走りながら刈り取りをして、脱穀も

 コンバインが走りながら刈り取りをし、さらに脱穀を行うプロセスを動画でご覧いただこう。素人がスマホで撮影した拙いもので申し訳ないが、動きのイメージはつかめると思う。時速7.2キロの迫力を堪能されたし。

コンバインの時速7.2キロはこんなに“速い”のだ。田中富郎君をして「ウチの機械の3倍は速い……マジで……」と唸らせた最新鋭機である。

 そうそう。忘れてならないのは、このコンバインには、圃場ごとの水分含有量とタンパク質含有量を測定する食味センサが組み込まれていることだ。これは刈り取った籾に光を照射して、透過した光の近赤外域の波長ごとの強さを測定し、水分とタンパク質の含有率を算出するものだ。このデータをリアルタイムで無線LANに乗せて転送し、コメの質を管理することが出きるのだ。

 実際に画面を見せてもらったが、同じ圃場でも場所によりコメの質は大きく異なっている。肥料が均一に撒かれていないためにこの差が生じるのだが、土地の“癖”のようなものもある。このデータは、翌年施肥する際の大きな参考となる。今まではカンと経験に頼っていた部分に、クボタは科学のメスを入れようとしているのだ。農業もサイエンスの時代である。

転送されたデータを見るクボタ本社の齋藤さん。自費で農業専門誌を購読する農業オタクのお嬢さん。仙台空港で被災し、津波に押し流されて九死に一生を得、5日間かかって徒歩で帰宅した文字通りのサバイバーである。

 かように科学とエンジニアリングの結晶であるコンバインだが、この機械は、年に1回しか使われない、鯉のぼりのような特殊な存在である。しかも使われるシーンは、タイミングが全ての一発勝負。適期を逃せば次はない。結婚適齢期は逃しても、自分の努力と運次第で挽回することも可能だが(挽回できないケースも多くあるが)、コメの適期は絶対に外せない。コンバインの故障は、ヘタをすれば農家の破綻につながるのだ。つまり、コンバインは、農家の生活がかかった、「絶対に故障が許されない」厳しい機械なのである。

 無論、農家自身のメインテナンスや、販売店のバックアップ体制も重要だ。しかし元の機械の信頼性が高くなければ、話にもならない。壊れれば「ゴメン」で済むスマホとは大違いなのである。

こんなに美しく、しかもスピーディーに刈れるのだ。

 10月1日に農水省から発表されたばかりの農林水産統計によると、我が国の農業就業人数は概数値で181万6千人。この1年間で10万人以上も減少している。驚くべきはその平均年齢。昨年の2月段階で66.8歳である。実際現在55歳の田中富郎は、地元美瑛町では「若い衆」扱いだ。

 就業人数は減る。高齢化は進む。後継するべき人間は家を継がずに街に出る。農業の機械化、IT化は、もはや待ったなしの状況である。

 「いろんな乗り物に乗りたい」と面白がって試乗した田植え機とコンバインだが、農業のことを調べてみると、愕然とすることが多い。

 我々はこれからどうしたら良いのだろう。美味しく安全な国産のコメを、いつまでも食べ続けることは出来るのだろうか。ガラにもなく(去年田中農園で収穫されたコメでできた)オニギリを食べながら悩んでみたりしたのだった。

今回取材のご協力いただいたクボタの面々。左からクボタの齋藤女史、フェル。北海道クボタの星野さん同じく安房さん。お世話になりました!

 次週もクルマでない乗り物の話が続きます。お楽しみに!