戦車のような“その場回転”は出来ない
落水は既に富郎君が絶妙のタイミングで済ませてくれている。それではいよいよ刈り取り作業に入ろう。運転席に乗り込む。運転席は「コックピット」と呼ぶに相応しく、多くの計器類とスイッチに囲まれている。

運転は全て手で行い、フットペダルは無い。ジョイスティックを最大限に倒しても、戦車のような“その場回転”は出来ない。最高時速7.2kmは、数字で見るとそれほど俊足に思えないが、圃場の中ではメチャ速く感じる。

稲刈りは一番外側から反時計回りで行う。運転席が右側に着いているので、こうすると常に稲のラインの端を見て、ステアリングを微調整しながら走ることが出きる。刈り始めのアライメントがなかなか難しい。私はモタモタと微調整を繰り返すのだが、安房さん(イケメン)はさすがプロ。何度やっても一発でバシッっと決めていた。

何往復かして、刈り取って脱穀された籾でグレンタンクが一杯になると、アラームが鳴り、刈取りユニットが自動停止する。ここで籾をトラックに移し替える作業に入る。コンバインからは、生コン打ち出し車のようなパイプが生えている。これを「アンローダ」という。先端には監視カメラと夜間作業用のライトが取り付けられている。



トラクターの前方にあるカッターで稲を刈り取ると、チェーンベルトに乗せられた稲は、90度角度を変えて、車両の右側にある脱穀機に運ばれていく。このなかで籾だけが選別されてタンクに移し替えられ、藁の部分は粉砕されて圃場に撒かれていく。大型機のER6120は、脱穀機の回転部分が大口径で、しかも長いので、作物の滞留時間が長い。それだけ脱粒を効率よく行うことが出来る。要するに“歩留まり”が良い。コンバインの走行速度をムリヤリ上げても、肝心の脱穀が着いてこなければ話にならない。コンバインの速度は、この脱穀部の性能次第なのである。

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