みなさまごきげんよう。
フェルディナント・ヤマグチでございます。
しかし今年の夏は大変な荒れようでございますね。二度目の梅雨が来たようにダラダラと長雨が続いたと思ったら、今度は記録的な猛暑続き。山手通りの下を走る首都高山手トンネルの中を走っていた際、ふと温度計を見たら、何と43℃(!)を指しています。エアコンの効きが悪いクルマで渋滞に巻き込まれたりしたら、マジで危険なレベルです。古いMINIに乗っている方は、渋滞情報を見てから出かけること吉であります。
暑い日が続いておりますが、山手トンネルの中の温度は何と43℃!古いMINIに乗っている方は、渋滞情報を見てから出かけること吉であります。
そんな不安定な天候の中、元ホンダのエンジニア、繁浩太郎さんにご招待いただいて、神宮花火大会の見物に行ってきました。前の日に開催された多摩川花火は、大雨と落雷のため直前に中止になってしまったので、まさかこちらも……と気を揉んでおりましたが、杞憂に過ぎませんでした。
花火の後は繁さんの超絶ギターテクなどもご披露いただき、楽しいひと時を過ごしました。繁さん。ありがとうございました!
元ホンダのエンジニア、繁さんと。今のホンダの利益の根幹となるクルマを作った大変なお方です。
小型船舶の免許を取得するために、ヤマハのボート教室に行ってきました。今は制度が変わって、ボートの免許を取得しても、ジェットスキー等の水上バイクには乗れないんですね。それすらも知りませんでした。友人からは「何?ボート免許?楽勝楽勝。だって合格率は96%だぜ」、と軽く聞いておりましたが、どうしてどうして、海図の勉強なんかマジで難しい。選ばれし4%にならぬよう、しっかりと勉強します。
横浜ベイサイドマリーナのヤマハボート教室で実技講習。教官の先生が美人で嬉しいです。
しかし船舶向けの燃料って高いんですね。リッターあたり50円は高い。500リッター積みの大型ボートなんかを満タンにしたら、あっという間に10万円近く行ってしまいます。陸上のスタンドでタンクに入れて、コッソリ持ち込んだら……なんてよこしまなことを考えましたが、もちろん燃料の持ち込みは禁止です。
ということで本編へと参りましょう。MINIのインポーターインタビュー最終回。MINIデイビジョン プロダクト・マーケティングマネジャーの生野逸臣さんと製品広報マネージャーの前田雅彦さんのインタビューの続編です。
クルマの店で真っ黒なんてありえないだろう
MINIのブランド戦略は、現在大きな転換点にある。アイコンが変わり、カタログのイメージが変わり、実は店舗作りも変わってきている。ヤンチャからシックに。色のイメージで言うと、黒から白に変わりつつある。カタログは新しくなったら買い足せばいい。名刺も刷り直せばそれで済む。
だが、店舗の改築となるとそう簡単にはいかない。こちらには莫大なカネがかかる。それこそ何億円という巨額投資が必要になる。ご存知の通り、各地にある店舗はBMWジャパンが経営しているのではなく、地元の企業が経営している。億単位の投資をホイホイとできるような企業規模ではないのである。
前号の最後の部分では、このようにお伝えした。
生野(以下、生):ジーニアスにしても、お店のデザインにしても、我々に強制力はありません。「こうしていきましょう」とご提案する立場です。でも、それは変えていかないとですね……。
フェルディナント(以下、F):え?どうなるんですか?変えていかないとどうなるの?
生:お店もカタログも変えていかないと……。
今週は、この続きからお伝えしよう。
生:お店もカタログも変えていかないと、先々大変なことになる。
F:大変なことに……。
生:さっきフェルさんは、「MINIに乗る人はどんな人ですか、トレンドセッターですか?」と聞かれました。確かにMINIに乗る人は元来そうだと言われていました。クラシックミニの時代は間違いなくトレンドセッターが選ぶクルマだったんです。そしてもちろん、今でも我々はそうありたいと思っています。ブランドとしてはトレンドセッターでありたいし、また、そういう人向けに売っていきたい。
だからCIを変えた、デザインも今まで真っ黒だったのをガラッと白に変えた。15年前にMINIが真っ黒をやり始めたときは、ほかの自動車メーカーから、「クルマの店で真っ黒なんてありえないだろう」ってボロクソに言われたんです。「あいつら日本の自動車販売を分かってないな」、と。でも今を見てくだい。黒が増えているでしょう。
F:あー!◯◯◯とか。黒をマネしてますね(笑)。
マンちゃん:フェルさん!メーカー名を言わない!
