特別に濃いものではありませんでした

F:なるほど。で、中国での再検証をしつつ、日本から情報を取っておられたと。

:何しろ遠く離れた中国にいましたので、情報が断片的なんです。ポツポツとしか入って来ない。

F:そのポツポツ情報というのは、当時我々がメディアから得ていた情報と同程度のものなのですか。もう少し“濃い”話が来るのですか。

:基本的には同じです。特別に濃いというものではありませんでした。

F:メディアに出ている話と同程度。

:最初は軽自動車だけかな、と思っていたんです。日産さんと共同開発の軽だけの話かと思っていた。でも実際は違いました。実は過去に遡ってこんな方法でやっていましたと。その方法をやっていたのに対して、さらに数値を改ざんしましたと。そんな話が徐々に出て来る訳です。もう本当に、えっ?マジかよ……という感じでした。

F:いったいどうなっているんだ。もっと詳しく状況を説明してくれよ!となりますよね。日本に対して。

:もちろんそうなります。でも日本側も、みんな連休も返上して、ゴールデンウィークも休まずに泊まりがけで過去のデータを再検証しているわけです。外部はもちろんですが、社内に対しても、途中段階のいい加減なデータを出す訳にはいきません。ある程度確証がでた時点で、内容がハッキリ固まった段階で、「これこれこういう状況です」とやらないと意味がないじゃないですか。我々が外からやいのやいの騒いでも、細かな断片的なことを突っついても、しょうがないじゃないですか。だから、それはある程度コントロールしましょうと。連絡窓口を1つにして、日本と定期連絡を取りましょうと。

 幹部の出張がドタキャンされ、何事かと思う矢先にメディアで知った自分の会社の燃費偽装問題。本社へ問い合わせても、断片的な情報しか入って来ない。やりようのない怒り、焦り。下劣なイカサマをはたらいたのは、いったいどこの誰だ!……。分かっているのは「身内の犯行」ということだ。こうなればもう、泣いても騒いでも仕方がない。肚を決めて、事態の収拾に当たるしかない。

 事件に絶望し、三菱自動車を去った社員も少なくない。だが彼らの事を「裏切り者」とは言えまい。それ程のことを、三菱自動車はしでかしたのだ。鳥居さんが学生時代に憧れた丈夫なエンジンの三菱車。2~3回谷に転げ落ちても、ビクともしない強靭なボディの三菱車は、気が付けば燃費偽装という汚辱の煤に塗れていた。

F:どうしてこんなことになったのでしょう。

:それはいろいろな形で検証され、またいろいろな形で報告されていますが、我々自身がその渦中にいる。そうした問題が起きる歴史の中にいる。自分たちが若い頃からやっているわけですよね。

F:そうした偽装をやっていた事を、鳥居さんご自身は分かっていましたか?

:いえ。分かっていません。

F:偽装は分かっていなかった。報道で初めて知った?

:分かっていません。分かっていませんでした。

F:会社の文化として、まあ少しくらいなら誤魔化しても良いよね、というような雰囲気はありませんでしたか。

:ないです。それは絶対にない。断じてないです。

F:それでは今回のことは、社内のごく一部の人が勝手にやった、ということですか。

:そう。そう信じたいです。長年、三菱自動車で仕事をしてきて、そういう雰囲気を感じたことはただの一回もありませんから。みんな真面目に、真剣に、少しでも良いクルマを作ろうと必死になって頑張ってきましたから。

 真面目に、真剣に、少しでも良いクルマを作ろうと必死になって頑張ってきた。悲痛とも言える鳥居さんの言葉。インタビューを進める程に、鳥居さんを責め立てるような体になってしまい気が重くなる。だが聞かねばならない。

 鳥居さんのインタビューは次号に続きます。今回も「お楽しみに!」と言わずに終わります。