G:それは別に特別なことではないと思います。日本では既に国内にたくさんのクルマが走っています。さらに自動車メーカーもたくさんある。視点を他の国に移してみて下さい。特に新興国などに。生活が安定してくると、彼らが“いの一番”にほしがるのがクルマなんですよ。
 そして、もし就職できるのであれば、ぜひ自動車メーカーに入社したいと考えています。エンジニアでも作業員でもいい。誰もが自動車メーカーに入社したいと言うんです。それはインドや中国、あるいはブラジルやロシアでも同じです。クルマを所有することだけでなく、自動車メーカーに就職すること自体が、彼らにとってステータスシンボルであるのです。
 確かにご指摘の通り成熟市場の人は、従来よりもクルマに対する関心が薄くなっていると思います。しかし、それでもクルマは重要な道具です。自動車メーカーも企業として重要です。雇用をたくさん生みますし、何よりも従業員が誇りを持って仕事をしています。例えば日産なら日産の社員であることに強い誇りを持っています。それが新興国になると、さらに強い思いとなります。就職先の人気ランキングでは、新興国では自動車メーカーがトップレベルです。

F:新興国市場で最重要視しているのはどこですか。先日発表された中期経営計画である「日産パワー88」では、特に中国の市場に関して非常に野心的な数字を示されました。やはり中国を重要と見ているのですか。

G:そうですね。中国は世界最大の市場ですし、今後の展望も明るいと見ています。将来が有望な国で、しかも高い成長率が想定できる。さらにパートナーとして素晴らしい企業が揃っています。

F:日産はこれから中国でもたくさんのクルマを生産する予定ですよね。

G:はい。その通りです。

F:日本も原発が止まって大変ですが、中国でも急速な発展に電力供給が追いつかず、慢性的な電力不足に陥っていると聞いています。一説によると、発電所の実に50%が休止状態にあるとも……。中国で増産するに当たり、電力に関してどうお考えですか。電力供給が滞ると、自動車生産にとって致命的なダメージになりませんか。

G:現時点では中国に電力の問題はないと考えています。今中国ではインフラ整備の真っ最中です。現在は石油や石炭、あるいは水力により発電していますが、原発も懸命に建てている最中です。
 中国政府はエネルギーに対する意識が非常に高いんです。彼らは相当なリソースをかけて発電所を作っています。ですから私は電力供給に関して心配していません。彼らはちゃんと意識しています。発電に関して多額の投資もされています。既にかなりのリソースがあるのです。中国は原発だけではなく、多様化した発電所を造ろうとしています。そのために継続的な投資もされています。心配はしていません。

最近見た映画は何ですかって…

F:なるほど。中国の電力に関しては楽観視しておられるのですね。スミマセン。話は思い切り飛びますが、ちょっと個人的なお話を聞かせて下さい。映画は好きですか。一番最近ご覧になった映画を教えて下さい。

G:そうですね。『Revenge of the Electric Car』という電気自動車の映画です。

F:直訳すると「電気自動車の復讐」。うーん。聞いたことがないなぁ……。

G:ご存じないですか?これ、私が出ている映画です(笑)。4人のヒーローのうちの1人として描かれています。とてもよくできている、非常に楽しい映画です。自分が出ているフィルムですが、一番最近見た映画というとこれになります(笑)。

(写真:陶山 勉)

F:なるほど、ではせっかくですから宣伝しておきます。詳しくはこちらを。
 あの、因みに『007』シリーズの監督のサム・メンデスさんが、ゴーンさんに「日産からボンドカーを提供してください」と言ってきたら、何を出しますか。

G:GT-Rをベースにして、一部を改良します。よりポジティブなデザインにすれば、GT-Rは素敵なボンドカーになると思います。あれは最高のスパイ・カーですよ。

F:その時に敵役のクルマはどこになりますか?

G:ははは。やはり競合他社のクルマですね。

F:それはポルシェでしょうか(笑)。

G:競合他社のクルマならどこでもいいです(笑)。

F:無人島に流された時に1冊だけ本を持っていけるとしたら何を持っていきますか。

G:滞在期間によります(笑)。どれくらいの期間その島に滞在することを予定すればいいでしょう。

F:滞在ではなくドリフトです。漂流して無人島に流れ着くのです。ですから滞在期間は未定です。他の船がゴーンさんを見つけてくれるまで、3日間。1カ月。あるいは半年……。

G:誰かが見つけてくれるまで?オォ!(苦笑)。それなら楽しい本にします。何か楽しそうな本がいいですね。1人で孤立しているわけですよね。そうであれば、あまり人生のことなど考えたくない。漂流するなんて、ひどい生活であることは間違いないですから、まったく違うことを考えたい。分厚いスリラーか推理小説がいいかな。