担当編集Y崎:大丈夫です。処理しますから。
この記事が掲載されるときに、どのような“処理”が施されるかは不明だが、インタビューの最中は、無論実名がバリバリに飛び交っている。
F:目黒通りにモデル店舗があるよね。
生:ありますね(笑)。あのように、国内メーカーでもインポーターでも、マネし始めたところがいくつかあるんです。復活した当時のMINIは、今よりも少しヤンチャなイメージを売りにしていたのですが、そういうイメージもマネされている。メーカーによっては、もうモデルごと丸々マネしちゃうとか(笑)。まあ我々が「マネ」と言い切っちゃいけないんですが。
F:マネされてこそ一流、とかホンモノとか言いますけど。
生:ともかくそうした時代の流れの中で、我々は「もう一歩先」に行く、次の次元に行くというのが、この「白に変えた」、ということなんですね。
F:また何年かしたらマネされますよ。
生:そうですね。また何年かたって時代が変わってきたら、その中身を見ながら、その時代を受けて次のMINIはどうなるべきか、という姿を作っていくことになるのだと思います。と、そんな背景をご理解いただいた上で、店舗の話に戻ります。黒から白へ、ガラッとイメージを転換したデザインの店に改装して下さい、という話です。
本当に黒いままで生きていけるのか
F:変えないと大変なことになるという……。
生:おかげさまでMINIはよく売れています。何年も連続で右肩上がりの状態です。各ディーラーさんも、非常に良いビジネスが出来ています。でも10年後は分かりません。10年後もしっかりMINIが売れているか、本当に黒いままで生きていけるのか。売れるという確証があれば良いですが、我々はそう思ってないんです。
F:何しろ続々とフォロアーが、有り体に言えばマネッコが出てきている。
生:そうなんです。だからいまの状態に胡座をかいていては絶対にいけないんです。
F:それは分かりますが、怒るディーラーさんもいるでしょう。何しろ店舗改装にはカネがかかる。
生:はい。正直な話、いらっしゃいます。今まで黒いイメージでショールームを造ってくださいと言ってきて、実際にディーラーさんの負担で造らせておいて、15年たってみたら今度は全部変えますと言っているのですから。それは結構な反発もあります。「何億円も掛けてこの造りにしたショールームを、今度は白にしてくださいって、今さら何を言っているんだお前は」、という世界はやっぱりあるんです。
F:15年かぁ……。まあ改装の時期といえば時期だけれども、実際にいまこれでガンガン売れている訳だから、別にこれで良いじゃないか、という気持ちにはなるでしょうね。
生:ええ。改装自体はお金を生み出さないですから、気持ち的に抵抗があるのは分かります。「何で今やるの」と言うディーラーの方も当然いらっしゃる。でも遅いんですよ。「あれ、そろそろこの勢いも終わりかな」……と気付いてからではもう手遅れなんです。だから僕らはこのタイミングから変えていくと。このままだと「他と同じ」になっちゃいますよ、と。
F:今のお話、広く飲食店の展開をしている友人から全く同じ話を聞いたことがあります。「すたりだしてから手を打っても遅い」と。それにしても逃げる方は辛いですね。塚田農場と山内農場みたいだな(笑)。何しろパクっている方が圧倒的に店舗数は多いんだから。
マンちゃん:やめましょうよ。例えが悪いですよ。
F:あれさ、看板の色も同じだし、系列店だと思っている人がいるんだよ。全然違うのにね。まあ食べれば分かるけど。
生:何にしても、今この瞬間、一般のお客様が見たら、「黒いショールームなんて、どこにでもあるよね、普通だよね」と言われてしまう可能性は十分あるんです。だからこそ変えていかなければいけない。チェンジ・オア・ダイじゃないですけど。
F:ここがお手本だよ、というようなモデル店舗はありますか。どこに行けば良いのかな。
前田(以下、前):お台場ですね。お台場がそのモデルルーム的な存在です。
MINIはいま、転換点にある。クルマはフルモデルチェンジし、CIも変えている。なんともいいタイミングでこのクルマを選んだものだ。
F:ところで、MINI本体から見た日本市場の位置付けはどのような感じなのでしょう。MINIは東京モーターショーにも展示してくれる、今となっては稀有な輸入車ですが、実際にはどんな位置付けなのでしょう。世界的に見ると、日本は何番目くらいに売れているのですか。そもそも市場として大事にされているのですか?
