「赤字でも良いから造りなさい…はあり得ない」

「給料は月に100万円なのに、家族が300万円もかかる生活をしていたとして、それを良いなんて言うお父さんがいますか?」

:かつてのトヨタはどうやっていたか。グローバルの生産台数が1000万台近くの規模になる中で、何が起こっていたのか。一人のリーダーが引っ張る中央集権体制だと、「どうやって優先順位を決めていくのか」というやり方に終始する訳です。するとやっぱり、よりたくさん売れるクルマ、よりたくさん儲かるクルマの優先順位が高くなります。

F:そうなりますよね。やっぱり儲かるクルマを作りたい。少しでも利益を上げたい。

:そう。でもね、クルマの中には、ワクワクドキドキする物も有れば、世の中から必要とされているクルマも有る。豊島のやっている環境を中心に考えたクルマも有れば、また一方で会社の幹となるような、カムリとか、カローラとか、そういうのも有る。

 それじゃ今言ったようなクルマを、それぞれ第一優先で見てくれる人は誰かというと、実は居なかったんですよ。明確に「この人」という人が居なかった。今はカンパニー制ですからね。それぞれのカンパニーが責任を持ってやっている。

 例えば「世の中から必要とされているクルマ」という事であれば、CV(商用車)カンパニーがキッチリとやる。彼らは必要なクルマ、商用車を第一優先に考えるグループだから。もちろんまだ足りない部分も有るのだけれど、だいぶそういう形は出来てきましたね。

他社:そうしたら、最初から赤字でもいいカンパニー。例えば「今無いクルマを造る」みたいなカンパニーがあったら面白そうだなと思っちゃうんですけれど。さすがにそれは経営者としては難しいですか。

:赤字でもいい?

他社:はい。赤字になっても良いから新しい分野のクルマを造るというのはどうでしょう。

:赤字じゃあダメですね。とんでもなく儲けなさいとは言いませんよ。でも「赤字でも良いから造りなさい」とは言えません。どんな環境の会社であれ、それは言えない。一生懸命やって、結果として赤字になってしまいました、というなら良いですよ。だけど、最初から赤字でも良いなんていうプロジェクトはね。

F:社長としてそれは認められない。

:会社の社長としてだけでなく、普通の家だってそうですよ。例えばお父さんの給料が月に100万円だと。それなのに家族は月に300万円もかかる生活をしていると。これを良いなんて言うお父さんがいますか?

他社:いや、居ないです。でもウチの家族を考えてみると、子供は稼ぐことできません。子供だけで見れば赤字な訳です。それは許そうみたいな考え方が……。

:だけど、それを許すために家族は何をしますか。お父さんが月3回ぐらいにゴルフに行っていたのを止めますとか、毎週家族で外食に行っていたけど、回数を減らしましょうとか、そういう事をしますよね。

F:確かに。やりますね。

:やりません?家で。

F:やります、やります。