ひどいですよホント。人のことを呼んでおいて

F:すごい。即断即決ですね。

:でもアッサリと断られました。「お前は学生か、ラリーは何かとカネが掛かるからやめとけ」と。でもこっちはもう完全にヤル気になっちゃっていますから簡単には諦められません。今度は岡崎のチーム・シロキヤの門を叩きました。当時あの辺には、勝田さんのラック、名古屋にチーム・アイ、そしてシロキヤ、と大きく3つのチームがあったんです。その中には全日本クラスの選手もいて。当時は車両の改造も許されていて、「TE27」とか、「A73」というランサーが強くて。ツイン(キャブレター)にして排気管を変えてアレコレ外して軽くしたりして。

F:今のラリーは改造できないんですか?

:今はもう全然ダメですね。僕が始めたころから2年ぐらいして、排ガス規制でエンジンには手を入れちゃいけない、という動きになってきたので。

F:排ガス規制で……なるほど。

:そこで2年くらいやったのかな。多田さんは先に卒業して三菱自動車に入社されて、それで私が就活の時に、「鳥居さ、三菱はラリーもやっているし、いろいろとやりたいことを好きにやらせてくれるから良いぞー」みたいなことを言われて、それじゃということで手を挙げたんです。

 何と、トヨタの多田さんと三菱自動車の鳥居さんは、大学の音楽クラブからラリーのチーム。さらには就職先まで同じだったのだ。というか、多田さんは三菱自動車からトヨタへの転職組だったのだ!

F:でも多田さんは、とっとと三菱自動車を辞めてトヨタに行っちゃいましたよね……。

:そうなんです。ひどいですよホント。人のことを呼んでおいて……(苦笑)。

F:なんでも、ラリー、ラリー!自分はすぐにラリーをやりたいです、と言ったら、はぁ?新入社員のお前が何言ってんの?とまるで相手にされないので、アタマに来て辞めたんだとおっしゃっていました(笑)。

:私は機械科ですけれど、多田さんの専攻は電気電子なんですよ。新入社員がいきなりラリーというのは、ウチじゃなくてもちょっと厳しいですよね(笑)。でも多田さんは本当にユニークな人で、音楽の知識はハンパではないし、当時は中部のラリー選手権のチャンピオンにもなりました。速いですよ多田さん。まあ組んでいたナビが良かったということもありますが、運転は間違いなく上手い。

F:多田さんには「ユニーク」という言葉が本当にピッタリですよね。私はあの方のインタビューを通して、トヨタという会社の見方が根底から変わりましたもの。

 企業は人なり。会う人、話す人の印象に因って、企業のイメージなど大きく変わってしまう。トヨタの多田さん、もちろん(豊田)章男社長。マツダの虫谷(泰典)さん、藤原(清志)大明神。日産の水野(和敏)さん、田村(宏志)さん。ホンダの人見(康平)さん、椋本(陵)さん……等々。

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