』
オリンピックに向けての設備投資額は、官民合わせて11兆6000億円にもなるそうです。「その後」はどうなるのか。東京が「つまらない未来都市」にならないための「あるべき姿」を、本の前半は具体的な数字を上げて徹底解説し、後半は11人のキーパーソンとの対談で示しています。中には「ん?」という方もいらっしゃいますが、まあそこはそれ。面白く読みました。我が東京が、リオみたいに「一年後は廃墟」なんてのは困りますからね。ご一読を。や、出版は日経BPでしたか。
トヨタの東京本社でFIA 世界ラリー選手権のシーズン報告会があったので出かけてきました。チーム代表 トミ・マキネンを始め、ヤリーマティ・ラトバラ、エサペッカ・ラッピ、ミーカ・アンティラ、ヤンネ・フェルムの豪華メンバー。さらにサプライズでオット・タナックとマルティン・ヤルヴェオヤも登場し、場内にはざわめきが広がりました。
ヤリス(和名ヴィッツ)のWRC仕様車とチームのみなさま。
面白かったのは、取材の際にドライバーがやたらとエンジンの出来を褒めるので、エンジンプロジェクトリーダーの青木徳生氏が「Part of the car.」(エンジンはクルマを構成する部品の一つだからさ)と発言した所、隣に座るエサペッカ・ラッピ氏が、すかさず「Heart of the car.」(でもエンジンはクルマのハートだよね)と返したところです。いろいろなお話をうかがいましたが、このやり取りが一番面白かったな。
「Part of the car.」「Heart of the car.」。このやり取りで、エンジニアとドライバーの信頼関係が一発で分かりました。来年のトヨタに期待しましょう。同時通訳の方、美人さんです。
GRカンパニープレジデントの友山さんは、取り囲む人が多すぎて近寄ることが出来ませんでした……。
ということでボチボチ本編へと参りましょう。クボタの取材で訪れた、ハノーファーのアグリテクニカ見学記です。
とにかくデカい!世界最大の農機具見本市
アグリテクニカは、ドイツ農業協会(DLG)が開催する世界最大の農機具、農業資材、農業ビジネスの見本市である。ドイツはもちろん、52カ国から3000もの企業が出展する。来場者数は45万人をラクに超え、その内の10万人は国外からのお客さんである。文字通りの国際展示会だ。
会場はデカい。ともかくデカい。100万㎡の敷地に、こんな巨大な展示ホールが、ゴロゴロと27棟も建っている。
会場となるのはハノーファー国際見本市会場(Hanover Fairground)。ドイツはニーダーザクセン州にある、敷地面積100万㎡、展示ホール数27、総展示面積50万㎡の、世界最大の展示場である。ともかく広い。べらぼうに広い。腕に着けていたGARMINで歩数を計測したところ、一日の歩数は2万5000歩を超えていた。革靴でこんなに歩き回ることなど滅多にないので足が棒になった。
会場には、打ち合わせを兼ねてオープンの前日から訪れた。翌日の開場を控えているのに、他社の皆さんはノンビリとタバコを吸いながら談笑していたりする。こんなことで明日までに間に合うのだろうか。
「もっと右かねー?」「んー。そのへんで良いんじゃない?」なんてことを無線でやりとりしながらノンビリと作業を進めていた。明日までに間に合うのだろうか……。
場内は禁煙のはずなのだが、みなさんガンガンにタバコを吸いながら作業をされている。ドイツはタバコの税金が非常に高いので販売価格も当然高い。またタバコのパッケージが非常におどろおどろしい物で、喫煙意思を減退させるのに十分なデザインなのだが、みなさんお構いなしである。
ドイツの成人男子喫煙率は35%。ちなみに日本は34%だそうだ。我が国の喫煙率はそんなに高かったのか。ちょっと意外である。せいぜい20%くらいかと思った。
しかしすごいパッケージデザインだ。これを見ながら吸えるとは、大変な度胸だと思う。
同じ時間にクボタのブースを訪れたら、こちらの作業はほぼ完了していて、あとは床の防塵ビニールを外すのみ、という状況だった。さすがは日本企業である。
今回の取材の主たる目的は、クボタのみなさまのインタビューにある。前回もご登場頂いた飯田聡・取締役専務役員。マスク姿のインタビュアーにも慣れたご様子で、会場の展示物のご案内を頂いた。
しかしこのフェルマスク。どこへ行っても大変な人気で、これを被って歩くとゾロゾロと人が着いてくる。トラクターに乗って写真を撮ろうものなら、「なんなのアイツ……」とご覧の通りの人だかりである。
ご覧ください、この人気ぶり。みなさん私の写真を撮ってどうするのだろう。「バカ発見ww」とかドイツ語でツイッターに書くのでしょうか……。隣の飯田専務、困惑顔である。
視点を逆にするとこうなる。私のカメラで撮った写真。芸能人はこれが日常なのかと思うと目眩がしてくる。大変だなぁ。パンピーで良かった。
こちらはクボタの現地スタッフの方。「写真を息子に見せるんだ」と仰っていましたが、私のことは何と説明するのだろう。
農機具を見て子供が楽しめるのだろうか?
今回の取材の仕掛人である日経BPの柳瀬博一氏は、周囲に何度も同じことを聞かれて、いちいち「彼は日本のコラムニストで、ドイツのボン出身ということになっていて、フェルディナントって名前はアレなんですけど中身はベタな日本人で、覆面を被っているのは……えーと……」と、いちいち説明するのが面倒になってきて、取材の後半になると、「彼は日本の覆面レスラーです。はい下がって、下がって」とデタラメな説明をするようになっていた。ちゃんと説明して下さい!
