F:さすがにそうした状況ではビジネス書ではないですか(笑)。

G:もちろん違います。たとえ漂流しなくても、私は普段からビジネス書を読みません。嫌いなんです。ビジネス書は読みたくない。例えば歴史書とか、推理小説とか、あるいは何か発見の話とか、科学の本とか……。何か学べる本は読みますが、経営書は読みません。退屈ですから。

F:それは意外ですね。ビジネス書、経営書の類はご覧にならないのですか。いま日本ではピーター・ドラッカー氏の書籍が大変なブームになっていて、それこそ女子高生でも読んでいるのですが、ご興味はありませんか。

G:ドラッカー氏は素晴らしい人物だったと思います。いろいろ著作があることは存じ上げていますし、多くの経営者をサポートされた方なのだとも思いますが、私自身はその1人ではありません。

F:ゴーンさんに経営の師匠と呼べる人はおられますか?

G:1人に特定できないです。複数の人間から学びました。ですから「ゴーンは誰も見習わない」ということではないのです。私は1人ではなくて複数の人間から学ぶのです。私が本当に感動を覚える人は複数いますが、それぞれある一側面からなのです。例えば優れた技術をもった職人だったり、絵描きだったりとか。あるいは普通の作業員から学ぶこともあります。もちろん母親からも。私は多くの人に興味を持ちます。本当に何か特別なことをうまくやっている人から学びます。1人だけにフォーカスはしないですね。

F:ゴーンさんは宮本武蔵をご存知でしょうか。

G:はい。あまり詳しくはありませんが、有名な日本のサムライですね。

F:そうです。その武蔵が著した『五輪書』という兵法書があります。そこには「我以外皆我師」と書いてあるそうです。つまり“どんな人からも学ぶべき点はある、常に学ぶ姿勢を忘れてはいけない”という程の意味なのですが、それと同じですね。

G:違います。“どんな人からも”ではありません。残念ながら全ての人が学ぶべき点を持っているとは思いません。私には多くの師がいる、ということを申し上げたいと思います。ある特定の側面について、一人ひとりが師である、ということです。

広報星野嬢:ヤマグチさん。そろそろお時間です……。

F:や、もう45分。それでは最後にひとつだけ聞かせてください。ゴーンさんは、将来は何をなさるおつもりですか。

G:あなたは自分自身の将来についてご存じですか? 誰にも分かりませんよ(笑)。

F:質問を変えましょう。「日産パワー88」が完了する6年後も、ゴーンさんは日産のCEOなんですか。

引退したらもう仕事はしません

G:6年後ですか。まぁ確率は低いでしょうね。6年後でしょう。かなり可能性は低いです。
 どこかでやはり、ここらで辞めようじゃないか、という“引き際”があると思うんです。これが最後の中期計画です。私が出す計画としては、「日産パワー88」が最後になると思います。

F:もし日産を辞められたら、その後にほかの自動車メーカーに行く可能性はありますか。

(写真:陶山 勉)

G:ノーノー。それはありません。仕事はナシです。もう仕事はしません。

F:まだお若いのに、日産を最後に仕事から引退してしまうのですか。

G:ほかにもすることはたくさんあるじゃないですか(笑)。今のような仕事だけではなく、いろいろなことが。仕事はしますが、所謂企業ではないでしょうね。例えばNPOでもいいし、どこかの大学で教べんを執るのもいい。何でもあるじゃないですか。ただ、今回の「日産パワー88」がビジネスとしては最後の計画だと思っています。それが妥当なところだと思います。これは別にスクープじゃないですよ。

F:大変よく分かりました。ありがとうございました。あ、あ、あ、握手して下さい。

G:どうもどうも(笑)。