様々な紆余曲折があったのです


 9月11日、クラウドサービスを提供するリスクモンスター社が、我が国の「金持ち企業ランキング」を発表した。三菱自動車は、信越化学、任天堂、ファナックに続き堂々の4位入賞。営業キャッシュフローはマイナス458億円だが、5412億円ものネットキャッシュがあるそうだ。ネットキャッシュの計算根拠は、[現預金-(短期借入金+長期借入金+社債+1年以内返済の長期借入金+1年以内償還の社債+割引手形)]となっている。次々とスキャンダルが噴出し、さぞかしヘコんでいるのかと思いきや、実はかようにキャッシュリッチな会社であったのだ。ちなみにベスト20の企業の中で、営業キャッシュフローがマイナスの企業は、三菱自動車ただ一社である。


 燃費の話が、出た。

 多田さんとの思い出や、ラリーの話で盛り上がり、三菱自動車本社会議室はホノボノとした雰囲気に包まれている。だが我々は、茶飲み話をしにやって来たのではない。“あの”忌まわしい燃費偽装事件について聞きに来たのだ。

フェルディナント(以下、F):今回このインタビューに至るまでには……トヨタ自動車の多田(哲哉)さんから鳥居さんをご紹介いただくまでには、実は様々な紆余曲折があったのです。今年の1月に開催されたオートモーティブワールドで、私と多田さんが掛け合い漫才のような講演会を行いました。そこに三菱自動車の若くて可愛い女性社員が来ていて、講演の後に「ウチのクルマも取り上げて下さい」と直訴しに来ました。いや、今、自分が三菱自動車のクルマの記事を書いたら、どうしたってディスることになるよ、と返事をしたら、ディスられるより、スルーされる方が辛いです、と。その意気やよし。ヨシ任せとけ、と日経BPから貴社の広報に連絡を入れて、アウトランダーPHEVの試乗と相成りました。

鳥居(以下、鳥):その話はうかがっています。

F:で、アウトランダーのエンジニアインタビューに先立って、あらかじめ質問事項を出してくれ、と広報が言ってきた。それでは、とこちらが送った質問の中に、「事件前と後で、開発環境に変化はありますか?」という内容があった。そうしたら「その質問は、いちエンジニアからはお答えしかねます」という回答が来た。要は燃費の話は聞くな、試乗したクルマの話だけをせい、と言う訳です。

 それではインタビューする意味がない。もう試乗もやらねえよ、と返したら、今度はインタビューは、副社長が対応します、と来た。副社長。日産自動車から来た山下(光彦)さんです。とても優秀な方と聞いていますが、何しろ事件当時は日産の役員で、三菱自動車の燃費偽装には何の関係もない。

 ミスキャストも甚だしい。なんなんスか、あの会社のお役所体質は……と多田さんと飲んでいる時にこぼしたら、それじゃ鳥居くんを紹介するよ、彼ならきっと忌憚のないところを話してくれるから……と。かいつまんで言うと、こんな経緯があったのです。言うなれば、鳥居さんが多田さんの引きで三菱自動車に入社して以来のムチャ振りが、何十年ぶりかで繰り返された訳で(笑)。

:そうですね。またしても多田さんのムチャ振りです(苦笑)。

F:単刀直入にうかがいます。燃費偽装の発覚当時、鳥居さんはどこで何をしていらしたのですか?

:“あの”事件があったとき、私は中国にいたんです。2012年から16年までの4年間、中国に駐在していました。「コウキ三菱」という合弁会社の立ち上げを、初めからずっとやっていたんです。

F:コウキ三菱……紅い旗と書いて紅旗ですか?

:いえいえ。広いに汽車の汽でコウキです。広州汽車の略です。トヨタ、ホンダ、あとフィアットとも合弁をやっていますね。場所は湖南省の長沙市です。

F:ははあ、場所は湖南省の長沙にある広汽三菱。

:そこには古くから、ウチのパジェロを造ってくれていた長豊汽車という、いわゆる湖南省の軍の車両部みたいな会社があるんです。

F:へえ!軍の車両部みたいな会社でパジェロを。

:中国の自動車会社って、大小合わせると何百とありますよね。それらの中には、もともと中国の人民解放軍の車両部で、いろんな会社のライセンス生産で現地組み立てを始めたのがスタート、というような会社が結構あるんです。