前号(豊田章男社長「1000万台のクルマを造るには」)では、今年の6月からトヨタに導入されたカンパニー制に関するお話を伺った。1000万台のクルマを安定して生産するには、一人の強力なトップによる中央集権体制よりも、各カンパニーが独立で採算を考える、分権制の方が合理的であるとの考えだ。

 今回は、今までのトヨタと、これからのトヨタの企業風土、企業文化の違いについて伺おう。

「『これを達成しました』には興味が無い」

「自分たちの手で市場を作るんだという気概を持って仕事を進めて行って欲しい」

豊田社長(以下、豊):トヨタは既存のプロジェクトをいかに効率的に進めていくか、という事に関しては非常に長けていると思います。ですが、それだけでは新しいジャンルが出て来ない。かつてのトヨタは、新しいジャンルを生み出して来たと思うんです。1960年代から1980年代にかけては。

F:昔は「トヨタが初めて」というジャンルが有った。

:そう。トヨタが初めて出して、そうして市場を作っていったジャンルが間違いなく有った。ところが、徐々に社員に賢い人が増えて来ると、あそこに市場があるから、そこに適合するクルマを造ろうとか、そういう論理になって行くんです。どうしても。

F:それはトヨタがどんどん大きくなって、お給料もたくさん出る良い会社になって、東大を出たような頭の良い人が挙って入社して来て……ということですか。

:いや、頭が良いかどうかは分かりませんが…。もう少し、もう少しね。やっぱり本当の意味での市場開拓とかベンチャー的なことを、それぞれのカンパニーがベンチャー精神を取り戻してやってもらいたい。カンパニー制にして、身動きの取りやすいサイズになったのだから。「市場があるからやりましょう」ではなく、「自分たちの手で市場を作るんだ」という気概を持って仕事を進めて行って欲しい。僕はそうなることを期待しています。

他社のインタビュアー(以下、他社):新しいものをやろうとすると、今まで8勝2敗くらいで行っていたものが、例えば6勝4敗ぐらいになる可能性がありますよね。それを許してくれる風土は有るのですか。

デストロイヤー豊島氏(以下、D豊島):許してくれていますよ(笑)

:有ると思います。いま。みんながバッターボックスに立っているのと同じです。まずは立たなかったら意味が無い。そしてひとたび立ったのなら、今度はフルスイングしなくちゃ意味が無い訳です。フルスイングして空振りしたって良い。その代わり、失敗から学んだものは何だと。だから僕は、「これを達成しました」なんていうレポートには興味が無い。

F:えぇ!トヨタ自動車のトップが「達成しました」は興味が無い。それはまた意外なお話です。

:興味ないですよ。だってそんな、いつまでにこれこれを達成しましたなんて、当初に設定した目標が低いか何かですから。