軽量化のために「1グラム1円で買う」

:すると今度はおカネがかかる。クルマを作っていると、コストってやっぱりどんどん上がって行きます。でもコストには当然“縛り”がある。それらを自分で飲み込みながら、いかに開発を進めていくかというところがポイントです。

 だから僕は、軽量化のために「1グラム1円で買う」と言ってみんなに宣言しました。1グラムの軽量を1円で買いたいと。1円玉って、ちょうど1グラムなんですよ、重さが。

F:ああ、なるほど。

:おカネの苦労は有るけれども、やっぱり僕ら地球とはケンカをできないので。

F:それはエコという観点で。

:いや、重量です。地球に重力がありますから、地球の重力とは絶対にケンカできない。やっても負けます。重いのが負け。だから質量を何とかしなくちゃいけない。

F:ちなみに私が試乗したクルマは何キロくらいあるのでしょう。

:フェルさんに乗ってもらったのは、えーとAツーリングでしたね。そうしたら1470キロ。前のモデルとほぼ同じ重さです。

F:前のと同じ重さですか!あれだけ大きく立派になったのに!

:ボディが大きくなっているし、リアサスがダブルウィッシュボーンになったりだとか、いろいろ重たくなる要素は入れているので、その分は、他の部分で軽くして相殺したということです。

旧モデルより大きく立派になったにもかかわらず、車両重量は変わっていない。

「全体として、アンダーは大きく減量しました」

F:軽量化は特にどの辺りが効いたのですか。劇的に減った部分というのは有りますか?

:劇的に減った部分ですか。うーん、例えばアンダー。アンダーにはいろいろな性能を持たせています。衝突安全であったり、操縦安全であったり。またNV(騒音と振動)の性能もここで決まってくる。アンダーボディーって軽量化すればすべて性能に跳ね返ってくるので。

F:性能が悪くなるということですか。アンダーボディーを軽量化すると。

:そう。うまいことやらないと悪くなる。必ず悪くなっていく。だからうまいこと全体としての重さを削りつつ、でもやはり局所、局所には重量をかけないといけない。その塩梅が難しいんです。その辺りが僕らの腕の見せ所でも有るわけで。

F:因みにその局所とはどの辺でしょう。

:サスペンションの取り付け部分とか、あとはダッシュボード下のキックパネル。運転席の足元のペダル回りの所ですね。あそこを薄くすると、足元に振動が伝わってきて乗り心地に影響が出る。

 さらに衝突した時に、ここが弱いとぼーんと押されて、どーんと行っちゃう。運転席に飛び出してきちゃう。飛び出したらいけないから、ここは多少重くなっても強固にします。丈夫になるしNVを抑えられるし、一石二鳥ですね。

 クルマ作りは質量が命。だが、軽くしていけば、その分失う物も多い。

 そのバランスを取るのが司令官たる開発主査だ。豊島さんは方々に頭を下げて回り、また時には血を流して見せて、4代目プリウスの塩梅を取っていった。

 では、軽量化に大いに寄与し、また剛性アップの柱ともなったTNGAについてお話を伺おう。因みに読者諸兄が期待されている類似名称の某商品との関係性については、本インタビューでは尋ねていない。なんでってあーた、ここは日経ですよ、日経。