一番売れているクルマだからこれを選んだ

F:そこを何とかお願いします。あ、コーヒーのおかわりを買ってきます。レギュラーサイズで良いですか。

 片田さんはヤレヤレというふうに首を振りながら苦笑いして、「何だか長くなりそうですね。それじゃアイスコーヒーの大きい方をお願いします」と言った。お話をうかがうことができそうだ。インタビュー場所はファミリーマート 世田谷粕谷店の店先にあるテラス席である。

 目の前には東京テラスなる巨大なマンション群のパーキング棟がそびえ立っている。ここは昔、青山学院大学の工学部があった場所だ。青学はここを売ったカネで、山奥の不便な場所に校舎を建てたのである。

F:まず、どうしてこのクルマを選ばれたのですか、買った動機を教えてください。

:ここが一番大切な話ですよね。でも、先程も言った通り、選んだ理由は極めて消極的で、NOTEのe-POWERが一番売れているからです。一番売れているクルマだから、これを選んだんです。

F:ははぁ……一番売れているから、ですか。

:自動車の記事を書くような専門家の人からすると、ちょっと信じられないかも知れませんね。ヤマグチさん、でしたっけ?ご自分のクルマを選ぶときには、ずいぶん時間をかけたでしょう?

F:今のこのクルマは、執筆のための試乗で惚れ込んでしまい、そのままの勢いで買ってしまったという感じです。あまり悩んだり、比較検討をしたりしなかったですね。

:なるほど。仕事柄、いろんなクルマに乗る機会が多いわけだ。それじゃ比較検討しない、と言っても、結果的には壮大な比較検討をしているということになりませんか?

F:うーんと、まぁ、そうなるかな。壮大かどうかは分かりませんが(苦笑)。ところでその、一番売れているクルマにされたという部分をもう少し教えてください。

:私はもともとクルマに興味がないんです。男が「クルマに興味がない」と言い切ってしまうと、少し変な目で見られることもあるのですが、ないものはないのだから仕方がありません。

F:そこで一番売れているクルマを。

:そう。だって一番売れているクルマを買っておけば、間違いがないじゃないですか。多くの人がカタログを見比べて、中には試乗に行ったりして、いろいろと比較検討した上で「これが良い」と決めて購入に至っている訳でしょう。僕はクルマに興味がありませんから、クルマ選びに時間を掛ける気なんて全くないんです。はっきり言って無駄な時間だと思います。

 今はクルマもうんと良くなっているのでしょうから、特殊なスポーツカー等を除けば、クルマなんて実際にはどれを買っても同じような物でしょう。だったら一番人気を買うのが最も合理的な方法なのではないか。これが私の考え方です。