今回ご一緒した取材陣。左から3番目が問題の柳瀬氏。
さてさて、展示会当日である。開場を巡って驚いたのは、農業機器の展示会であるのに、家族連れ、子供連れのお客さんが非常に多いことだ。モータショーなら分かるのだが、農機具を見て子供が楽しめるのだろうか?と不思議に思っていた。しかしその疑問はすぐに解決した。農業機器は単純に見て面白いのである。
超大型トラクターのキャビンに上る順番待ちをする子どもたち。会場には家族連れが多く、子供の姿も目立つ。
こちらは世界最大の農業機器メーカーである、ジョン・ディアのコンバイン。デカい!見る者を圧倒する強大な機械。
ジョン・ディア社のブースには、オシャレなファンショップまで設けられている。トラクターのミニカーから実際に乗れる遊具。またTシャツにパーカー、ロゴ入りのマグカップまで売っている。見ると結構な売れ行きだ。ジョン・ディアだけでなく、大きなメーカーのブースには、こうしたショップが設えられていた。クボタにも小規模ながらショップがあり、こちらでは日本未発売のクボタウォッチが売られていた。
ジョン・ディア社ブースのファンショップ。様々なジョン・ディアグッズが売られていた。
白眉だったのは、ジョン・ディアが事務棟に託児所を設けていたことだ。ジョン・ディア印の遊具が並べられ、ジョン・ディアの制服を着た保父さんが遊んでくれるのだ。小さいお子さんはこちらに預けて、ゆっくりご覧ください、という訳だ。無論子供に対してはインプリンティングが出来るので、大きくなったらジョン・ディアを……という効果も狙っているのだろう。
ジョン・ディア社運営の託児所。これはナイスアイデア!
それにしても農業機器はカッコイイ。この車両なんか、そのまま火星を探索できそうなデザインだ。
こちらはジウジアーロデザインの最新のランボルギーニ社トラクター。ご存知かどうか。ランボはもともとトラクターのメーカーだ。現在トラクター部門は分社され、SDFのグループに属している。ちなみに一部のモデルはコーンズが輸入していて、日本でも購入することができる。
こちらは会場の搬入作業で現役として稼働しているオールドモデルのランボルギーニ。
ということで駆け足で会場を巡って参りました。クボタの取材詳報は来年早々にお届けします。木股昌俊社長がクボタに就職した衝撃の理由など、他誌には絶対に出てない裏話も掲載予定。お楽しみに!
本当に駆け足で回りました。外はメチャ寒いし、足が棒になりました。
次号から、通常運行に戻ります。
元日産の水野和敏氏が台湾で開発したプレミアムカー
こんにちは。AD高橋です。
「マンちゃんさあ、ちょっと付き合って欲しいところがあるんだけど、来月のスケジュール空けておいて」
こんなメッセージがフェルさんから届いたのが10月中旬。いったいなんだろうと思っていたら……。なんと試乗会へのお誘いでした。フェルさんから飲み以外の誘いがあることにビックリ。しかも大分県にあるオートポリスで開催されるというのです。本気の試乗会じゃないですか!
みなさんはLUXGEN(ラクスジェン)というブランドをご存知でしょうか。LUXGENは台湾の裕隆グループが手掛けるプレミアムカーブランドで、SUVやセダン、ミニバンなどをラインナップしています。
裕隆にはHAITEC(華創車電技術中心)という自動車開発会社がグループ内にあります。ここの副社長を務めるのが水野和敏氏。そう、元日産自動車のエンジニアで、現行型GT-Rの開発を手掛けた「ミスターGT-R」と呼ばれる人物です。
実は水野さんは「走りながら考える」の第12回に初登場以来、たびたび本企画にご登場いただいています。そんな水野さんからフェルさんのもとに直々のお誘いがきたU6というSUVのマイナーチェンジモデルの試乗会。簡単ではありますがリポートをお届けします。
U6のマイナーチェンジにあたり、水野さんはフルモデルチェンジと変わらないほどの改良を加えたそうです。エンジンはレース用のエンジンチューナーとして有名な東名エンジンと共同開発し、サスペンションはビルシュタインに。タイヤはU6のために専用開発。ほかにもトランスミッション、ブレーキ、シートなど、多くの部分に手が加えられました。
その理由を水野さんは2つ挙げています。ひとつは来るべき自動運転社会に向けてクルマの信頼性を高めること。そしてもう一つはクルマの「楽しさ」をとことん追求するため。
「クルマってさ、本来はライフスタイルの中でエモーショナルな道具だったはず。でも知らず知らずのうちに冷たい道具になってしまったよね。もう一度クルマを熱く楽しいものにしないと」
U6の上級グレードであるGT220でオートポリスのメインコースと荒れた路面のレイクサイドコースを走ってもっとも驚いたのは上質な旋回性でした。重心が高い位置にあるSUVはコーナーで車体が大きく外側に沈み込みます。かといってそれを無理に抑えようと足回りを固めすぎるとGを受け止めきれずに外にはじき出されるような感じを受けます。しかも硬い足ではちょっとでも荒れた路面を走ると不快な振動に悩まされることになります。U6は足を劇的に固めているわけではないのに車体の沈み込みをいなしていくような感覚でコーナーをクリアできます。
下りのストレートからタイトコーナーに入るときの強いブレーキングでもクルマが振られることがありません。さまざまな操作を自然にこなしていきます。U6の駆動方式はFF。しかしその走りは4WDのプレミアムSUVにも引けを取らないものでした。
ダイナミックで優雅な走りを味わえるU6はまさにGT。残念ながら現段階で日本での発売は予定されていませんが、旅行などで台湾を訪れた際はぜひ乗ってみてほしいですね。
この記事はシリーズ「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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