F:3月11日は日本にとって大変不幸な日となりました。大地震が起きてその影響で大津波が発生し、多くの方が亡くなりました。そして更に深刻なことに原子力発電所が事故を起こしてしまいました。この大震災が起きた時に、ゴーンさんはどちらにいらっしゃいましたか。

ゴーン(以下、G):3月11日にどこで何をしていたか、ということですか。

F:その通りです。

G:その時、私はパリにいました。よく覚えています。私はルノーのエグゼクティブコミッティーの議長をやっているんです。パリにいましたね。

F:まず何を思いましたか。そして何をするべきだと考えましたか。

G:電話で連絡して状況把握に努めました。そして日産の従業員の安否を確認しました。シガ(志賀俊之COO=最高執行責任者)とか、サイカワ(西川廣人副社長)とか、その時日本にいた役員に責任を持って対処するよう指示を出しました。その日は確か金曜日でしたね。

F:そうです。金曜日です。

日産自動車 社長兼CEO カルロス・ゴーン氏(写真:陶山 勉)

G:実は翌週の月曜日にセミナーを予定していたのです。それは(ルノーとの)アライアンスセミナーというもので、日産のすべての役員がアムステルダムに集まってルノーの役員と一緒に会議をする予定だったんです。しかし地震があったので、会議そのものを中止にしました。
 日本に残って対応をしてほしいと。皆さんにはやるべきことがあるからと。
 つまり権限を委譲したんです。心配しなくてもいい。セミナーなんかはどうでもいいから、日本を優先してください。とにかく現場に行って従業員をサポートして、復旧、つまり危機を乗り越えるために全力でサポートして下さいと言ったんですね。

F:震災の直後はずいぶん誤報もあったのですが、とにかく日本は放射能で危ないという情報が世界中を駆け巡りました。特にフランスの政府は、フランス人は日本から速やかに退避するように伝えたそうですね。実際にフランス人だけでなく、多くの外国人が半ばパニックになりながら日本から逃げ出していきました。そうした状況の中で、ゴーンさんは逆に日本に戻ってきて、しかも原発に近いいわきの工場にも行って、従業員の応援をされました。なぜそうされたのですか。

CEOはいつも第一線にいなければならない

G:なぜそうしたか、ですって。オゥ!(ゆっくりと大きく首を横に振って。しかし決して視線は外さずに)
 なぜそのような質問を? 私はCEOです。この会社の、日産のCEOなんですよ。どうかそのことを忘れないで下さい。当然です。当然のことをしたまでです。私はフランスからの旅行者ではない。観光客でもない。私はこの会社の社長です。日産のCEOなんですよ。ですから、いつ日本に来られるか、一番速いルートはどれであるかをまず初めに考えました。いつ飛行機に乗って日本に行けるのかを最初に聞きました。
 しかし、空港は閉鎖されているらしい。今すぐには日本に行けない、震災直後はそのように言われました。エアーが確保されて実際にゴーサインが出たら、すぐに日本に向かって飛び立ちました。
 繰り返しますが、私は会社のCEOです。これは当然のことなんです。CEOはいつも第一線にいなければならないのです。

 従業員が非常に厳しい困難に直面している。だからその現場に行く。私は直ちに栃木工場に行きましたし、いわき工場にも行きました。この2つは我々の工場の中でも特に被害が大きかったところです。だから行くのです。当然じゃないですか。
 本社の建物やフランスに隠れているわけにはいきません。私はCEOです。この会社のCEOなんですよ。従業員が困難に直面しているんだから、私が第一線にいなくてはならない。それは私の義務です。当然です。私はそれを躊躇することはありません。当たり前のことなのです。