ロードスターとは明らかに違う乗り心地

 まったく当たり前の話だが、まっすぐゆっくり走っている分にはロードスターと何も変わらない。音が違うの固さが違うのと、いっぱしの評論家ぶってゴタクを並べようとすれば出来なくも無いのだが、着座姿勢からハンドルの位置、ABCペダル(アクセル、ブレーキ、クラッチペダルのことですね。少し“ぶって”みました)の位置まで同じなのだから、違いを述べるのには些か無理がある。

 首都高に入ってワインディングを楽しんでみよう。雨だが。

アバルト124のコックピット周り。内装はロードスターとほぼ一緒だが、色使いはさすが。ドアノブの下にあるグリップにご注目。ロードスターにはこれが無い。
アバルト124のコックピット周り。内装はロードスターとほぼ一緒だが、色使いはさすが。ドアノブの下にあるグリップにご注目。ロードスターにはこれが無い。

 都心環状線の緩やかなワインディング。ロードスターとは明らかに違う乗り心地だ。ロードスターを「軽快」と表現するとしたら、こちらは「重厚」とでも言おうか。

 1.4リットルのスポーツカーに重厚もないものだが、このしっとりとした安定感は何だろう。諸元表を見てみると、その原因はすぐに判明した。モデルにも拠るが、124はロードスターより、ざっくり100キロも重いのである。

 無論エンジンパワーはそれを有り余って強力だから、ヨーイドンで競争をすれば、こちらのほうが明らかに速いクルマなのだが、速さの「質」が明確に違う。「重さに拠る良さ」というものが有るのだなぁ、と実感させられる程の違いがある。

 ロードスターとの足回りの違いは、「スポーティーにするために固めた」というよりは、「100キロの重量増に対応して固めた」と言った方が的確だと思う。

 骨格が同じなのでホイールベースは変わらないが、前後ともオーバーハングが拡大され、全長は15センチほど長くなっている、だが、それによる悪影響は感じられない。

 100キロ重く、15センチ長く、100万円高い。このあたりをどのように理解するか。どのような人がロードスターを買い、そしてどのような人がアバルト124を買うのだろう。

 この試乗の直後に、4代目NDロードスターの開発主査、山本修弘さんとお話しする機会が有った。価格差が100万円もあるとは言え、やはり一定のカニバルが生まれるのではあるまいか。「向こうがたくさん売れたりしたら、マツダはやはり困りますよね」、と私は下品な質問を投げかけた。

 すると山本さんは破顔一笑。「こういう質問はねぇ。フェルさんしかせんよねぇ」と言った後、「いや、それはないです。アバルトさんにもどんどん売れて欲しいです。どんどん売れて、街中をスポーツカーで一杯にして欲しいです。両方がどんどん増えて、あ、スポーツカーってのもアリかも…と思う人が一人でも増えてくれたら、僕ら本当に嬉しいです。先進国でこんなにスポーツカーが少ない国は日本だけですよ」と言った。

 そう。我々はもっとスポーツカーに乗らなきゃイカンのである。私も早々にスポーツカーを買い足すなり乗り換えるなりしなければイカンのである。

「アーキテクチャのベース」となったマツダのロードスター
「アーキテクチャのベース」となったマツダのロードスター

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