「もうこのまま乗って逃げちまおうかな」

F:良かったですよ。本当に良かった。ゲートも開いているし、もうこのまま乗って逃げちまおうかな、なんて本気で思ったほどです。あれ?でも今日は自分のクルマで来てたよな。これで逃げたら、逆に俺のクルマを押さえられちゃうのか、なんて考えながら運転していて(笑)
ADフジノ:そんなことを考えているから滑るんですよ。もっと運転に集中して下さい。
野:テストドライバーの中でも同じように「乗って逃げようかと思った」と言ってくれた人がいました。試乗したら誰も降りて来ないクルマ、もう試乗車を盗んで逃げちゃおうかなんて思ってくれるクルマ。そういうクルマって、トヨタは長いこと作ってこなかったので。
F:新しいプリウスはとてもよく出来ているけど、さすがにここを20周しようとは思わないですものね。サーキット走行なら、5、6周もしたらお腹一杯という感じ。
野:そうでしょうね。3周ぐらいしたら、何となくクルマの挙動も掴めるから、もう分かりました、これで記事も書けます、みたいになるんです。掴めちゃうから、クルマの挙動が、特性が。
F:「最初の1週目はゆっくり走って下さい」、と言われたので、本当に街乗りレベルで流したのですが、その領域でも楽しかった。ここで車庫入れ的な動作をしても、まったく違和感なく、普通のクルマとして使える。そこが凄いですよね。普通に通勤でも使えそうな。まあ勇ましい羽とかが付いているから、近所の人はビックリしてしまうでしょうけど。
野:日常生活で普通に使いながら、サーキットでもガンガン走れますよ、というのがこのクルマのそもそものコンセプトです。フェルさんにはそこを感じ取ってもらえたのだと思います。
F:なるほど。でもサーキットと街乗りの両立って、本当に成り立ち得るのでしょうか。僕みたいなレベルのドライバーが、ひゃー速い速いと喜んでいるレベルなら良いのでしょうが、もっと上のレベルの人が、サーキット走行を十分に楽しめて、その上で街乗りも違和感なく使えるという。そんな高い次元での両立は有り得るのでしょうか。
「両方とも良い」ということはつまり、「両方ともソコソコに良い」ということになりませんか。結局はどっちつかず、ということになる恐れはないでしょうか。
野:今までもそのように両立を自称していたクルマはたくさん有りました。でも実際はそうじゃなかった。看板に偽りアリだった。確かにサーキットでは良いのだけれど、ガチガチに固めちゃっているから、とてもじゃないけど街乗りなんか出来ないようなクルマもたくさん有る。反対に、フラフラしちゃってサーキットではとても怖くて踏めないような自称両立というクルマも過去に何台も有った。

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