生:グローバルランキングで見ると、6、7番目になりますね。MINIで言うと、1位はやっぱりイギリス。次に中国。そしてアメリカ、ドイツ、イタリア、フランス、日本みたいな感じになります。BMWは中国、アメリカ、ドイツ。それからイタリア、韓国、日本。去年は日本が上だったかな。だいたいそんな感じです。
F:へー?韓国は日本と同じくらいBMWが売れているんだ。知らなかった。
生:韓国は日本とかなり拮抗していますね。
前:先ほどのご質問に戻ると、BMWにしてもMINIにしても日本の市場は非常に大切しています。クルマを初めから日本向けに作ってくれるんです。例えば某輸入車は、導入時に右ハンドルはなかったり、日本仕様にディーゼルがなかったりするんですが我々は右ハンドルもディーゼルも全部最初からビシっと用意しています。生産の立ち上がりのときから準備しているんです。
意外とやっていないブランドが多いんです。
F:ははあ。最初からビシっと。
前:例えばボディーサイズひとつにしても、我々はドアノブを工夫して車幅を1800ミリに抑えたりしています。全高も(電気自動車の)「i3」などの小さなクルマはヨーロッパ仕様よりも車高を下げて1550ミリにして立体の駐車場に入るようにしたりしています。充電器のCHAdeMO対応もそうですね。右ハンドルが好例だと思いますが、ウチは生産の立ち上がりから日本仕様を入れています。これ、意外とやっていないブランドが多いんです。
生:日本は排ガスの規制も違うので、例えばディーゼルだと日本向けに特別なチューニングが必要になるんです。ヨーロッパとは違う判定基準があるので、そのためのチューニングが求められます。新しいクルマをグローバルで立ち上げる際にいろいろなエンジンをそれぞれ同時進行で開発していこうとすると、短期的に負荷がめちゃくちゃかかります。少しでも負荷を軽減するためにどうすればいいか。タイミングをずらすんです。ずらすことで開発負荷を軽減する。
F:開発時期をずらして負荷を軽減って、要するに日本を後回しにするってことですか。
生:ええまぁ、そういうことです。最初にヨーロッパ。その後に日本。エンジン開発チームが、こっちが終わったから次は日本だとやって、タイミングをずらすのは実はよくあることなんです。
F:はー。なんか日本がナメられているみたいでイヤだな。最初にやれやと。
生:今のBMWグループはそれをやらないんです。それだけ日本を重視してくれているんです。一緒に最初のグローバルでの立ち上げに間に合うように開発もやってくれている。
F:BMWグループは日本市場を重視していると。
前:売り出しの初期には、お得意さんや他社さんから、「早いね。もう日本で乗れるの」と言われたりします。
F:なるほど、事情通ほど、その価値を理解している。
前:細かい話ですけど、日本向けの特別な、例えばETCユニットもヨーロッパで付けていますからね。
F:へー!こりゃトリビアだ(笑)。
生:これは本当に、最後はお金の話になるんですよ。本体がそれだけ頑張ってくれているのだから我々もキチンと売っていかなければいけません。
F:輸入車って、輸送に時間がかかるから、見込み発注をするじゃないですか、BMWジャパン自体も在庫を抱えるわけですよね。それは何台くらいあるものなのですか?100台くらい?
