今や会長となった初代プリウスCEの内山田竹志さん。
 そして今や副社長となった先代LSのCEだった吉田守孝さん。

 キーマンであるお二人に、「電技(電子技術部)にオモロイ奴がおるんですわ」「お! こいつなら俺知っとるで! あのシツコイ男」と引き立てられた、トヨタでは珍しいエレキ出身CEの旭さん。

 眼の前の仕事に真剣に取り組んでいたからこそ、トヨタのクルマを(自部署の観点から)少しでも良くしたいという熱意があったからこそ成り立つストーリーだが、旭さんからこのお話を伺って、「オヤ?」と思うことがあった。

 電技に限らず、ある専門部署に入ったら、そこの専門性の殻の中に閉じこもったままになりそうなものだ。ほかの世界を知らない自動車会社の一部門の会社員として純粋培養されていく。無論究極的に専門性を高めていくのならそれでも良いのだろうが、トヨタは企業であり公的研究機関ではない。他の部署のこと、もっと言えばクルマそのもののことを知らなくても良いのだろうか。そんなはずはない。そこにトヨタ流の仕掛けはなかったのか。

レクサスインターナショナルのチーフエンジニア、旭 利夫さん

F:旭さんは大学でニューラルネットワークなどを学ばれて、トヨタに入って電子技術部に配属されて、電波暗室に籠もってひたすら実験を繰り返された。

:はい。電波の実験を4、5年やって、それからさっき言ったスマートキー・システムの開発に行きました。行きましたと言っても、こっちも電子技術部なんですけどね。それでスマートキーの開発をきっかけに、他の部署から、いろいろな視点でクルマを勉強させていただいた、という経緯があります。

F:たまたま、と言うと失礼ですが、旭さんはお仕事でスマートキーを担当されたので、他部署とやり取りをすることができた。でも電技でそうしたチャンスに恵まれる人は少数派ですよね。そうなると、なかなかクルマの全体像というか、成り立ちをイメージしづらいのではありませんか。トヨタの中に、エンジンの仕組みはこうだよとか、足回りはこんな種類があってこうなっているんだよ、という風に体系的に学べる仕組みはなかったのですか?

昔はこんな便利な仕組みはなかった

:そういう講座もあるにはあったのですが、例えばそれが電子技術部にいるときにキチンと勉強できる環境として用意されていたか、というと、正直な話、当時それはなかったですね。

F:なかなか難しかった。勉強の時間も取れなかった。

マイトのY:そりゃそうですよ。一度配属されちゃったら、なかなか別のことをやる時間は取れませんもの。それはトヨタに限らず、どんな会社でもそうでしょう。

:ええ。時間的にもそうだし、いろいろ難しかったですね。

F:すると、せっかくトヨタという世界一の自動車会社に入っても、体系的に自動車について学ぶ仕組みがないということですか。部署によっては、定年になるまでディーゼルとガソリンエンジンの差もロクに分からずに終わってしまうということですか。