「三角をみんなで称え合える会社になろうよ」

F:うわぁ……マジっすか。いやあの……マジでございますか。

繰り返しになるが、お話を伺っているのは世界最大の自動車メーカー、トヨタの豊田章男社長だ。大社長を前にして、不肖フェルはガラにも無く緊張して敬語が変になっている。しかしさすがは天下の大社長。下のものにはサラッと下の言葉で返すのである。

「バツバツバツと連続でバツがついた方がよほど良い」

:マジですよ。達成しましたなんて言ってくるよりも、バツバツバツと連続でバツがついた方がよほど良い。散々バツが付いた挙句に、そこから何を学んだのかと。この失敗を何に生かせるのかと。持続的成長を望んでいる企業としては、長い目で見れば絶対にそっちの方が価値は出てくるのだと僕は思います。

F:なるほど。凄い。

:しかし、なかなかそう簡単には行きませんよね。ここ数年。いや、数年というか何十年も、トヨタの社員はそういう風には育てられて来ませんでしたから。今はみんな「えっ?」という感じだと思いますよ。まだ悩んでいる最中なのだと思います。

他社:まだまだバットを振ってないという思いが、社長としてありますか。

:いや、振っている人は振っていると思います。

D豊島:トヨタには「方針」というのが有りましてね。方針のシートに、今年はこういう事をやります、という計画を各部で立てるんです。それを半期でどこまでできました、中期ではこう、と。目標を上回る成果だから二重丸、これは丸、三角、ペケ。目標どおりだから丸、こっちは途中だから三角。全然ダメだわこれはペケ……とこんな具合に付けていく。

F:それは自己評価でやるのですか。部署ごとの自己評価。

D豊島:うん、自己申告です。部署ごとにね。僕たちとしては、どうしても二重丸をつけたくなるわけですよ。

F:それはそうですよね。バツを自分でつけるのは辛いですもの。

D豊島:社長は年頭方針のときに、「二重丸よりも尊い三角があるんだ」と言いました。「胸を張れる三角を取ろうよ」とも。高い所に挑戦していくと、自然と三角が付いちゃうんですよ。絶対に二重丸なんかにならんですよ。自然と三角になっちゃうの。そしてヘタするとバツが付いちゃう。

F:高い所に挑戦する。すると三角やバツも付いちゃう。

D豊島:そう、付いちゃう。だから三角をみんなで称え合える会社になろうよと。盛大に空振りした奴に対して、「よっ!ナイススイング!」って言わないと。みんながチャレンジした人に対して褒める文化が無いと、やっぱりバットを思い切り振ることは出来ないですよね。