生:いや、もっとありますね。「在庫」として持っているという意味では500台とか1000台とかそういうレベルであります。これが半年以上売れ残ると、「長期在庫」と言うんですけど、そういうものはMINIにはほとんどありません。見込みで仕入れたクルマも、半年以内には必ずさばけます。
F:見込み発注の塩梅は誰が取るのですか?大変な重責ですよね。どれを何台とろうかというのは、見込みが外れると大変なことになっちゃう。刷りすぎたカタログは最悪捨てれば良いけれど、クルマはそうはいかない。
生:そうですね、僕もそのメンバーに入っていますが、結構神経を使います。読みが外れて半年以上も在庫に残って、いいかげん処分しろ!となると、社有車で処理するか、(販促の)お金を付けてディーラーに売るか。どちらかですね。
前:今はもうありませんが。昔は何だか知らないけど黒いクルマがいっぱい残っているな……なんてこともありましたよ(苦笑)。
F:話は尽きませんが、最後にひとつ。MINIは昔も今もみんな同じに見えるじゃないですか。その特徴を言葉にすることは出来ますか。子供にも説明できるような言い方で。
生:できますよ。「丸を基調としながら台形のホイールを使って、タイヤは前後でなるべく離して配置して、後ろは縦長のランプに。そしてここのウィンドーの下のところのラインを水平にする」。こう言えば子供でも絵にかけます。あ、あとは色を付けるならピラーは黒で違う色にする。ピラーは必ず黒です。ここもポイント。
F:なるほど。面白い。話がアチコチにすっ飛びましたが、今日は大変勉強になりました。ありがとうございました。
生&前:こちらこそ。ありがとうございました。
こうして長い長いインタビューは終わりました。今回はマーケティングの話が中心になりましたが、新しいMINIは本当によく出来ています。一言で表現するなら「上質」というところでしょうか。これからのMINIを占う、お台場のお店も見学に行かねばなりますまい。
次号はMINIのユーザーインタビューをお送りします。私のFBを読んでいる方なら先刻ご承知でしょうが、お話をうかがうのは新しい物好きのあの方です。
なるほどそう来ましたか……。お楽しみに!
アメリカで皆既日食を観測してきました!
こんにちは。AD高橋です。
8月21日(日本時間は22日)、アメリカで大陸を横断する皆既日食がありました。日本でもかなりニュースが流れたので、映像をご覧になった方も多いと思います。
実は私、オレゴン州のセイラムで皆既日食を観測してきました! 旅の模様は別の媒体で書かせてもらうのでここでは詳しく語りませんが、本当に不思議な体験でした。みなさんにもぜひ一生のうち一度は体験してもらいたい! 次の皆既日食は2019年7月2日に南米チリとアルゼンチンで起こります。そして日本で皆既日食が見られるのは18年後の2035年9月2日になります。みんなで長生きしましょう!
皆既日食が終わった後はアメリカのメディアが「史上最悪の渋滞」と表現した渋滞にハマってきました。日食の前から渋滞の話がやたら流れていたのでかなりビビりましたが、日本の大型連休時の渋滞に慣れているせいか、案外「こんなもんか…」という感じでした。ちなみに現地での拠点はポートランドだったのですが、セイラムからポートランドまで普段なら1時間前後のところが5時間ほどという感じです。
ポートランドには日食本番の2日前に入りました。アメリカでのMINIのシェアは0.3%と決して多くありませんが(2017年1月~7月の販売台数は2万6603台。出典:marklines.com)、ポートランドの街を歩いていると本当によくMINIを見かけます。モデルはMINIカントリーマン(日本名:ミニクロスオーバー)を見かけることが多かったですね。クラブマンや3ドアミニもかなり走っています。
街中を歩いて見かけただけなのでサンプルは少ないですが、運転しているのは男女とも若い人が多い印象ですね。逆に、MINIと同じように過去のモデルをオマージュしデザインされたVWビートルやフィアット500はあまり見かけませんでした。
BMW広報部によると、MINIのアメリカでの販売台数は、イギリス、中国に次いで多いそうです(日本は6か7番目)。ミニのプレミアム性の高さが、アメリカで受け入れられていることを実感しました。
この記事はシリーズ「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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