思わず「おぉ!」と声を上げるほどの異彩

 アバルト124スパイダー。

 クルマ好きの読者諸兄なら先刻ご承知のことと思うが、このクルマは全ての車両が日本で生産される国産のガイシャである。日本はもとより、イタリア本国で売られる車両も、その全てが日本で生産されている。

 フィアット製のエンジンが遠路はるばる貨物船でエンヤコラ運ばれてきて、広島にあるマツダの工場に陸揚げされる。そしてロードスターと同じ工場に運び込まれ、ロードスターと同じ生産ラインで、ロードスターに混じって組み立てられていくのである。

 マツダ本社工場のラインでは、マツダのロードスターと、フィアット124と、アバルトの124がゴッチャになって流れてくるのだ。

これが噂のアバルト124だ。
これが噂のアバルト124だ。

 アバルト124は、ロードスターの(向こう風に言うと、「MX-5の」ということになる)「アーキテクチャーをベースに」作られたクルマである。これはマツダと(当時の社名である)フィアットグループオートモービルズが共同でプレスリリースした資料にハッキリ記されている文言である。

 だがその事実は、アバルトのカタログには全く触れられておらず、マツダのマの字すら出てこない。もちろん日本で生産云々も一切出てこない。それを「不都合な真実」と取るか、はたまた「安心の日本製」と捉まえるかは購入者のメンタリティに拠ろう。

 ところでアーキテクチャーをベースに、なる曖昧な言い方はなんだろう。

 直訳すると「ロードスターの構造を基本に」。意訳すると「中身はロードスターなんスけど」、くらいになろうか。要するに、ロードスターにフィアットの高馬力エンジンをブチ込んで、足回りを固めただけのクルマでしょ……。ヒネクレ者の私は、試乗前にかような心構えでクルマを待っていた。

 寒い雨の中、ADフジノ氏が待ち合わせ時刻に大幅に遅刻したことにより、もともとひねくれている私の気持ちは、より一層やさぐれていくのだった。クルマも女性も第一印象が大事である。哀れアバルト124は、大きなディスアドバンテージと共に私に迎えられたのである。

 しかし、新宿駅西口地下ロータリーに現れた車両は、ロードスターとは似ても似つかぬ迫力のクルマだった。タクシー待ちの人達が、思わず「おぉ!」と声を上げるほどの異彩を放っていた。

 ともかくこのクルマ、思い切り目立つのである。ベースとなるロードスターは、どんな街にも自然に溶け込むデザインだが、アバルト124はどんな街に行っても目立ってしまう。なんだアレと指を指されるようなデザインのクルマである。

アバルト124スパイダーのフロント部分。小柄なボディながら、「睨み」が効き迫力十分である。
アバルト124スパイダーのフロント部分。小柄なボディながら、「睨み」が効き迫力十分である。

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