みなさまごきげんよう。
フェルディナント・ヤマグチでございます。
今週も明るく楽しくヨタ話からまいりましょう。
「軽井沢の別荘用に」とレンジローバーを買って以来すっかり英国車にハマってしまい、遂には英国産ヴィンテージカーと高性能レプリカの専門店、UK Classic Factoryまで立ち上げてしまった勝見祐幸氏。彼が「最高にイケてる2枚ドアのクラシックレンジを仕入れてきたから見に来てよ!」と言うので、ヘリテージカーの祭典、オートモビル カウンシル2018に遊びに行ってきました。
こりゃ確かにイケてます。ジープもGクラスもクラシックレンジも、やはりこの手のクルマはショートボディがカッコ良いなぁ。
展示した2台のうちの1台は、著名なコレクターが初日にサクッとお買い上げになられたそうです。1350万円と結構なお値段ですが、後でトラブって泣くことを考えたら、初めからビシッと整備されたクルマを買ったほうが結局は安上がりですからね。古いクルマはお店選びが大切です。余程クルマに詳しくない限り、一目惚れは禁物です。
食通の間で「いま東京で最もコスパに優れている」と言われている赤坂の「さ行」に行って来ました。半年先まで予約で一杯の人気店なのに、決して驕ることのない丁寧な料理に丁寧な接客。堪能いたしました。
おいしゅうございました。山響部屋の力士、天一さん、ワイン専門家の齋藤 幸さん、集英社の松田充弘氏と。
俳優の大鶴義丹氏と、西荻窪のディープな酒場を探訪してまいりました。3万円超の高級イタリアンから、1000円でベロベロに酔えるセンベロ系の店まで、この街には実に幅広いジャンルの店が揃っています。どの店も大変な賑わいです。「チェーン店の居酒屋がすぐに撤退してしまう」というのも頷けます。
酔ってそぞろ歩いていたら、スノーボードの後藤伸介選手と邂逅。「それじゃ一緒に」と3軒目に突入。遅くまで飲みました。
なんか飲んでばかりですが、学芸大駅近くの「茶割」で一杯。
10種類の部位に10種類の味付けで計100種類の鶏のから揚げ。
10種類の酒に10種類のお茶で計100種類の茶割が楽しめるダイニングです。マサカという組み合わせが結構美味しかったりして、楽しい店です。散々脂分とアルコールを摂取した挙げ句にシメの親子丼までいただいて脂肪肝一直線。帰りに黒烏龍茶を飲みましたが、効くのでしょうか……。
ということでボチボチ本編へとまいりましょう。
レクサスLSの開発者インタビューです。
11年ぶりにフルモデルチェンジしたレクサスのフラッグシップセダンであるLS。
「誰も体験したことのない、上質で洗練された快感の走りが放つオーラは、世界中の都市の景色を一新します」と高らかに喧伝するレクサス最上位のクルマは、どのように開発されたのか。
お話を伺うのは、LSの開発を統括する、レクサスインターナショナルのチーフエンジニア、旭 利夫さんである。
ゲスト自ら脱線という珍しい展開に
F:はじめまして。フェルディナント・ヤマグチと申します。今日はよろしくお願いします。
旭:こちらこそよろしくお願いします。ところでフェルさん、今日は例のマスクをお持ちですか。よかったらちょっと見せていただけませんか。
レクサスインターナショナルのチーフエンジニア、旭 利夫さん
え? クルマじゃなくて、いきなりマスクの話ですか?
F:もちろん持っています。連日の猛暑で大汗をかいているので、ちょっと臭いますが……(笑)。
旭:どれどれちょっと拝見……。おお、これが噂のフェルマスク。ここがメッシュになっているんですね。うーん凝った作りだ……。いや実は私、趣味で音楽をやっているのですが、チーフエンジニア(CE)にもなったので、あんまり顔を出して歌うのはマズいのかなと(苦笑)。それで、これからはマスクを被って出ようと思っているんです。
F:いいじゃないですか。額の部分にレクサスのエンブレムをあしらって、口の部分をスピンドルグリルにして……海外のイベントとかでCEがマスクで出てきたら絶対にウケますよ。外国人はマスクマンが大好きだから。音楽は何系なんですか?
