軍の車両部がそのまま自動車会社に

F:なるほど。軍の車両部がそのまま自動車会社に。

:10年くらい前に、中国政府は乱立する自動車会社を集約するために、「四大三中」と言って、4つの大きな会社と、3つの中くらいの会社にまとめましょう、という政策を出しました。その流れの中で、長豊汽車単独では生き残れないからと、隣の広東省の広州汽車を合併させて「広汽長豊」という会社が出来ました。その新しい会社とウチとで、50対50の会社をつくったのが2012年です。広汽三菱という会社です。

F:なるほど。そこで鳥居さんはパジェロを。

:パジェロと言っても、1つ世代の古いパジェロです。それを造り続けていた。でもそれだけでは技術が上がりませんから、会社の立ち上げと同時に日本で言うRVRを作り始めました。それからパジェロスポーツ。ああ、これは日本にありませんからイメージが湧きにくいですね。ピックアップトラックをベースにして後ろにキャビンを付けたクルマで、昔でいう、トヨタさんのハイラックスサーフみたいなクルマです。

中国版のパジェロ
RVR
中国版のパジェロスポーツ

F:はー。そんな良さそうなクルマを人知れず中国で(笑)。知りませんでした。

:今はタイで次のジェネレーションのクルマを作っています。ウチの稼ぎ頭です。

 パジェロスポーツ。面白そうなクルマだ。日本で売り出しても一定のファンが付くかもしれない。さて、話を“あの事件”に戻そう。

F:すると鳥居さんは、事件の第一報を中国で聞いたわけですね。まさか倒産した山一證券の社員みたいに、新聞でその事実を知ったとか。

:あれは4月のこと。ちょうど北京モーターショーの前でした。ウチの幹部が、北京モーターショーに来て、スピーチをする予定になっていたんです。それが突然キャンセルになったんです。そして、「幹部は行けないから、あなたたちの方でうまくやっておいて」というような連絡が来て。

F:なんと!幹部がモーターショーをドタキャンした。

:え?急にどうしたんですか、と聞いても「とにかくそれどころではないんだ!」、と。

 今や世界一の自動車市場となった中国では、北京と上海で、1年おきで交互にモーターショーが開催されている。世界一の巨大マーケットで開催されるモーターショーである。何を置いても駆け付けなければ行けないはずだ。それがイキナリ、「それどころではないんだ!」の一言でドタキャンされてしまった。いったい何が起きたのか。

F:その時はまだ、事件の事はご存じなかった。

:知らされていませんでした。ただ、こういう話はきっと何か……。

F:何か良くないことが起きたのでは、と。

:ええ。何か良くなことが起きたのだろうとは思いました。そうしたら、次の日の新聞にウチの不正問題がバーンと出ていて。

F:事件の一報を聞いた時、最初に何を思いましたか。

:社内で燃費計測に関する偽装があった。それじゃ中国はどうなのかと。すぐに検証をしなければいけない。まずそれを考えました。そしてすぐに自分たちで再計測を行いました。もちろん日本はどうなっているんだ、本社はどういう対応をするんだ、という情報を集めながら。

F:日本の顧客は、燃費に関して非常にセンシティブですが、中国はどうですか。中国のお客さんも、燃費のことを気にするのですか?

:こだわる人とそうでない人の差が大きいです。会社支給でアウディに乗っているような上層の人は、正直あまり気にしておられない様子です。ですが今はクルマを買う層がどんどん広がっている。やっと乗用車が買えました、1.5リッタークラスが買えました、と言っている人たちとは感覚が違います。一般の人たちは、やはり燃費を非常に気にしていますね。