『信頼性』というものはそれぞれの会社によって違うんです
何とタイムリーな。
当欄で記事を書くと、そのタイミングで当該企業に大きな動きが出ることが多い。ルノーと日産自動車。そして三菱自動車連合は、9月15日に「アライアンス2022」なる新6カ年計画を発表した。これは2022年に年間販売台数を1400万台に、また売上高2400億ドル(約26兆6400億円)を見込む壮大なものだ。
ちなみにこの3社アライアンスは、2017年上半期(1~6月)で、すでに独フォルクスワーゲングループ(VW)を抜いて販売台数が世界一になっている。3社はプラットフォームとパワートレインの共有を進め、電動化や自動運転などの技術を共有して、いわゆるひとつの「シナジー」を創出していくのである。
前号では、この部分までお伝えした。
フェルディナント(以下、F):会社の文化として、まあ少しくらいなら誤魔化しても良いよね、というような雰囲気はありませんでしたか。
鳥居(以下、鳥):ないです。それは絶対にない。断じてないです。
F:それでは今回のことは、社内のごく一部の人が勝手にやった、ということですか。
鳥:そう。そう信じたいです。長年、三菱自動車で仕事をしてきて、そういう雰囲気を感じたことはただの一回もありませんから。みんな真面目に、真剣に、少しでも良いクルマを作ろうと必死になって頑張ってきましたから。
この続きをお伝えしよう。
F:鳥居さんがおっしゃる通り、三菱自動車は外部から見ても「真面目」というイメージがとても強いです。でも、だからこそ今回の事件はショックが大きかった。あの真面目な三菱が……と。ですが一方で「またか……」という思いもある。2000年と2004年に起きたリコール隠し問題です。非常に失礼なことを申し上げますが、こうなるともう三菱には隠ぺい体質があったのではないか、そういう文化があったのではないかと思わざるを得ないんです。そもそも2000年に問題が発覚したのは内部告発がきっかけでしたよね。
鳥:そうですね。
F:当時は一部の良心を持った三菱の方が、「これはもう勘弁ならない」と義憤に駆られて告発をしたということなのでしょうか。うんときれいに解釈をすればですが。

鳥:確かにリコール隠しの時は、そういうことがあったのは事実だと思います。あれだけの大きな話になっていますし、我々も当時その断片には接していましたから。あったのだと思います。
F:あのリコール隠し事件の頃は、鳥居さんはどんな仕事をしていらしたのですか?
鳥:実験ですから、例えばリコールするかしないかジャッジをしろとか、あるいは試験をしろということを頼まれてやっていました。いくつかのリコールに関しては、自分たちも関与しています。
F:なるほど。実験を。
鳥:モノが壊れるとか壊れないとか、三菱自動車としての信頼性の話になってきます。私は実験の車体担当でしたので、そういう仕事が多かったんです。実は「信頼性」というものは、それぞれの会社によって違うんです。それぞれの会社の歴史に応じて変わってくる。逆に言うと、どこまで持てばいいかという明確な共通の線がない。燃費の測り方には国が定めた共通線があって、クリアになっていますが、例えば強度試験なんていうのには共通線がない。
F:へえ。それは意外です。強度の信頼性は各社バラバラで共通線がないんですね。
鳥:ええ、ないんです。そこは各社の長い歴史の基に築き上げてきた経験で固めている領域なんですね。こと強度に関して言えば、国の基準も「堅牢な構造であること」、というくらいの話で。
F:「堅牢な構造であること」、ですか。なんか昔のJALのスチュワーデス(CA)の採用基準みたいですね。「容姿端麗であること」、なんて、今なら大問題になる条件が当たり前のように掲げられていた(笑)。
鳥:え?JALにそんな条件があったのですか?
F:昔の話ですけどね。あの子は何期、何期、と期分けしていた時代の話です。同い年でも期が違うと「セミ同期」なんて言っていました。
鳥:詳しいですね(笑)。
F:私、ソッチ関係はうるさいですよ。多田さんの音楽にも負けません。
担当編集Y崎:ちょ、ちょっとフェルさん……せっかく鳥居さんにお時間を頂いているのですから、クルマの話をして下さい。CAの採用基準じゃなくて、クルマの強度の話でしょう。
F:や、そうでした。
鳥:我々が実験をした領域に関しては、発生率にしろ、実験の条件にしろ、全員が間違いなく「不具合の元」に対して真剣に取り組んでいました。でもその結果を「どう取り扱うか」、という事に関しては、いろいろあったのだと思います。
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