旭:J-POP系です。先日は新型LSのライン・オフ・パーティーというのをやったんですけれども、そこでもバンドと一緒に歌わさせていただいて、みんなで盛り上がったんです。
F:はー……ライン・オフ・パーティーでCEみずからが歌を……。
歌って踊れる営業部長、というのはよく聞く話だが、ライン・オフ・パーティーでみずから歌うCEは初めてだ。
F:よろしければ私がマスクを作った工房をご紹介します。デザイン5万、制作費5万と、ちょっと値が張りましたが、完全なワンオフなので仕方がありません。実はこのマスクももう作って5年ほど経つので、そろそろver.3を作らなければと考えておりまして……。
マイトのY:ちょ、ちょっとフェルさん。マスクじゃなくてクルマの話をしてください。
F:や、そうでした。えーとLSの話ですね……。初代LS(日本名:セルシオ)が出たときは、そのあまりの出来栄えに、いわゆるジャーマンスリーが腰を抜かして、バラバラにバラしてリバースエンジニアリングをかけたところ、「このクオリティをこの値段で作るのは、我々にはとてもムリだ……」と言わしめたと噂されましたが。
旭:そうですね。初代が出た時は業界にもお客様にもそれほどのインパクトがあった、という話ですね。
F:そのLSをご担当されるとなると、相当な重圧があったと思うのですが、旭さんはいつからLSの開発に携わっておられるのですか? いままでの経歴を教えてください。
旭:僕がトヨタに入社したのが1991年です。もともと出身分野が電子技術部というところでして、大学で専攻していたのがいわゆるニューラルネットワーク。今でいうAI的なヤツだったんですね。
F:え? 旭さん、メカではなくエレキのご出身ですか?
旭:はい。僕はもともとエレキ屋です。一時はバックプロパゲーションなどを勉強しながら、ソッチの世界を眺めていくという仕事をしていました。
F:誤差逆伝播法! ガチで機械学習の世界じゃないですか。今だったら間違いなく自動運転の部署に配属されるキャリアですね。
トヨタ全体でも数少ない電子技術部出身のCE
旭:そうなんです。私がLSを担当するキッカケになったのも、エレキに強いからという理由からだったんです。実は私、先代のLSの開発にも参加していたんですけれども、そのときは、LSに先進安全系の機能をもっと盛り込もう、ということでアサインされたんですね。それまではエレキ系の人間があまりいなかったんです。そろそろ電気が分かるヤツも入れとかないとな、ソッチ系でも我々主導で開発できなアカンよな……という話になって。
F:なるほど。サプライヤーから提案されたものを買うだけではなく、メーカー主導で開発をしなければいけないと。
旭:そうなんです。それで電子技術分野から車両企画を……。「Z」と呼ばれる、車両企画をする部署なんですけれども、そこに呼ばれて来たと。我々はレクサスのLSをやっているので、「ZL1」と呼ばれています。
F:レクサスだけでなくトヨタ全体を見渡しても、チーフエンジニアがエレキご出身の方というのは非常に珍しいというイメージがあるのですが、いかがでしょう。
旭:はい。実際珍しいです。最近は徐々に出始めましたけれども、昔はほとんどいませんでした。今は私のほかに2名います。
F:私は本業がサラリーマンで、半導体関係の仕事をしているのですが、本業でトヨタで電子デバイスを担当していらっしゃる方とお話をする機会が……もちろん相手の方は私がフェルとは知らずに……あるんですね。
旭:え? フェルさんがサラリーマン! その話は本当なんですか?
F:ええ、その話は本当です(笑)。で、その方は電子デバイスではとても重要なポジションを担っていらっしゃる方なんですが、それでも一緒に飲んだ時などに「やはりトヨタはメカの会社なんですよ。所詮我々は外様です」、なんてポロリとこぼしたりされるんです。でも旭さんがエレキご出身でLSのCEになられたとなると、話はぜんぜん違ってきますね。
旭:ええまあそうですね、はい。我々は先代のLSで、先進安全にかなり頑張って力を入れてきました。当然今度の5代目は、もっと力が入っています。レクサス・セーフティー・システム+Aというヤツですね。
F:長距離を試乗して、じっくり試してきました。あれはもうほとんど自動運転と言っていい世界ですね。
旭:ええ。他社さんで言うところの自動運転的なところまでいっているのですが、我々は「自動運転」とは絶対言いません。「高度運転支援」です。
断じてそれは言いません
F:トヨタは自動運転とは言わない。
旭:言いません。トヨタは今のレベルで自動運転と断じて言わない。
F:ニ●サ●のセ●ナとか平気で言っちゃうのに(笑)。
マイトのY:あぁもう! 具体的な“シャメイ”を出すのは止めてください!
F:シャメイって、●ッ●ンという会社の名前? それとも●レ●というクルマの名前? “社”名なの“車”名なの(笑)。
マイトのY:どっちもダメ!
