みなさまごきげんよう。
フェルディナント・ヤマグチでございます。
今回も明るく楽しくヨタ話から参りましょう。
まずは宣伝から。この度めでたくTarzanの連載が200回を突破致しました。
光陰矢の如し。Tarzanの連載もついに200回を超えました。
9年近くも書いている、フェル史上最長の連載です。これを記念して、11月25日に代官山でトーク・イベントを開催します。みなさま万障お繰り合わせの上ご参加下さいませ。(マスクはしていますが)生フェルをご覧いただける数少ないチャンスです(笑)。お申込みはこちらから。
元フォルクスワーゲン グループ ジャパン社長の庄司さんと飲みました。
電撃辞任以来、メディアには一切登場されませんでした。これが辞任後初めて公開される写真かも知れません。いやはや、相変わらず元気なお方です。辞めたタイミングが余りにも“絶妙”だったため、様々な憶測を呼びましたが、まあその辺りのことは言いっこなし、という事で。
久し振りの庄司さん。最近はかなりマジメに走っておられるとのこと。確かに身体は相当絞れています
トヨタの広報諸侯と、章男社長ロングインタビューのお疲れ様会。何しろ7週も続いたのですからね。当欄で一人の人物をフィーチャーした記事としては最長連載でしょう。「次なる一手」の話も出て、宴は大いに盛り上がりました。
いやー、よく飲みました。みんな少しでも小顔に写ろうと、ズルズル後ろに下がるんです。セコいぞ!(笑)
なんと!日産広報だった(過去形)若井未来嬢が電撃結婚されました!おめでとうございます。この勝ち誇った顔をご覧ください。
ご主人はトヨタの源流である某社にご勤務ということで、彼女もとっととアイシン精機に転職なさいました。同社の上司の方まで「今後とも未来をヨロシク」と挨拶に来て下さいました。一度工場見学に行かせて下さい。自動車メーカーだけでなく、素材や部品メーカーの取材も積極的に行いたいです。
ゴーン氏の三菱自動車会長就任以上に日産に激震が走った未来嬢の電撃結婚。おめでとうございます。本日をもちまして、「若井未来さんの未来を考える会」は解散致します。
そうそう。未来嬢とはWECが開催された富士スピードウェイで会ったのです。レース結果は前号でADフジノ氏が速報を入れていますが、いや、最後まで目が離せない素晴らしいレースでした。やっぱりサーキットは迫力が違います。トヨタは地元での勝利を勝ち取りました。アウディは本当に惜しかった。
最後のピットインでタイヤを換えたアウディと、給油だけして換えなかったトヨタで命運が別れました。トヨタもアウディもポルシェも、WECのタイヤはみんなミシュランです。
フォルクスワーゲンのOBの方との飲みが続きます。元フォルクスワーゲン グループ ジャパン会長の梅野さんと。梅野さんとは毎年スキーをご一緒させていただいております。来季の計画を練りつつ、美味しいお酒を頂きました。
元フォルクスワーゲン グループ ジャパン会長の梅野さんと。お酒強いです。同じペースで飲むとヘロヘロになります。
以前お伝えした紳士服のコナカが展開する、新形態のオーダースーツ専門店DIFFERENCE。オーダーしていたスーツが仕上がったので取りに行きました。
馬子にも衣装、というところでしょうか。私は体型が特殊なので、吊るしだと苦労するんです。予想以上に素晴らしい出来栄えです。もう少し寒くなったら、ここでコートも作ろうと思います。
DIFFERENCE青山にて。少しは堅気に見えるでしょうか。
さてさて、長いヨタを飛ばしてメートルが上がった所で本編へと参りましょう。ミシュラン副社長ベルナール・デルマス氏インタビューの続編です。
「エコタイヤは、発売当初は全く売れなかった」
(前回から読む)
デルマス氏(以下、デルマス):ミシュランは伝統的にR&Dをとても大切にする会社です。もちろんタイヤメーカーであれば、どこも研究開発はするのですけれども、ミシュランは特に力を入れている。あまり他社と比べることは好みませんが、売上高に対する研究開発費の比率も我々は高い。これはミシュランのDNAです。
