外に出さなかったことをどんどん出していく

F:これから変えていくことを教えて下さい。

:今までは外に出さなかったこと、どんどん出していきます。例えばエンジンの適合なんかも、外部に技術を持った会社がたくさんありますので、積極的に活用していく。設備が足りなかったら、外の設備を借りてきます。人を借りる、設備を借りる。そして工数マネジメントをちゃんとやる。もちろん内部のプロセスを変えたり、人材の教育をしたりしながら効率よく仕事を進める事は併せてやっていきますが、かなりの部分、外注を増やしました。今までは(社内で)「何とかしろ」と言っていた事を。

F:今までは全部自分たちでやろうという雰囲気だったのですか。自前主義?

:昔はそうでした。要するに外にお金を出すのはもったいない、という部分もあって。そこが大きく変わりました。我々の商品計画を実現するために必要な工数はこれだと。その工数を、足りない分をどうするかというところから、じゃあ、自分たちでできないんだったら頼むしかないね、と。

F:今まではそれを。

:正直な話、何とかしろ、みたいなところもありました。例えば先行研究を少し削って、研究の人を開発に回したり、研究部を廃止にしたりしたこともあったんです。クルマの開発は、これからどんどん難しくなって行きます。様々な新技術に対して、我々のような規模の会社で、全て自前で開発と調達を行うのは難しい。そこはアライアンスの力で共同開発をする。

 将来に向けての新技術は一緒にやって、それをどう商品にアプライするかは自分たちでやる。自動運転やコミュニケーションなどの基幹技術は一緒に開発して、それをどう商品に盛り込むか。インテグレーションは自分たちのそれぞれのブランドでやっていく。そうすれば、マンパワーは3分の1に減らせる。日産とは、今いろいろな面で協議をしています。そして一部ではもう始まっています。

F:なるほど。大きな方向として、三菱自動車は今どこに向かっているのですか。EVの会社になっていくのか。PHEVに特化するのか。あるいはガソリンもディーゼルもEVも、とフルで揃えて総合力で勝負するのか。三菱自動車のブランドって何?と聞かれたらどうお答えになりますか?

:ひとつはSUVです。四輪の制御も含めたSUVが我々の1つの柱となる。

F:なるほど。三菱自動車はジープのライセンス以来、四駆のイメージが非常に強いですから、腑に落ちますね。

:もうひとつは電動化です。今回のPHEVはとてもうまく行ったので、PHEVをさらに進化させます。

F:今よりももっと良くするのですか。アウトランダーは今でも十分に良いと思いますが。

:バッテリー会社とも共同で開発して、エネルギー密度を上げていきます。モーターの駆動と、そこに四輪の動きを最適化させるマネジメントも、もっともっと進化させます。それをSUVでどう生かしていくか。SUVの人気は高まる一方です。でも、あんな大きくて重いクルマは、コンベンショナルな内燃機関では、燃費問題、排出ガス問題に対応できなくなってくる。だから電動化です。我々はそこにどういうソリューションを準備するのか。

F:なるほどなるほど。電動化と四駆の制御。両方とも三菱自動車が得意とするところですものね。何となく将来像が見えてきました。なるほど。

:あの事件以降、エンジニアの元気がなくなりました。退職者もだいぶ出ました。

F:やはり辞めた人も出た。

:前のリコール問題のときにも同じことがありました。「私は三菱自動車にいたいんですけど、親戚、嫁さんの親戚が辞めろと言うんです」とか、そんな話です。

F:きつい……。

:いろいろなプレッシャーをエンジニアが受けていたというのは事実です。私の部下も、そう言って辞めて、違う会社に移っていった人も何人もいます。だからウチは、40歳前後の働き盛りの年代がポコッと抜けているんですよ。

F:辛い……。

:だからお客様にはもちろんですが、社員にも見せなきゃいけない。エンジニアも見せなきゃいけないんです。それが「Performance Revolution」活動です。我々はPRev(ピーレブ)と呼んでいます。自ら変えていくんだと。あらゆることを変えていくんだと。

F:なるほど。

:岡崎の田舎に引っ込んでいたのもいけなかった。開発はあそこで固まって外になかなか出ようとしなかった。それも変えていきます。「どんどん外へ行きましょう」「ベンチマークしましょう」「いろいろなところを見ていきましょう」といった活動を、今、積極的にやっています。どんどん進めています。

F:ありがとうございます。お話をうかがって、今度こそ、もしかしたら本当に変わるのかも……と思えてきました。最後に読者のみなさんに何かメッセージをお願いします。いろいろ厳しいコメントが入るかも知れませんが、何しろクルマ好きが多く読んで下さるページですから。ぜひ。

:今、我々がやっているクルマ造りを体験して頂きたいです。ぜひ三菱自動車のディーラーに来て、アウトランダーPHEVに1回でも乗っていただきたい。我々は真摯にクルマをつくっています。地球環境を考え、環境問題に真面目に取り組んで、ああいう形で商品にして、世の中に出させていただいています。それを一度体感していただきたいです。

F:アウトランダーPHEVを試乗すれば、三菱自動車の“今”が分かる、という事ですね。長時間ありがとうござました。

一同:ありがとうございました。


 ということで鳥居さんのロングインタビューは終了した。

 読者諸兄はどのような印象を持たれただろうか。他の会社のインタビューとは明らかに違う雰囲気の中、私としては相当シツコク食い下がり、また鳥居さんは、その一つひとつに、実に丁寧に回答して下さった。

 前号のコメント欄は一方的に非難で埋め尽くされた感があるが、いい印象を持たれた方の書き込みもお待ちしています。サプライヤーや販売店、またユーザー等関係者の方からご意見も大歓迎。日頃の鬱憤をぶち撒けるだけでなく、建設的な意見の交換ができれば嬉しく思います。

 来週はクルマから離れて、面白いリポートをお届けします。お楽しみに!(ああ、このセリフを久しぶりに言えた……)

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