G:もう1つ大切なのが、彼らに対して“はっきりとした方向性を示す”ということです。これが重要です。そしてスタートしたら、もう自分は介入しない。ちゃんと方向性を示したわけですから、あとは彼らを信用して全てを任せる。そうすればモチベーションは必ず上がります。彼らには既にこうしてほしいと伝えてある。会社が彼らに対して何を求めているか十分に理解している。だから会社が権限を委譲するわけです。目的を実現するためにそうするのです。
 もちろんプロセスの途中で会議は何回もありますよ。目的との整合性、正しい方向に向かっているかどうかを定期的に確認しなければなりませんから。もし何か壁にぶち当たっている場合は、私たちがサポートするわけです。壁を乗り越えるために後押しします。
 しかし、あくまでも主役はマネジャーです。彼らが最後まで責任を持ってマネジメントするのです。だからGT-Rはミズノのクルマです。素晴らしいクルマができました。

GT-Rはミズノのクルマです。ゴーンのクルマじゃない

F:GT-Rは水野さんのクルマですか。ゴーンさんのクルマではないのですか。

G:ノー!違います。ミズノです。GT-Rはミズノのクルマです。私のではない。なぜならミズノが責任者だからです。もちろん彼が2、3の選択肢を持って意見を聞きにくることがあれば、私はその中から1つを選びます。ミズノが複数の方向を持ってきて、どちらがいいかと判断を求めてきたら、「私はこの方向がいい」と言うのは構わないんです。ミズノが決断を求めてきたら、私はそれに答えます。決断を下すのです。ただ、あくまでもミズノがマネジメントの責任者です。
 これは重要なポイントです。担当者に本当に誇りを持ってクルマ作りをさせるということ、モチベーションを持って仕事をさせるということです。そこにマイクロマネジメントがあってはならない。
 私はGT-Rがゴーンのクルマになることを望んでいません。GT-Rはミズノのクルマであるべきです。担当者が自己表現をできるようにするんです。モチベーションを引き上げるために極めて重要なことです。
 ただこれが、いつもうまくいくわけではありません。いまは完璧な図、理想的なケースの話をしています。
 プロジェクトを進めていけば、時にはいろいろな人間が介入したり、壁が出てきたり、罠に陥ったり、意見の相違があったりするものです。ですから、今申し上げたのは理想像です。人間のすることですから、全てが完璧という訳ではないのです。

(写真:陶山 勉)

 ともかく、方向性を明確に示して、決してプロジェクトマネジャーを暗闇の中に置き去りにしないこと。あるいは矛盾する要求を突きつけないこと。そして無理なタスクを押しつけないこと。これがマネジメントのカギです。方向性がはっきりしていて、担当者がそれを正確に把握できれば、あとは全てを任せるべきです。
 そうした上でコーチングをする、つまり支援をしていきます。彼らが、こういったサポートをしてほしいということがあれば、全力でサポートします。
 GT-Rは素晴らしいクルマに仕上がりました。日産リーフも、マーチもそうです。ミズノ、カドタ、コバヤシの3人。彼らは素晴らしい成功を収めました。