日本のマーケットが重要である理由
デルマス:私は38年間ミシュランで働いています。フランソワ・ミシュラン、エドゥアール・ミシュランと言った創業者一族とも一緒に仕事をして来ました。彼らから言われて、一番強く心に残っているのは、「あなたの給料どこから出ているのか?」という言葉です。
F:給料は会社から出ますよね。会社員なんだから。
デルマス:うん。最初は当然みんなそのように答える。でも彼らは「それは違うよ」と。会社からじゃなくて、「お客さんからだ」と。ははは。ナーンダと思っているでしょう。フェルディナントさん、すぐに表情に出るから分かり易いね(笑)
F:いえそんな……。
デルマス:「給料はお客さんから出ている」これはとてもすごい言葉。この言葉の根本的な意味が分かれば、今とは違う仕事のやりかたをしなければいけません。我々は何を開発しているのか。誰に向かって。どう使ってもらうために開発しているのか。エンジニアは、常にこれを念頭に置いておかなくてはいけません。
でも普通はすぐに忘れてしまいますよね。何が大事なことかを、みんなすぐに忘れてしまう。だから質問です。なぜ?どうして?「事実の尊重」は、ここから出てくるんですね。
F:最後にひとつ教えて下さい。失礼ながら日本に於けるミシュランのシェアはそれほど高いものではありません。国別の売り上げランキングで、日本は何位くらいになりますか?
デルマス:国別ですか。我々は、ふだんはあまりそういう見方をしないものですから。スケールを合わせるのが少し難しい。我々は製品別で見ているものですから。アメリカが一番であることは間違いありませんが、製品をまとめて見ると、日本は7、8番目くらいかな。確かな数字ではありませんが、感覚的にはそれくらいです。
F:売り上げの比率から見ても、日本はミシュランにとって最優先のマーケットではありません。一方でミシュランは、日本のマーケットをとても大切にしていると伺いました。これはどうしてですか。
デルマス:我々にとって日本は、マーケットラボラトリーです。日本人は新しい技術のことをよく理解して、そしてよく勉強します。だから重要な開発拠点を日本に持っています。
そして日本のOEMは、日本の市場だけではなく、世界中の市場を日本からコントロールしています。日本で物事を決めて、それが世界中に広がっていくでしょう。だから日本はとても大切。絶対に外せない。
F:ああ、日本で開発したクルマが世界中に……なるほど。

デルマス:ノン!クルマだけではありません!ヤマハも、コマツも、クボタもそう。クボタは今度フランスに工場を作りました。トラクターの工場。ヨーロッパのトラクターは大きいのは得意だけど、小型のはあまり得意ではない。クボタは小型のトラクターがとても優秀ですね。そこにミシュランのタイヤを履いてもらう。クボタとの関係は日本で作りました。
フランスでも履いてもらいます。日本を良く知らない人は、日本はコピー文化なんて言うけれども、とんでもない!日本人はとてもクリエイティブ。建設機械のコマツ。素晴らしい。世界一の会社ですよ。とてもクリエイティブ。すごい会社。いま私が一番注目しているのは中小型のトラック。
F:トントントントン日野の2トン(笑)。アレですか?
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