「クルマを分からない人に、ああだこうだと言われたくない」

「テストドライバーの長に、『口を出すな』って言われちゃったら…」

:今ウチはどんどん変わって来ています。エンジニアにも騙されない。自分で乗ってビシっと自分の言葉で評価する役員がどんどん増えてきているんです。開発する方としては、どんどんいい環境、やりやすい環境に変わって来ていると思います。

:やっぱり社長がね。章男社長が「いいクルマを作る」ということに集中しているので。章男社長は、別にレースが好きでやっている訳じゃないですから。

F:えぇ?章男社長と言えば、即ちレース好き、ということじゃないの?

:あ、それは明確に違います。章男社長は競技としてのレースが好きなわけじゃないんです。他の人と競って、1位とか2位とかになるという勝敗にこだわってレースに出ている訳では無いんですよ。

 それじゃなぜレースに出場するのか。それは少しでも“いいクルマ”を作りたいという思いが有るからです。いいクルマを作りたいという思いがあって、もっともっとクルマを知りたいという思いがあって。だからこそ危険が伴うレースにも出場する訳です。

 2010年に亡くなった成瀬さんという、今日フェルさんが助手席に乗った評価ドライバーの大大大先輩に当たる方が、副社長時代の章男社長に対して「クルマのことを分からない人に、ああだこうだと言われたくない」と言ったんです。

:「口を出すな」、とテストドライバーの長に言われてしまったものだから……。

F:ひょえー。将来の社長に向かって……。

:さすがに口を出すなとまでは言っていないと思いますけど……。

:いや、でもそうだよ。同じことだよ。成瀬さん、言われたくないとビシって言ったんだもの。

:広報的な公式見解としては、「分からない人に、ああだ、こうだと言われたくない」という事です。それならぜひ運転を勉強させてくださいと。そこで初めて、章男社長とウチの評価ドライバーのトップである成瀬さんとの関係が始まった訳です。

F:この前、貰った本にも書いてあったね。

:はい。そこから章男社長は、クルマの魅力とか、運転の魅力にのめり込んでいった訳ですね。やっぱりクルマってすごく楽しい。見ていても楽しいけど、やっぱり運転するとすごく楽しい。責任のある立場の人が、商品の最終決定をする立場にある人が、キチンとした運転ができて、クルマのこともよく分かっていて、正当に評価できるって、すごく大事じゃないですか。自動車メーカーとして。

F:なるほど。よく分かります。