研究そのものは、目先のビジネスとは直接関係の無いところで行います。うんと先の将来、マーケットはタイヤに対して何を望むのか。それは誰も分かりません。だから我々は新しいコンセプト、今まで誰も考えつかなかったような、また誰も出来なかったような製品を出していきたい。これがミシュランらしいやり方です。
F:ミシュランはマーケットインよりも、プロダクトアウト型の企業であるということですか。
デルマス:その通り!ミシュランはプロダクトアウトが得意です。歴史的に見てもそうです。例えば今は一般的になったラジアルタイヤ、これはミシュランが最初に製品化しました。とても長持ちするし、乗り心地も良くなる。バイアスタイヤと比べると、ラジアルは寿命が2倍も3倍も長い。
F:3倍も!それじゃバイアスを売っていたほうが儲かったんですね、どんどん減るから
デルマス:考えてみてください。1950年代、世の中はバイアスタイヤだけだったんですよ。ヨーロッパも、アメリカも、もちろん日本も。どの市場もバイアスしかなかった。そこに突然ラジアルがやってきた。バイアスより2倍、3倍長くもつというタイヤが突然に。
消費量は一気に減りますね。そう。フェルディナントさんの言う通り、儲かるのはバイアスの方。数が出ますから。でもそれでお客様は満足しますか。しませんね。ミシュランはそういう会社。
F:ははぁ。
デルマス:「グリーンタイヤ」もそうです。今でこそメジャーになった、転がり抵抗の少ない、燃費の良くなるエコタイヤです。90年代の初めですね。このコンセプトもミシュランが最初です。発売当初、OEM(自動車メーカーのこと。クルマ業界の人はこう呼ぶ。電機業界とは大分ニュアンスが異なる)はすごく興味を持ってくれたのですが、一般の消費者は誰も理解してくれなかった。
F:燃費が良くなると言ったら、一般消費者は喜んで飛びつきそうですが。
「新しいものは、お客様の理解を得るのに時間がかかる」
ミシュランは、先進的な製品を他に先駆けて開発してきた。
デルマス:今はそうですよ。今はそう。でも当時はダメでしたね。92年だったかな。世の中に出すのが早過ぎたんです。グリーンタイヤも、明日見て頂くラドゥーのR&D施設で開発されました。技術としては天然由来のシリカ(二酸化ケイ素)をゴムの中にたくさん入れます。
F:シリカ。SiO2ですね。耐摩耗性が上がって減りにくい、ということですか。
デルマス:シリカはゴムの分子結合を強める作用があります。分子の動きが抑制されるから、それだけ熱が出にくくなる。熱が出るということは、イコールでエネルギーロスに繋がります。グリーンタイヤは、エネルギーを動力として効率よく路面に伝えることが出来るタイヤ、ということです。
もちろん燃費が良くなる要素はシリカだけではありませんよ。構造とかいろいろな事があるのだけれど、シリカの影響はとても大きい。グリーンタイヤは92年に乗用車向けを、その後にトラック向けを出したのですが、何れも市場からの反応は良くありませんでした。早過ぎたんですね。レコグニション(人々の認識)を得られなかった。その頃、ちょうど僕はセールスを行っていたのですが、出すのが早過ぎたなというのが正直な所です。
F:優れた商品でも、市場からの理解が得られるとは限らない、と。
デルマス:製品の売れ行きには時代の背景もあります。そのころはまだトラック業界全体に余裕が有ったんです。オイルも燃料も安かった。運賃も比較的安定していた。だから業界全体が、あまり“燃費”ということに重きを置いていなかったのです。
F:今のトラック業界は相当厳しいですからね。過当競争で運賃はダダ下がりです。福岡から大阪へ行くのに、帰りは高速を使うなと言われてしまうらしいです。先日、元トラックの運転手だったというタクシードライバーに聞きました。
