軽の商用車開発に当たり、燃費効率、開発効率、そして生産効率を考えれば、実績のあるN-BOXを流用するのが最も手っ取り早い。しかし、FFレイアウトであるN-BOXのプラットフォームを採用すれば、全長の制限から、軽バンでマストと思われていた「コンパネ平積み」を捨てなければならなくなる。

 「運転席の脚部をいじめて無理やり2、3枚でも押し込めるようにするか……」
 「そんな付け焼き刃で顧客が納得するだろうか……」。悩む開発陣。

 しかし顧客へのヒアリングを繰り返すうちに、実際の現場では、それほど平積みが行われていないことが見えてきた。いざという時は、助手席を折り畳んでコンパネを縦に積めばいいじゃないか。ホンダの出した解は、スッパリ「コンパネ平積み」を捨てることだった。

 FF化することによるもう一つの懸念は、駆動輪の荷重問題だ。
 重い荷物を積む機会の多い軽バンは、荷物を積めば積むほど駆動輪に荷重がかかる後輪駆動を採用するのが常識だった。

 N-BOXから派生したN-VANはFFレイアウト。荷室に重い荷物を積んだら、後輪に荷重がかかり、駆動輪である前輪から荷重に“抜け”が発生する恐れがある。荷物満載で、安心して坂道を上ることができるのだろうか。
 今回はその辺りを中心にお話をうかがおう。

N-VANの開発責任者、本田技術研究所の主任研究員、古舘茂さん
N-VANの開発責任者、本田技術研究所の主任研究員、古舘茂さん

販売現場の反応は?

F:N-VANは軽バン業界の常識を打ち破ったFFレイアウト。「コンパネ平積み」が調査の結果実際にはそれほど使われていないことは分かりましたが、荷物の件で最後にちょっと。販売の現場の反応はどうでしたか。販売店の営業担当者は困惑しなかったのでしょうか。

古舘さん(以下古):もちろん最初は困惑され、反発もありました。「はあ? コンパネが積めない? そんなんで売れるワケないだろ!」と。でも販売の現場で何が困るかって、彼らはお客様に何かを言われたときに、キチンと納得していただける答えが返せるかどうかが問題なんですね。だから、我々がヒアリングを重ねて、「縦積みでも実際には十分ニーズへの対応が可能で、お客さんも納得して下さいましたよ」という説明をしたら、売り場の方もなるほどそうかと納得してくれました。

F:へえ。意外とアッサリですね。何しろ掟破りですから、もっと反発を食らうのかと思っていました。

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