86GRMNは、クラウンなどが作られるトヨタ元町工場内にある特別ラインで、ほぼ手作りで組み上げられる100台限定の特別モデルだ。エンジンの馬力こそ、ベース車両から1割アップと控えめのファインチューニングだが、ともかく足回りとボディ剛性が凄い。様々な強化パーツが取り付けられ、ねじれ剛性はノーマルと比較して1.8倍にまで向上している。一方でカーボンパーツを多用しているので重量は1キロたりとも増えていない。

 販売価格の648万円は、事情通から言わせれば、「あんなのタダみたいなもんだ」とのことである。実際にかかったカネは、アレも入れてコレも勘案すれば、軽く1500万円を超えてくるだろう。

 当然のことながら、限定の100台はアッという間に売り切れてしまい、追加で生産される予定も今のところは無い。マニアは絶対に手放さないから、今となっては、投機的な思惑で買った人から中古を買うしか入手する方法は無いのである。

 買うことも出来ないクルマのことを、なぜ今更シツコク追い回して書くのか。

 それはやはり、“章男社長チルドレン”である野々村さんが、メチャ面白いからなのである。

「ポロッと何かを言っちゃう役員も過去には…」

「トップがクルマ好きだと、クルマも本当に良くなっていく」

F:BMWの役員陣は皆運転が上手い。それどころか、上手くなくちゃそもそも役員にもなれない、という話はとても面白いですね。とてもBMWらしいというか。

 エンジニアとして優れていたり、MBAホルダーで華やかな経歴が有ったとしても、「そんなのウチじゃ通用しないよ」という姿勢が痛快です。トヨタも徐々にそうなっていくのでしょうか。何しろ章男社長がレーサーなのですから。

野々村さん(以下、野):BMWみたいになるかどうかは分かりません。ですがウチの章男社長が積極的にハンドルを握って、レース活動までしているから、クルマも本当に良くなって行くだろうなとは思います。章男さんは本当にクルマが好きだし、実際にガンガン乗るし、そうすればエンジニアリングも分かってくるから。技術者に騙されない。騙されなくなりますよね。

F:騙す?エンジニアがトップを?

:騙すというと語弊がありますが、「ここは新しい技術なので、こうこうこうなっていますから」と言い切っちゃうと、技術系じゃ無い人は「ああそうなの……」となることは有りますよね。

F:確かに。これはメーカー全般に言えることですね。

:社長だけでなく、偉い人は、試乗したら何か言わなくちゃ、という所も有るんです。

F:それも全世界のメーカーに言えることでしょうね。クルマに限らず。「専務、いかがでしたか?」と聞かれれば、何か気の利いたことを言わなければならないという強迫観念もあるだろうし。

:そうそう。そこでポロッと何かを言っちゃう役員も過去にはいたのだと思います。そうすると、聞いた方はやっぱり従わなきゃならなくなる訳で。

F:意見を聞いてしまったら、「オッサン、何も分かってへんのやな」、とは言えませんものね。「貴重なご意見をありがとうございます」とこう言うしか無い(笑)

広報有田(以下、有):ちょ、ちょっとフェルさん。変な方向に誘導しないでくださいよ!