旭:我々はしっかりポリシーを持ってやっています。確かに今回のLSS+Aというのは世間で言うところの“自動運転” に近い機能を持っています。それでもやはり主体はドライバーにあることを忘れないでいただきたいのです。ですから我々は、自動運転ではなく、「自動運転につながる高度運転支援」と呼んでいます。
F:ガラガラの高速で、試しにウィンカーを出さないで車線変更をしようとすると、元の車線に戻そうと、教習所の教官みたいにこうガッとハンドルを戻されたりして、すごい介入してきますよね。それがちゃんとウィンカーを出すと、何事もなくスルッと車線変更できる。
旭:ウィンカーを出さなければ、車線をキープしようとするので戻りますし、ウィンカーを出して意思表示をすれば、ちゃんとクルマが後方を監視しながら車線変更が可能です。
F:あ、何事もなく車線変更しているようでいても……。
旭:はい、クルマはちゃんと後方の安全を確認しています。安全だから黙っていただけなんですよ(笑)。
F:知らなかった。見られてたのか……。
旭:そういった先進技術をLSに積極的に投入しなきゃいけないということもあって、私がCEにアサインされたのだと思います。
F:なるほど。それで、いかがですか。レクサスの最高峰。センチュリーという特殊なクルマを除けばトヨタの最高峰のクルマのCEを務めるということは。
旭:私がLSのCEを任命されたのは2014年のことなんです。それまではちょうど今年国内発売が始まるレクサスのESをやっていました。
F:昔は日本でも「ウィンダム」として売っていたクルマですね。ESを日本で売って、そのかわりGSがラインナップから外れると聞きました。
旭:それは違うと思います。GSは継続します。
F:ありゃ。ガセネタかな。ともかくLSの前は輸出用のESをやっておられた。
旭:はい。ESをやっていました。そして2014年に、「次は君LSだからね」というふうに言っていただいて……。
震える膝に力を込めて
F:その時はどのように感じましたか。
旭:レクサスフラッグシップの担当ですからね。やはり相当なプレッシャーを感じました。
F:そりゃそうですよね。トヨタグループ全体の金看板の責任者。そりゃプレッシャーがありますよね。
旭:正直膝が震えました。ええ、本当に私にそんな……レクサスのフラッグシップを……下手をすると日本を代表する高級車になるじゃないですか。そんな大変なクルマの開発が、果たして自分なんかに務まるだろうかと、正直不安なところもありました。でも逆に言えば、こんなビッグプロジェクトを任されることなんて、一生に一度あるかどうかも分からない。そうも思いました。
F:そうですよね。エンジニアだからって、誰もが担当できるわけじゃない。
旭:はい。だからもう本当に、これは自分の人生のためにも、そしてお客様のためにも、しっかりハラを決めてやるべきだと決心して、この任命を受けたということなんです。
自分の人生のためにも、お客様のためにも、しっかりハラを決めて最高のクルマを作ってやる。コメント欄においでのトヨタ嫌いの読者諸兄。マツダやSUBARUと比べて、銭勘定ばかりに熱心で、肝心のクルマ作りがお座なりだと批判一辺倒のコメント諸兄。トヨタ(レクサス)にもこんなに熱いエンジニアがおられるのですぞ。
エレキ出身の熱きCE旭さんのお話は次週に続きます。
お楽しみに!
おっさん3人には似合わない?! レクサス ミーツに行きました
こんにちは、AD高橋です。
今回からスタートした、レクサスLS開発者インタビュー。お話を伺った場所は、レクサスが今年3月29日にオープンしたブランド体験施設「LEXUS MEETS...」(レクサス ミーツ)です。
東京ミッドタウン日比谷の1階にあるこの施設は、ラグジュアリーライフスタイルブランドであるレクサスの世界観を表現し、多くの人にレクサスのある暮らしを疑似体験してもらうというコンセプトで作られています。東京や大阪などにある「Mercedes me」に近いものですね。
施設内には最新モデルが展示されるほか、レクサスのレーシングカーに同乗できたりショートフィルムを観ることができるVR施設、文具や雑貨、キッチンウェアなど、レクサスのコンセプトにマッチするライフスタイル雑貨を集めたブティック、落ち着いた雰囲気で食事などを楽しめるカフェが併設されています。
そんな「LEXUS MEETS...」で「いいな!」と思ったのが、「試乗体験」です。
新車販売されているレクサスすべてのモデルが用意され、WEBなどから事前予約しておけば都内で自由に試乗できるというもの。たとえば恋人と日比谷で映画を見て、その後に「LEXUS MEETS...」のカフェのピクニックデリセットを持って日比谷公園までドライブ。そしてピクニックをしながらサンドイッチを一緒に食べる、なんていう楽しみ方もできちゃうんです。
インタビュー時にフェルさん、マイトのY氏、そして私というむさくるしい男3人でサンドイッチセットを試食させていただきましたが、これがお世辞抜きでおいしい! 新鮮な野菜をふんだんに使ったサンドイッチはとてもヘルシーでさっぱりした食感を堪能できます。フレッシュジュースもおいしいですよ!
好きなクルマでドライブを楽しんで、おいしいデリでピクニック。そんな休日、楽しそうですね。
この記事はシリーズ「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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