「一方的に『やってやって』じゃ、そりゃ通りません」

F:具体的にはどうやって話を通して行かれたのですか?

「こっちも、目の前でスパッと“腹を切りました”」

:具体的にはですね、全部が全部を戻すのではなく、例えば100キロ軽量化するという約束を50キロだけ戻したんです。50キロ分は軽量化、これだけは絶対にやっていきますと。でも残りの50キロ分はどうやっても無理だから、ユニットの方も頑張ってカバーレンジを上げていって下さいと。

 こういうやり方をすべての部門にやっていきました。何ですかね、折衝するのに札を出しながら、どこまで出せば許してもらえるかというところを。

F:ただお願いするだけではなく、カードを切りながら、ウチらもこれだけ血を出すからと。

:そうそう。ウチらもこれだけ血を流しますと言うのを見せないで、一方的に「やってやって」じゃ、そりゃ通りません。だから実際に血を流すところをお見せしました。

F:もう目の前で腹を切って見せる訳ですね。

:見せましたね。スパっと行きます(笑)

 トヨタの社内で“切腹交渉”が繰り広げられていたとは、浅野内匠頭じゃあるまいし……。殿!豊島氏!殿中でござる!

 しかしこの豊島さん。市場調査中に車上荒し容疑でパクられそうになるわ、交渉相手にハラ切って見せるわ、やることが尋常ではない。この方が大馬力のスポーツカーや馬鹿デカい北米向けのピックアップトラックの開発担当なら何となくイメージも合うのだが、世界の優等生、プリウス君の開発主査なのだから面白い。

:それともうひとつ。軽量化のためにはアイテムが必要です。するとおカネがかかる。

F:軽量化のアイテムというのは……

:軽量化するために「部品を取る」と言ったら聞こえは良いですよね。部品を取っ外すのですから、軽量化になるし、おカネも減るはずです。

F:この部分はもうやめちゃおう、諦めちゃおうと。

:そう。もうこの部分は載せるのをやめちゃおうと。これは一見良いように感じるのですけれども、一番てっとり早いんですけれども、クルマとしての性能がやはり悪くなっていく。だから安易には外せない。でも軽くしたい。部品を軽量化していくしかないんです。

F:なるほど。