5代目のLSは、ロングボディを表す車名の最後に付く「L」の字が廃され、1ボディのみの設定となった。しかもその1ボディは、旧型のロングよりも全長が25mmも長い、「ロングとは呼ばないが、実はロング」的なものである。どうしてそうなったのか。今回はその背景からうかがおう。

F:新しいLSはいわゆるロングボディを廃止しました。廃止はしたけれども、先代よりも全長は長くなっている。そして長くなっているのに、実際に座ってみると逆に後部座席は狭くなっている感じがします。

:フェルさんのご指摘の通り、後部座席のレッグスペースは先代よりも狭くなっています。そこは「カップルディスタンス」という概念からご説明しましょう。

レクサスインターナショナルのチーフエンジニア、旭 利夫さん

F:カップルディスタンス、ですか。

:前席のヒップポイントと、後席のヒップポイントの、あるいは左右距離を表すのがカップルディスタンスです(※)。車体パッケージの世界では、これがおしなべて「後席空間」を表す指標になっています。旧型は1150mmあったのですが、新型は1080mmになっています。(※編注:運転席と他の席の距離を指す言葉で、カタログなどには「前後乗員間距離」と書かれます。左右のヒップポイントの距離を表す場合もあるようです)

F:旧型の1150mmというのは、ロングボディでの数字ですか?

:そうです。ロングボディの数字です。これが70mm小さくなっている。ただし、フロント席の背中の部分、ここの後ろ側をちょっと削って薄くすることによって、25mmほど取り戻しています。70mmマイナス25mmで、結果として45mmほど旧型よりもニースペースが短くなっていることになります。

全長は長くなり、室内は狭くなった、それでいいのか?

F:クルマの全長は25mm長くなっているのに、後部座席のニースペースは45mmも短くなった。意地悪く言うと、大きくなったのに狭くなった。それでは全長で稼いだ分はどこに消えたのでしょう。その分は、どこがスペースを食っているのですか。

:そういう意味で言いますと、フロントの人とリアの人をクルマの中心に寄せるようにしました。今回のLSのパッケージでは、やりたかったことが大きく3つあるんですね。

F:お! アベノミクス、「新・三本の矢」ならぬ、「新型LS・三本の矢」ですね!

マイトのY:うるさい! 変な茶々を入れるな!

:……その一つ目が、先程お話しした、お客様からいただいた「LSはいいクルマだけど、ワクワクしない、ドキドキしない」という話につながります。ドライバーズカーとして走りをより良くしていきたい。ワクワクするようなドライバビリティを実現するために、「カンセイショゲンにうんとこだわろう」と思ったんです。

F:カンセイショゲン……ワクワクドキドキの「感性」ですか? それともイナーシャの「慣性」ですか?

:イナーシャの「慣性」、慣性モーメントの「慣性」です。我々は慣性諸元と呼ぶんですけれども。ドライバーとクルマとの一体感を高めたいと考えると、慣性諸元を良くする必要があります。それを実現するためには、重心に重い物を近づけていくということをするわけです。そうすると、クルマの取り回しがすごく軽快になるのです。まずはそこをしっかりと詰めたかった。