「1000万台クラスになったら中央集権はムリ」

さあさあ、いよいよ今回の話の核心だ。
トヨタは今年の4月から製品群別に7カンパニー制度を導入している。
カンパニー制度導入の目的は以下の3点である。

(1)開発から製造まで一体となった「もっといいクルマづくり」、「人材育成」の実践
(2)意思決定の迅速化・完結化
(3)将来を見据えた中長期ビジョン・経営戦略策定機能の強化

ここでも「もっといいクルマづくり」という言葉が出てくる。
今やトヨタを語る上では、全ての基礎となるキーワードと言える。

トヨタは2011年の段階で、既に「地域主体経営」を導入している。その2年後の2013年には、「ビジネスユニット制」の導入も済ませている。「もっといいクルマづくり」と「人材育成」の推進は、既に取り組んできたテーマであるはずだ。しかし1000万台クラスの会社に成長した今、“それだけ”では足りなくなってしまったのだ。それ故のカンパニー制導入である。

今回の一番大きな体制変更のポイントはズバリ、「機能」軸から「製品」軸に移ったことにある。因みに7つのカンパニーとは、

・先進技術開発カンパニー
・Toyota Compact Car Company
・Mid-size Vehicle Company
・CV Company
・Lexus International Co.
・パワートレーンカンパニー
・コネクティッドカンパニー

である。

だいたいの車種はカンパニー名から想像が付こう。
CVは商用車のことである。それぞれのカンパニーには、それぞれにCEOが存在する。

:1,000万台のレベルの会社になったら、そんな1人のリーダーとか、中央集権の体制で、トップが「こうやりなさい」と言って会社を動かすなんて、どだい無理な話ですよ。

F:そういうものですか。

:ムリですよ。もう絶対にムリ。年間に1000万台のクルマを作るって、そんなレベルの話じゃないですよ。

F:どれくらいの数までなら行けるものですか。中央集権体制で。

:そうですね。600万台までならできると思います。

F:600万台までなら、ワンマン社長でも行ける。

:行けると思います。でも600万台を超えた段階で、僕はワンマン社長では無理だと思います。少なくとも、今のトヨタの仕事のやり方では絶対にムリ。現地現物とか、商品に近いとか、お客様に近いとかを大切にする今のウチのやり方では、もう1,000万台でワンマン社長なんて絶対にムリです。

F:なるほどなるほど。明確なお答えですね。

ワンマンのイメージが強い日産のカルロス・ゴーン氏。昨年の日産のグローバル販売台数は過去最高の542万3千台である。そろそろ600万台も視野に入ってきた。傘下に収めた三菱自動車の年間販売台数は121万台だから、それも数字に含めれば、来年は楽勝で600万台超になる。はてさて、日産はこれからどうするのか。これは見ものである。

「カンパニー制は、ソリューションではない」

:今回のカンパニー制への移行は、とんでもなくチャレンジングなことを始めたと思っています。だけどそれは、より良いクルマを、もっともっと良いクルマをつくる為の枠組みなんです。だからカンパニー制は決してゴールではなく、スタートだと思っています。カンパニー制は、ソリューションではなく、オポチュニティーだと。

F:カンパニー制は、「ソリューションではなくオポチュニティー」であると。

:そうです。ソリューションではありません。決して“解決策”ではない。あくまでも良いクルマを作るためのオポチュニティーです。

F:そのオポチュニティーは、「好機」という言葉の理解で正しいですか。

:その通りです。だから、みんなが考えなきゃいけない。僕はみんなに考えてもらいたい。

F:みんなが考える。社員のみんなが考える。

:そう。7つのカンパニーが出来たことにより、何人ものプレジデントが生まれる。それから何人ものリーダーができる。そして“リーダー”からリーダーズというのが出来てくる。それが今、トヨタが一番目指している姿ではないでしょうか。そうしたときに、きっとトヨタらしい強さが、さらに強いトヨタ“らしさ”が、また発揮できるのだと思います。

F:車種別のカンパニー制となると、カンパニー同士での食い合い、“カニバル”が生まれる恐れは有りませんか。

:“カニバル”というか……カンパニー同士で競争が起きるのは良いんじゃないですか。各カンパニーが必死になって考えて、お客様から、市場から選ばれるクルマを作れば良いんですから。

F:なるほど。社内間の健全な競争は大歓迎、ということですね。