デルマス:そう。だから今はよく売れますよ。燃費が運送会社の収益に大きく影響するようになりましたから。ミシュランは新しいコンセプトの製品を出します。新しいものは、お客様の理解を得るのに時間がかかる。でも、それは仕方がないことです。本当に良ければ、本当に必要な製品であれば、やがては理解される。そういう戦略です。
F:すると利益が出るまでには結構な時間がかかってしまいますね。
「最初に採用してくれたのは、三菱自動車だった」
「ラドゥーには3000人の研究員がいます。全世界にいる6600人の研究員の内、約半数がラドゥーに居るのです」
デルマス:もちろんそれだけではありません。新しいコンセプトだけではなく、ラドゥーではもっとマーケットの要求をよく理解して、またOEMや一般の消費者は何を望んでいるのかをキチンと調べて勉強して…ということも活発にやっています。乗用車やトラックだけでなく、二輪、飛行機、建設機器、全てを開発しています。
だからラドゥーには3000人の研究員がいます。ミシュランの研究員はワールドワイドで6600人。全世界の研究員の内、約半数がラドゥーに居るのです。ミシュランの研究所が日本にも有ることはご存じですよね。日本の道路と市場に合ったタイヤは、やはり日本で研究しなければいけませんから。そしてラドゥーの研究スタッフは、日本のスタッフと緊密に連絡を取り合っています。
F:ラドゥーには日本人の研究員も居るのですか?
デルマス:それほど多くありませんが、日本人も居ます。大学を卒業して、しばらく日本で働いて、何年かフランスでも働く。アメリカに行くことも有ります。そうすると言語だけではなく、自分の経験値が上がる。知識が上がる。またネットワークも出来る。そういうことをミシュランは積極的にやっています。
ミシュランにとって、日本はとても大事な国です。日本はミシュランが最初に行ったアジアの国です。一番初めは東京モノレール。車両は日立さんが作ったものです。そう、日立製作所。重い車両だから、どうしてもラジアルタイヤが必要だった。1964年は、まだ日本の会社にラジアルは無かったんですね。それで我々が呼ばれました。
F:なるほど。日立の方から声がかかったんですね。
デルマス:そう。日立さんから。それからOEMですね。日本のOEMが海外に輸出する時、ミシュランのラジアルタイヤを履かせて輸出したいと。ヨーロッパとアメリカは、既にラジアルの時代になっていましたから。
F:そもそも向こうの人は、ブリヂストンとかヨコハマとか、あまり聞いたことが無いでしょうし、当時は。
デルマス:そう、それもある。日本のタイヤメーカー?あまり聞いたことが無い。でもミシュランなら聞いたことくらいはある(笑)
そのころ既にミシュランは、各市場に合わせたラジアルタイヤを作っていましたから、アメリカの道に合う物、ヨーロッパの道に合う物、と。日本のOEMで最初にミシュランを採用して下さったのは……私の記憶では、確か三菱だったですね。三菱自動車。あそこが最初に輸出向けとして採用してくれた。ミラージュですね。
F:意外です。トヨタや日産ではないんですね。
デルマス:うん。三菱さんでしたね。輸出用としてね。
東京モノレールの採用から始まった日本に於けるミシュランのビジネス。乗用車として最初に採用してくれた自動車メーカーは、トヨタでも日産でもなく三菱自動車だった。今は昔。あの会社には、かつてそうした先進性が有ったのだ。
ゴーン氏の会長就任で、腐り切った現在の体質が少しは改善されるのだろうか。
「特に耐久性に関しては、今でも天然ゴムのほうが優れています」
レーシングタイヤにおけるミシュランの存在感は大きい。
F:最新のタイヤでも、やはりラバーの部分は天然のゴムを使うのですか。
デルマス:もちろん使います。同じタイヤの中でも、その構造体の場所によって天然と合成を使い分けますが、タイヤの原料は、今でも天然ゴムを多く使っています。
F:全て合成ゴムというタイヤは作れないのですか。
デルマス:作れますよ。もちろん作れます。ですが製品としてそれが優れているかどうかはまた別の話です。どうしてそういう質問をするのですか。質問の意図は何ですか?
