ランエボはなぜやめたのか?

F:ところでランエボ(ランサーエボリューション)はどうして止めてしまったのですか?マニアック過ぎてビジネスとして成り立たなくなったのですか?

三菱自動車広報:ビジネスとしては成り立っていました。ですが全体的なボリュームがどうしても小さ過ぎるので。最終的なところだと、北米で一番売れていました。ファイナルエディションは、日本で1000台、アメリカで1600台だったかな。あとはそうですね、環境面とか安全面とか、いろいろな面で見直しが必要な時期にもなっていましたので。

:(ランエボを開発していた)2人のインタビューは面白いかもしれないね。そういえば前回の株主総会で、益子(修)社長がパジェロとランエボの話をちらっとしたんですよ。そうしたら、三菱自動車はパジェロとランエボをやるのか、みたいな話がワッと広がってしまって……。

F:やるんですか?パジェロのフルモデルチェンジとランエボの復活。

:株主総会での話は、少し変な形で伝わってしまって……益子社長は、三菱自動車がキチンとV字回復を果たして、市場の中でそれなりのポジションを日産とのアライアンスの中で再構築できた後にやりたいよね……という表現で言ったんです。

三菱自動車広報:ひとつの夢としてお伝えしたかったのが、ちょっと違う形で盛り上がってしまって。

F:パジェロとランエボを出して、それを三菱自動車復活の起爆剤とする、という話ではないんですね。

:違います。

F:三菱自動車を良くするために出すのでなく、良くなってから出すと。

:はい。それにしてもあの反応には驚きました。反応があまりにも大きくて、我々も大いに勇気づけられました。

F:熱烈なファンがいますからね。ランエボ、パジェロは。信者がいるから。

:我々の社員の中にも、いつかはランエボをやりたい、いつかパジェロを出したいという思いを持った人間がたくさんいます。また日産から来てマーケティングを見ている人も、ランエボとかパジェロの、いわゆる“三菱のブランド”を、何とか大事にしたいね、生かして行こうよと言って下さっている人がたくさんいるんです。

F:日産の話が出たので、同社とのアライアンスについていかがいます。日産の持株比率は34%......でしたっけ?過半数ではないけど、3分の1超だから、株主総会における拒否権はある。ルノーと日産のアライアンスに組み込まれてからどんな感じですか。ざっくりとした印象をお願いします。

:三菱自動車の企業文化、企業体質を変えていく部分と、ルノー・日産アライアンスの一員として貢献できるように。かつ三菱自動車のブランドをどう守っていくか、ということを並行してやっています。日産からは人を大勢派遣していただいています。日産も苦労されたんですよね。ゴーンさんが来た頃には。

F:いわゆるゴーンショック。コストカッターの異名を取り、すさまじい系列切りが始まりました。

:その時代に日産をつくりかえた人たちの意見もうかがいながら、今、改善に取り組んでいます。

F:日産はこうやってきたんだから、三菱も同じようにこうしなさい、と。そういうことは言ってこないんですか。

:そういう部分もあります。例えば開発でプラットフォームを一緒に開発したりする部分ですね。プロセスを一緒にしたり、スペックを一緒にしたりというのはこれからどんどんやっていきます。ただし、企業文化をつくっていく中の活動は、三菱自動車に合ったやり方でやると。決して押し付けるような形ではないですね。日産からは副社長として、山下(光彦)さんに来ていただきました。山下さんは日産で技術のトップだった、やはり経験が豊富な方なので。三菱自動車だ、日産だ、という枠だけでなく、自動車業界全体のレベルアップを図ろうとされています。何しろ自動車技術会の元トップですから。

F:山下副社長と鳥居さんで、技術的なやりとりはあるのですか。

:めっちゃあります。山下さんは私の直属の上司です(笑)。

F:どんな印象の方ですか。

:非常に話しやすい方で、ジェントルマンです。

F:資本が入り、人が送り込まれ、日産は三菱自動車にとって進駐軍ではないのですか。

:そんなこと全くないです。山下さんは、ふた言目には、「改革は自らのパワーで、自分たちの力でやれ」と言います。「power comes from inside」ですね。日産にゴーンさんが来た時もそうでしたが、進駐軍として乗り込んで来て、「あれやれこれやれ」じゃなくて、問題の本質は何ですかと。それを改善するためにはどうするんですか、という進め方をしていきます。特に山下さんは、そういうプロセスを非常に大事にする人です。

F:山下さんはプロセスを大事にする人。なるほど。

:組織改革も行いました。我々開発本部で言うと、従来は1つだったのを4つの本部に分けて、山下さんの下に我々4人の本部長がいて、4階層が2階層になりました。

F:最近、業績の数字もいいですものね。株価も絶好調。既にボトムアウトして、V字回復の基調に入ったと言っても良い段階になりました。具体的には、どこで何がそんなに売れているのですか?

:今はやっぱりASEAN(東南アジア)が販売の中心ですね。

F:海外が良い。

三菱自動車広報:当社の海外比率は9割です。トライトンとかパジェロスポーツとか、あの辺が稼ぎ頭になります。

F:9割が海外!それじゃもう日本国内は売れなくたっていいや、燃費だ何だと細かいことを言うな、という気持ちになりませんか。

:それはないですよ。三菱自動車は日本の会社なのですから、日本でちゃんと売れなければ寂しいです。

三菱自動車広報:日本で事業活動できないと、人材も集まらないですし。

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