F:これだけ科学が発達しているのに、今でも天然ゴムを使うのが不思議だからです。全て合成にしたほうが、経済的にも、また科学的にも合理性が有るのではないのかな、と思うからです。
デルマス:商用タイヤを作るに当たっては、特に耐久性に関しては、今でも天然ゴムのほうが優れています。例えばそうですね、本当に真っすぐの舗装道路を、ずっと同じ速度で転がすだけのタイヤだったら、化学合成ゴムでも良いでしょう。
ですが現実的には、そんな道だけを走ることなど有り得ません。ダンプタイヤのように、アスファルトが敷いていないゴツゴツの道を走るタイヤは、やはり天然ゴムの比率を上げてやらないと持たないのです。
F:なるほど。これもまた意外です。天然モノが良いのは、魚だけじゃないんですね(笑)。F1に使うようなレーシングタイヤはどうでしょう。
デルマス:詳しくは言えませんが、ある部分には入っていますね。F1のタイヤにも。実は天然ゴムに似ているようなゴムは、合成でも出来るんです。基本的には。
でもそれにはとてもコストがかかります。天然ゴムは市況により調達コストが大きく変動します。2008年以降は値段が凄く下がりましたが、2001年から7年まではものすごく上がりました。何倍にも跳ね上がりました。それがリーマンショックで大暴落したのです。天然ゴムの価格が、2007年のままで止まってしまっていたら、全て化学合成にしたほうがコスト的には合うかも知れません。
F:なるほど。
デルマス:あとひとつ大事なこと。ゴムの木を育てて生計を立てている人がたくさん居るということです。アフリカの国々、インドネシア、ベトナム、カンボジアといった東南アジアの国々……ゴムの木で生きている人がたくさんいる。そういう人々の事も考えなければいけません。
化学合成が安いからと言って、経済合理性だけで決めて良いものか。それはミシュランのやることではありません。
ミシュラン100年の計として、経済合理性だけでは決められない。
新しい研究開発施設を見学するためにやって来たのですが、何か凄い話になって来ました。
来週は施設の写真もご紹介。お楽しみに!
トヨタ・スズキ提携に独禁法の壁
読者のみなさん、こんにちは。編集担当のY田です。
10月12日に発表されたトヨタ自動車と鈴木の業務提携。突然の発表に、驚かれた方も多かったのではないでしょうか。
ただ、豊田章男社長と鈴木修会長がそろって「これからゆっくり考えます」との言葉を繰り返したように、業務提携の中身はまだ白紙に近いようです。日本の自動車メーカーの顔ともいうべき2人がそろって壇上に並び、これから手を携えて進むという決意を早い段階でアピールすることに、最大の狙いがあったのかもしれません。
提携に向けた協議開始という段階での、異例の会見だった(写真:竹井 俊晴)
業務提携に踏み切った背景には、加熱する技術開発競争への対応、クルマ同士がつながる時代へ向けての車両台数確保のための布石――といった狙いがうかがえます。実際、欧米メーカーはEVシフトを鮮明にしています。独自動車メーカーが、共同で自動運転用の地図サービスを検討しているのは、接続台数が地図の精度に直結するからです。
なお、トヨタによるスズキへの出資の可能性については、どうなのでしょうか? 当日の会見で、記者からの質問に対し鈴木修会長が、「(豊田章男)社長と話をしたのが先週ですから、せっかちな質問だと思います」と切り返す場面もありましたが、両者の思惑とは別に、資本提携には大きなハードルが一つあります。独占禁止法です。
2015年の国内軽自動車の販売シェアは、トヨタの子会社のダイハツ工業が32%で1位、スズキが30%で2位。合計で6割を超えます。これだけのシェアとなりますと、公取委の審査は慎重になります。
日経ビジネス10月24日号では、「つながるクルマ、EVへの危機感 トヨタがスズキと提携交渉」と題して、両社が業務提携に至った背景を、クルマを巡る世界の動きを踏まえて分析しました。ご興味のある方は、ぜひこちらもご覧ください(日経ビジネスオンラインの無料会員の方は、無料ポイントを使ってお読みいただけます)。
この記事はシリーズ「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?